常勝ダイエーの“死角”とは


 パ・リーグは20日でオープン戦の全日程を終えた。王ダイエーは8勝4敗3分で、パだけでなく、12球団を通して勝率1位。“オープン戦優勝”で、前評判通りの強さを見せつけた。

 投打にわたる選手層は他球団を圧倒し、王貞治監督がそれを完全に掌握している。球団も開幕戦の始球式に志村けんを呼ぶなど、既に祝勝会気分。開幕を待ちきれないファンはオープン戦から福岡ドームへ殺到した。リーグ3連覇へ不安は一切感じられない。

 しかし、こんな時こそ要注意。むしろ死角はいくらでもある。まずは何といっても先発陣だ。「層は厚くなったけど、質は今ひとつ。強烈なものをアピールしてくれる選手が最後まで出なかったな」と王監督。オープン戦最終戦の20日(対広島、福岡ドーム)でも、若田部健一が5回3失点と結果を出せなかった。

 中継ぎ陣の勤続疲労も気になる。昨年までの連覇は、先発が早々に崩れても、中継ぎの連戦連投で持ちこたえたもの。渡辺正和、吉田修司、ペドラザの3人に3年連続で同じ仕事を求めるのは酷ともいえる。

 王監督も「去年までは奇跡だと思っている。1試合に4人も5人も使って、全員がピシャッと抑えるなんて、もうできないよ」と、自らの継投術を奇跡と呼んでいるほどだ。

 さらに、今やスタメンだけの比較なら、巨人をしのぎ12球団最強といわれる打線にも不安が。小久保裕紀と4番を争うはずだった松中信彦の不調だ。キャンプ後半から故障続きで、オープン戦ではらしさを見せられなかった。終盤に入っても18日の試合前練習で右足のすねに自打球を当てるなど、どうもついてない。開幕ダッシュにはこの“福岡MK砲”のそろい踏みが必要なだけに、出遅れが心配される。

 加えて、野手の精神的支柱である秋山幸二も右肩の炎症が収まらず、こちらは開幕絶望。確かに、選手としての貢献度では大きな痛手ではない。だが、その存在感から見れば、開幕からベンチに大きな穴が開くことになった。

 王監督はオープン戦の採点を求められ、「投手が70点で野手が80点。総括すると75点かな。とにかく発車できる態勢にはなったよ」と答えた。実際の成績に比べて自己採点が辛くなったのは、王監督も一連の死角に気付いているからだろう。キャンプ打ち上げ時に「心配なのは監督の気の緩みだけ」と話していた王監督だが、その面では3連覇への不安はなさそうだ。

[夕刊フジ2001年03月21日]