V2へ万全の巨人、敵は視聴率?


 3勝1敗と、リーグ3連覇へ順調なスタートを切った王ダイエー。20世紀の最後を飾り、21世紀のスタートも期待されるONシリーズ対決へ、リーグ連覇を目指す長嶋巨人はどうか。派手なキャッチフレーズなしの長嶋監督は自信の塊だが、唯一の不安は視聴率だ。

 開幕前日、長嶋監督の側近フロントの携帯電話へダイエー・王監督から連絡があった。

 3勝1敗で早くも首位。しかも期待のルーキー山田秋親(立命大)が早くもプロ初勝利をあげるなど順調そのもののスタートを切った王ダイエーだけに、長嶋巨人へのゲキかと思いきや、そうではなかった。

 「頼んだよ、巨人の開幕戦の切符」というお願いだったのだ。

 そんな楽屋裏話があった開幕前日の公式記者会見でも強気一点張りの長嶋監督だった。

 「万が一、開幕戦に負けてもどうということはありません」

 「ロケットスタートはどうですかね。むずかしいでしょう。でも、チームが追い込んでいくタイプに変わってきてますからね」

 昨年は「開幕30試合を20勝10敗のロケットスタートでいきます」と高らかに宣言したものの、大失敗。夏場の追い込みで、最終的には4年ぶりのリーグ優勝、6年ぶりの日本一を奪回している。

 そんな自信から、景気のいいキャッチフレーズは必要なし。「今年のウチは相手は関係ない。普通の戦い方をすれば勝てる」という揺るぎない、V2の確信を抱いているのだ。「今年もONシリーズをやって雪辱をしたい」という、ダイエー・王監督の切なる願いにこたえるだけの、万全の態勢を整えている。

 唯一の不安は、長嶋監督がいつも気にかけているテレビの視聴率だ。

 「今、野球界が置かれている環境は本当に厳しいよ。来年、サッカーワールドカップがあるから、そのあおりでサッカーの報道が多くなるだろうしね」と、長嶋監督は逆風に神経をとがらせている。不安は現実になっている。

 「オープン戦の視聴率がよくなかったんですよ。例年なら悪くても7、8%はあるのに、4、5%どまり」と、日本テレビ関係者が声をひそめる。

 昨シーズン、巨人戦の平均視聴率が20%の大台を割り、渡辺オーナー、日本テレビ・氏家社長ら読売首脳は大ショックを受けている。

 来年のサッカーワールドカップの日本の試合のときに公式戦中断。2004年のアテネ五輪への全面協力と、渡辺オーナーが豹変(ひょうへん)したのも、簡単明りょうだ。世界的ビッグイベントと正面からぶつかっても勝ち目がないことを昨年のシドニー五輪で思い知らされているから。

 そんな厳しい現実の中で、果たして、長嶋巨人の開幕戦がどれだけの視聴率を記録するのか。長嶋監督が、巨人の新人捕手として、山倉以来、23年ぶりにドラフト1位の阿部慎之助(中大)を開幕スタメンさせるのも、話題性を提供するのが最大の狙いだ。

 長嶋監督の演出にプラス、野村阪神なら間違いなく勝てると、巨人ファンがお茶の間のテレビにかじりつき、視聴率がアップするのか。それとも、アンチ巨人ファンが「どうせ巨人が勝つから見たくない」と、テレビ離れしてしまうマイナス面が響くのか。さて、運命の視聴率はどう出るか?


[夕刊フジ2001年03月30日]