開幕ダッシュよりゲン担ぎ! ダイエー・王貞治監督が6日、今年の開幕投手に3年連続で西村龍次投手を指名した。昨年の西村は、開幕戦に先発して4回4失点KO。試合後右ひじを手術し、結局この1試合しか登板しなかった。
しかし、チームは連覇。「開幕投手を務めた年は必ず優勝する」という“神話”を、ヤクルト時代からの「4」に伸ばした。3連覇を目指す今年も、王監督は「2年連続西村で勝っているんだから、外すことはない。ゲンは大いに担がせてもらうよ」と、西村に乗ることにしたのだ。
他球団、特に投手出身の監督にとって、開幕投手指名は1年の計となる重大イベント。それが王ダイエーの場合、単なるゲン担ぎで決まってしまった。
断っておくが、王監督は開幕戦を軽視するような人ではなかった。むしろ他球団より神聖視していたほどだ。平成8年の開幕戦では、ロッテの園川起用に激怒。「開幕投手には格ってものがあるんだ!」と、当時の江尻監督を説教する事件まで起こしている。(ちなみに試合は負け、この年の成績は最下位)
それが今では、「これを取らなきゃいけない、という大事な試合でもない」と捨てゲーム宣言までしてしまうのだから、連覇で得た自信というものは大きい。“ゲン担ぎ起用”が裏目となり、開幕ダッシュに失敗した場合にも「今年は5試合伸びた分、後から取り戻すことはできる」と、危機管理は万全なのだ。
西村は6日のヤクルトとのオープン戦に2番手で登板。その開幕戦以来のマウンドに立った。古巣相手に予定の2回を2安打無失点のデキに、王監督は「もう新聞には西村決定と出るでしょう」と笑顔。リーグで群を抜く選手層と、そのチームを完全に把握した自信が、遊び心を持って開幕戦に臨める余裕を生んでいるようだった。
[夕刊フジ2001年03月07日]