福岡ドームで行われる3月3日の巨人vsダイエー戦、4日のダイエーvs巨人戦、2試合とも切符が完売。今年もONシリーズの再現を期待する、ファンの支持率の高さがうかがわれる。そんな世論を背に、長嶋監督、王監督はそれぞれチームの黄金期作りでもしのぎを削る。
最近、目の肥えた野球ファンにとって、オープン戦はしょせん練習試合にすぎない。だからシビアな反応をする。全国区人気の巨人といえども、スタンドを満員にすることはむずかしくなった。それだけに、今回のON対決人気のすさまじさが浮き彫りになる。
20世紀の世紀末を締めくくったONシリーズで、21世紀のスタートも飾ってほしい。プロ野球ファンの切なる願いが、3・3、3・4のON対決の異常人気になって現れているのだ。
ところが、長嶋監督、王監督とも、もっと先を視野に入れている。
「黄金時代はもう少しです。あとは投手陣の若返りだけでしょう」と、長嶋監督が、V10指令の渡辺オーナーにこたえれば、王監督も負けていない。
「そう、黄金時代といえるような形になってきた。だからこそ今年が一番、重要なんですよ」と、王監督は強調する。
今年、リーグ3連覇、日本一奪回を果たすことが、王ダイエーの黄金時代到来につながるという。
昨年、ついに阪神、中日を追い抜き、長嶋巨人に続く、観客動員ナンバー2の座を獲得したダイエーだが、王監督は満足していない。
人気、実力とも巨人超えという遠大な目標があるからだ。だからライバル意識をムキ出しにする。王監督はこうアピールする。
「巨人との福岡ドームの2試合のオープン戦の切符はすべて売り切れたけど、九州のファンは面白いよね。巨人が主催の試合の切符は売り切れるのに少し時間がかかったのに、ウチの主催の方は発売30分で完売したというんだからすごいよね」
本拠地・福岡にとどまらず、九州では長嶋巨人以上に王ダイエーが支持されていることを力説するのだ。
これまで九州といえば、圧倒的に巨人ファンが多く、他の球団は足元にも及ばなかった。それを王ダイエーが大逆転したことを言いたいわけだ。
浮ついた人気でないことに、王監督は自信を深めている。小久保、松中の主砲コンビが、V9時代のON的な存在になってきたからだ。
「あの2人は病気だから」と、王監督が冗談を飛ばすほど2人の練習熱心さはすごい。
高知キャンプでの居残り特打は連日のことで、「担当記者も当たり前のことだと思っているから、とくに取材もしない」と、ダイエー関係者が言う。
が、小久保&松中コンビの練習中毒効果は計り知れない。王監督がこう断言する。
「2人にとっても、1年間を乗り切り、さらに高いレベルを目指すためにいいことだ。さらにチーム全体にも波及する。2人があれだけ練習するから、他の選手も手を抜けなくなるからね」
V9時代的な黄金時代到来の手応えを感じているのだ。
今秋のONシリーズ再現どころか、黄金時代作りでも互いに競い合う、長嶋監督vs王監督。先に笑うのはどちらか。
[夕刊フジ2001年02月24日]