王さん初体験で嬉しい悲鳴?


 パ・リーグ優勝候補の最右翼、王ダイエーに異常事態発生。開幕まで約2週間となっても、先発ローテーションを10人から先に絞ることができない。過去6年間、投手といえば足りないのが当たり前、そのやりくりが専門だった王貞治監督は「こんなことで悩んだことがなかったからね」と、投手陣の群雄割拠にお手上げ状態だ。

 ダイエーは7日の横浜戦(福岡ドーム)で、オープン戦の最初の5試合を終えた。王監督の計画ではこの5試合の間に、1試合につき先発候補2人ずつをテスト。その内容から5人に絞り込むはずだった。

 それが起用した斎藤和、星野、山田、篠原、永井、ラジオ、田之上、西村、若田部、佐久本の10投手がそろって遜色(そんしょく)ない内容。王監督は「全員第2次予選に回すしかない」と、一人も落とすことができなかった。

 先発テストが終わらないことは、他にも影響してくる。オープン戦の残り試合は10試合。その中で長いイニングを必要とする先発候補を2人ずつ使っていては、昨年までのダイエーの生命線、リリーフ陣の調整ができなくなってしまう。

 王監督は「だからいつも、対戦相手に『15回やらないか』と言おうと思ってるんだ。まず1人完投させて、残りの6回でリリーフを使えばいいだろう」と提案しているが、こんなムシのいい話に乗ってくる球団は今のところいない。実際、投手を調整させる機会がない、と悩んでいる監督はONくらいのものなのだ。

 しかも、“投手余り”が即、質の保証につながっているというわけでもない。当落線上の実力で10人が集中しているだけ、という見方もある。王監督も「1人でも強烈にアピールしてくれる投手がいればいいんだけどね。頭数がいるだけ、という気も…」と、その点は心配している。

 現時点での当確は西村と篠原くらい。この2人にしても、西村はゲンかつぎで開幕投手に指名したもの。その翌週もローテに残っているとはかぎらない。篠原は言うまでもなく、貴重な左腕ゆえの抜てきだ。

 それでも、投手を絞り込むのに悩まされるのは、王監督にとって、就任7年目のうれしい初体験。「みんなから『あいつを出すならオレを使え』という目で見られているんじゃないかな。選手全員にチャンスがある、と言い続けてきたことがようやく形になってきたよ」という言葉からは、選別を急ぐよりも、戦力の充実ぶりに浸っていたいようにも感じられた。

 ◆「王vs森」は和気あいあいムード

 ダイエー・王貞治監督が横浜の森祇晶新監督と対面。森監督は前日、遺恨対決と書き立てられている巨人・長嶋茂雄監督と対戦したばかり。周囲は長嶋−森同様の因縁話を求めたが、王監督は「因縁も何もないよ。ミスターと(森監督)だって、君たちが作っているだけで、実際は大したことはないんだ。ましてやおれなんか本当に何もないよ」とかわした。

 実際、試合前に顔を合わせると「森イズムは浸透しましたか」という王監督のツッコミに、森監督が「お前、新聞読みすぎだぞ」と切り返すなど、意外な和気あいあいムード。報道陣を遠ざけた後も2人で話し込み、「ウチの外国人は2人で4000万円ですよ」(王監督)、「ウチなんか4人でローズの4分の1だぞ」(森監督)と球団のヤリクリ自慢をやり合うなど、確かに楽しそうに話していた。


[夕刊フジ2001年03月08日]