巨人・長嶋監督が4番・松井と極秘マンツーマン・ミーティング。巨人史上、世界の王以来、27年ぶりの三冠王獲りにタッグマッチで挑む。
「きょうから本番態勢だ」と、長嶋監督が大号令をかけた21日の広島戦(東京ドーム)。
午後4時からの試合だったのに、ゲームセットになった午後7時過ぎから4番・松井が清原とともに異例の居残り特打だ。
まさに本番態勢。長嶋監督は一足先に帰宅したが、実は、試合前の練習中に長嶋監督と松井は、一塁側の『貴賓控え室』で2人きりの極秘ミーティングをしていた。
グラウンドでの練習に報道陣の目が集中している間に、まず松井が水のペットボトルを手にして部屋に入る。一呼吸置いて、何気なく長嶋監督が合流する。
部屋を出るときも同じ。松井が一足早く、長嶋監督はしばらく間を置いて出る。人目を気にした極秘のマンツーマン・ミーティングだ。
「ええ、ちょっとした確認ですよ、確認」と、長嶋監督は言葉少なに語るだけ。
オープン戦もあと4試合、いよいよ本番態勢に突入、マンツーマン・ミーティングで最終確認をし合ったというのだ。
「今年の松井はいいよ。4番の風格が出てきた。オープン戦でもここ一番で4番らしく打つからね。昨年の二冠王でかなり自信をつけたのだろう」と、長嶋監督は絶賛する。
昨年までは「松井にはもう一つ華がない。清原のようなファンに強烈アピールする、独特な雰囲気がないんだよな」と、嘆いていたが、絶好調の清原も寄せ付けず、4番を死守する松井に太鼓判を押したのだ。
が、現状に満足することなく、同時によりハイレベルな注文も忘れない。
「三冠王を取るには打率を上げることだ。3割1分台では話にならない。最低でも3分台は打たないといけないだろう」と言い切る。
キャンプで「内なる戦い」、オープン戦では「さらなる戦い」。そして、本番突入で「限りなき戦い」をチーム・スローガンとする長嶋監督とすれば、4番・松井に究極の三冠王を求めるのは当然だろう。
「今年はとくにチャンスだからね。横浜のローズがいなくなったのも大きいよ。首位打者争いの本命が消え、松井には追い風だろう。ホームランや打点は問題ないんだから」という、外部からの追い風も吹いている。
巨人史上、昭和48、49年と世界の王が2年連続記録して以来、実現していない三冠王。日本プロ野球史上としても、昭和60、61年のロッテ・落合、阪神・バースの2年連続以来、出ていない。
そんな偉大な記録の三冠王獲りを口にした長嶋監督は、打率3割3分台をノルマに設定し、こう続ける。
「3割3分以上に引き上げるには、左中間方向にどれだけヒットが打てるかだろう」と、左中間方向へのヒット量産がキーになると断言するのだ。
この日の広島戦でも、松井は2打席目、左腕・河内から左中間に技有りの二塁打、4打席にも中前打を放っている。長嶋監督の注文通りのバッティングだ。
長嶋監督が求める、よりハイレベルな三冠王の4番打者に異存はない。松井本人が望んでいることだからだ。
シーズンに入っても、三冠王を目指し、長嶋監督−4番・松井のマンツーマン・ミーティングは続く。
[夕刊フジ2001年03月22日]