ドラフト2位の山田秋親(立命大)に王貞治監督が二ケタ勝利の太鼓判。リーグ3連覇を狙うダイエーのルーキーエースに抜てき。大々的に売り出すために、ライバル西武との練習試合、日本一奪回の相手と目される長嶋巨人とのオープン戦にも登板させる。
高知キャンプで先発投手陣の強化を最大のテーマにしていた王監督は、スーパールーキー・山田にほれ込んでいる。
「スカウトの評判でも山田は別格だと聞いていたが、その通りの素晴らしい投手だ。西武との練習試合(26日、27日)、巨人とのオープン戦(3月3、4日)でも投げさせます」と明言した。
リーグ3連覇のライバルとなる西武。「今年もONシリーズをやって雪辱をしたい」と言い切る長嶋巨人。話題の相手にあえてぶつけようとする王監督の胸中はハッキリしている。
山田を全国区のスーパールーキーとして認知させる一番手っ取り早い方法だからだ。
松坂の目の前で、ダイエーにも平成の怪物ルーキーがいることを思い知らせる。長嶋監督には上原以上の逸材がいることをアピール。同時にONシリーズ雪辱の切り札として強烈な印象を与えようという算段だ。
「二ケタは勝つ」というのは、王監督の控えめな表現にすぎない。
「いきなりローテーションの軸になり、エース的な存在になるのは間違いないよ」が本音だ。その言葉を口にしたがらないのは、「今から本人がその気になりすぎても困るから」という王監督らしい配慮からだ。
松坂にヒケを取らない怪物ルーキーぶりは、20日の紅白戦でも実証している。武器の1つのスライダーを1球投げたところで、首脳陣が封印指令を出すと、何事もなかったかのように、スライダー抜きで快投してみせた。
「カーブでもフォークでも変化球で簡単にストライクが取れる安定感もすごい」と、王監督は舌を巻いたのだ。
その上、最大の武器の快速球がある。「147、148キロ出る低めのストレートが伸びるのが山田の魅力。素材とすれば、野茂以来の逸材ではないか」と、スカウトたちが認める。
ルーキーイヤーから4年連続最多勝(18勝、17勝、18勝、17勝)という金字塔を日本球界に打ち立て、メジャーリーグでも新人王を獲得するなどして、いまだに活躍している野茂の再来だというのだ。
松坂が、もっか2年連続最多勝に輝いているが、16勝、14勝とレベルは低く、相手に恵まれているところがある。山田が一気にライバルとして立ちはだかる可能性は十分だろう。
昨年は先発陣が総崩れ、二ケタ勝利の投手ゼロという、前代未聞の珍記録を、中継ぎ陣がカバーしてリーグ連覇した王ダイエーだが、今年はルーキーエースがいる。
二ケタの中身をどこまでアップさせるか。それによって新人王、最多勝はもちろんのこと、リーグ3連覇をもたらせば、松坂、上原も手にできなかったMVPまで視野に入ってくる。
パ・リーグの救世主と期待される王ダイエーに、もう一つ新たな看板ができた。
[夕刊フジ2001年02月23日]