長嶋巨人の新守護神誕生のカゲにダイエー・王貞治監督の助言があった。岡島秀樹、チョ・ソンミンらストッパー候補が総崩れの巨人にあって、唯一無傷なのがD3位ルーキーの三浦貴(東洋大)。キャンプを二軍で過ごしていた三浦の抜てきには、やはり秘話があった。
三浦には長嶋茂雄監督より、王監督が先に注目していた。今月4日の“プレON対決”に三浦が登板。1回3分の2を投げ、1人の走者も出さなかった三浦を、王監督が「いい球を投げてたよ。ウチの投手を含めて、一番良かったんじゃないのかな」と絶賛した。
しかも、「ベンチで『一生懸命やってるのに、かわいそうになぁ』と思ってみていたよ。どうせ4月には新しい外国人が来るんだろう?」という、長嶋監督の補強好きへの皮肉付き。これが長嶋監督に伝わったのだ。
長嶋監督は「三浦が目立つようじゃ駄目ですよ」と、それまで三浦を評価していなかったが、王監督の賛辞と皮肉を受け、ストッパー試験を開始。三浦もこれにこたえ、8日の中日戦、11日の西武戦に登板して、いずれも完全救援。オープン戦初登板の2日の阪神戦から4試合、5回3分の2をノーヒットに抑えている。
三浦は「開幕一軍もノーヒットも意識しないで投げてます」と、自分を落ち着かせようとしている。だが、ストッパー不在に苦しむチーム事情が放っておかない。長嶋監督は「今の状態なら、メジャー(一軍枠)に入ってくるでしょう」と、今では開幕一軍を確約している。
「岡島、趙にあと1人を加えた3人で」とトリプルストッパー構想を持つ長嶋監督。残る1人は開幕後、メジャーのロースターから漏れた選手を獲得する予定。だが、このまま三浦がその一角を占めれば、王監督の古巣を見る目も変わってきそうだ。
[夕刊フジ2001年03月13日]