吉永トレードはON再決戦の布石?


 ダイエー・王監督が吉永トレードを自画自賛。「ミスターも言っていたけど、吉永は巨人ではマスクをかぶれるチャンスがあるよ」と、長嶋巨人での正妻の座獲得のチャンスを口にする。秋のONシリーズ再現へ、タイムリーなトレードだったとアピールするのだ。

 秋のONシリーズ再戦へ向けた、春のON対決第2ラウンド。ダイエーのドラフト2位・山田(立命大)に注目が集まったのは、王監督の計算通りだ。

 「スタンドも超満員の巨人戦は高いハードルだが、これを越せないようでは困る。シーズンに入ってローテーション投手として期待しているんだからね」と、王監督は、長嶋巨人を踏み台に山田を全国区にするシナリオを描いていたからだ。

 ルーキー対決で、9番・DHに入った、巨人のドラフト1位の阿部(中大)に2点タイムリーをくった山田だが、予定の4回を投げきり、まずはそれなりのデビューを飾った。

 「山田も人の子だったね。コントロールが悪かった(5四球)」と、王監督は言いながらも、「満員の巨人戦であれだけ投げればよしとしないとね」と、一応の合格点を与える。

 山田ほど注目度がなかったが、実は、このON対決第2ラウンドで王監督が胸を張ったことがある。巨人のスタメン捕手に吉永が起用されたことだ。

 「吉永はもともといいバッティングをしているんだからね。ただウチではキャッチャーとして城島を抜けない。巨人ならマスクをかぶるチャンスがあるからね。いいトレードだと思うよ」

 吉永トレードをこう自画自賛する王監督にとって、意を強くした吉永のスタメン起用だったからだ。しかも六回までマスクをかぶり、ベテランらしいリードを披露した。

 長嶋監督が英才教育を宣言するルーキー・阿部が、打撃では非凡な才能を見せながら肝心の守りでは予想通り、悪戦苦闘。

 投手との呼吸が合わず、リードに四苦八苦するために売り物の強肩も生かせず、走られ放題。ON対決第2ラウンドではDHに起用されるありよう。「西武の高木大成と同じ。いずれ打撃を生かして、捕手から野手にコンバートされるだろう」という、アマチュア球界関係者の予想通りの展開になってきている。

 そこで、さっそく王監督の予告通り、阿部に代わり吉永のスタメン起用となったのだ。長嶋監督も「吉永は左の代打で取ったわけではない。よければ、マスクをかぶらせる」という考え方で、王監督にもその旨を伝えている。

 もし、吉永が正妻の座を獲得、ONシリーズ再現となったら、王監督の思惑通りになる。

 「何としてももう一度、ONシリーズをやって借りを返し、五分にしておきたい」という王監督にとって、敵に塩を送る形の吉永トレードは大ヒットになるからだ。


[夕刊フジ2001年03月05日]