予想通りの結果のマリナーズ・イチロー&メッツ・新庄のマスコミジャック。さらに来年のワールドカップ景気をはらんだサッカー人気。挟み撃ちにあい、危機にさらされるプロ野球界。巨人・長嶋監督がコミッショナー、セ、パ両会長の3首脳に対し、改革を訴える。
メジャー大好き人間の長嶋監督だが、マリナーズ・イチロー、メッツ・新庄の最近の動向に関しては複雑な心境で見守っている。
「イチロー、新庄があれだけ騒がれていると、他の選手も『オレもメジャーで』とあおられる気持ちになる。ヤクルトの石井一などFAの資格ができれば、間違いなくメジャーに行ってしまうだろう」
イチロー、新庄の成功を願いながらも、メジャー志向の強い日本球界のスター選手たちへの余波を心配してしまうのだ。しかも、前門の虎がメジャーなら、後門の狼としてサッカーのワールドカップが控える。
「来年のサッカーワールドカップが始まれば、完全にプロ野球が食われてしまうのは、今から目に見えている。だからその時期は死んだふりをするにしても、その前後をプロ野球がどうやって人気を固めていくか、現在から考えておかないといけない。そのときになってあわてないように、コミッショナー、両会長ら球界のトップの人たちにはお願いしたいと思う。プロ野球に携わって40年以上になるわれわれにとって今が最大の危機だろう」
球界3首脳へ切実な危機感を訴え、今から難局乗り切りの対策検討の必要性を説く。
なにしろコミッショナーに関してはお粗末な出来事があったばかり。3月6日で任期切れになったが、直前まで気が付かず、ドタバタ再任劇を演じたのだ。
3月6日当日に行われたセ・リーグオーナー懇談会で川島コミッショナーの再任を了承。その日、パ・リーグ側は小池会長が6球団オーナーに緊急電話で再任のOKを取るありよう。
セ、パの会長が交代した直後、コミッショナー、セの両事務局長もそろって変わったという、人事面の影響もあったが、「最近はそんなたるんでいることが多い」と、某球団フロント首脳は批判する。
長嶋監督が開幕直前になって球界3首脳に注文を出すのも無理からぬ現実がある。8日に行われた川島コミッショナー、豊蔵セ、小池パ両会長による三者会談も、耳にタコができる具体策のない「スピードアップ」の実現を訴えただけ。
スピードアップを実現するには、今年からメジャーが実行するストライクゾーンの再確認しかない。年々狭くなってきているストライクゾーンを本来の広さに戻そうという作業だ。
ところが、日本ではパ・リーグが監督会議で同じ趣旨の決議をしたのに、「いつの間にか従来のストライクゾーンに戻っている。何のために監督会議で話し合ったんだ」と、ダイエー・王監督が激怒する事態になっている。
すべてトップの指導力のなさだ。「球界改革なんて夢の夢。球界を救うには、ONシリーズを今年も来年もやってもらうしかない」と、球界関係者があきらめの心境で語る。
[夕刊フジ2001年03月16日]