開幕2週間前に西武・堤義明オーナーが火を付けた監督人事問題。今季、優勝を逃せば、東尾監督更迭を口にしたが、他球団の監督事情はどうなっているのか。12球団人事情報を明かす。
10日、西武ドームで行われた巨人戦の試合前に堤オーナーが、東尾監督に最後通告をした。
「今年は絶対勝てと伝えました。今年は絶対優勝してほしいし、勝てると思う」
こう厳命しただけではない。巨人・長嶋監督の「秋に(日本シリーズで)ぜひ会いましょう」というあいさつにも、「今年会えないと、この人(東尾監督)は永久に会えないかもしれない」と言い切ったのだ。
今季もV奪回に失敗すれば、3年連続になるだけに、当然といえばそれまで。が、開幕前にここまで明言されたら、腹をくくり、首を洗ってペナントレースに臨むしかない。
昨年、後任候補として巨人OBの中畑清氏を挙げ、恩師の駒大・太田監督に球団フロントがアプローチしている事実まである。開幕でつまずくようなら、水面下でのポスト東尾人事は一気に加速する。
西武以外の監督人事問題はどうなっているのか。今季の成績に関係なく、来季も安泰なのは、新監督の横浜・森、広島・山本両監督。球団側に事実上人事権がなく、本人の意思次第なのが巨人・長嶋監督、ダイエー・王監督だ。
「総理大臣は簡単に交代させられるが、長嶋監督はそうはいかん」と、ワンマンの渡辺恒雄オーナーでさえ白旗宣言。進退問題は長嶋監督本人にゲタを預けてしまっている。
だからこそ、毎年、勇退騒動が起きる。4年ぶりのV奪回、6年ぶりの日本一になった昨年も、「優勝を花道に勇退するのでは」と、側近ですら疑心暗鬼に陥っていたほど。65歳になった今年もまた勇退騒動が起きるのは避けられない。後継人事がむずかしいだけに、混迷度は増す。
リーグ3連覇、日本一奪回を目指すダイエー・王監督の周辺も無風というわけにはいかない。
「ダイエーにはもう十分恩返しをしたはず。もう一度巨人監督として勝負するために、もうダイエーを辞めた方がいい」という巨人OBからの勇退勧告の声が年々強まっているからだ。
ダイエー側でも王監督に逃げられる万が一のケースを想定。ポスト王として、秋山を最有力候補に挙げている。
中日も同じように、ポスト星野人事を固め出している。「1年でも長く星野政権を」という基本方針があるが、「1年、1年が勝負」と明言する星野監督。今季も長嶋巨人に敗れるようならば、退団の可能性が高い。そんな事情があるだけに、星野ラインの山田ヘッドコーチにバトンタッチする路線が敷かれているのだ。
2年連続して観客動員が減り続けているヤクルトの若松監督、契約最終年の阪神・野村監督も今季に進退がかかっている。
ヤクルトの後任監督としては元横浜監督の大矢明彦氏、西武でも名前が挙がった中畑氏らが候補になっている。
阪神の場合は内部昇格なら岡田二軍監督という切り札がいるだけに、早くも「6月交代説」がささやかれている。外部招へいのケースとしてはOBの田淵幸一氏の名前が挙がる。
近鉄・梨田、ロッテ・山本監督に対しては球団側がラストチャンスを明言している。日本ハム・大島、オリックス・仰木監督も優勝に絡むような戦いをしないと来季続投の道は開けない。
[夕刊フジ2001年03月12日]