松井vs清原の巨人4番戦争に世界の王ことダイエー・王監督が注目発言。「松井と清原では差がつきすぎた」と言い切り、昨年、2冠王に輝いた松井を全面支援。3冠王獲りへ秘伝を伝授する。
「今年もONシリーズを実現して借りを返したい」という王監督にとって、長嶋巨人の4番戦争は他人事ではない。
万が一にも、つまらないモメ事で長嶋巨人がコケては話にならないからだ。しかも松井は巨人の4番として、世界の王の後継者の道を歩み始めたばかり。無関心ではいられない。
「松井と清原の4番戦争と言ったって、今の2人ではハッキリ差がついてしまったじゃないか。4番は松井しかいない」
昨年、ホームラン王、打点王の2冠。公式戦MVP、シリーズMVPにも輝いた松井4番を明言する。
「オレが監督だったら、ホームラン王を初めて取った(平成10年)時点で松井を4番にするよ。ミスターは何をこだわっているのかな」と、言い続けてきた王監督にすれば、昨年の4番・松井の働きはわが意を得たりの心境だろう。
それなのに、巨人の4番戦争という言葉が出てくること自体、不思議でしようがないのだ。
だから王監督は、世界の王として後継者・松井を全面支援、エールを送る。松井本人もターゲットにしている3冠王獲りの秘伝まで伝授する。4番戦争という低次元なことにとらわれずに、さらなる飛躍を願う。
「3冠王で一番、問題になるのは打率だろう。今の松井は胸元に早い球を投げられ、外へ変化球を落とされると、まだ崩されて打てない。打撃フォームが崩れても何とか当てるということができるようにならないと、打率は上がらない。これは他人が言ってできるようになるものでなく、本人が自分でつかむしかないけどね」
相手投手のペースにはまらない柔軟な打法マスターをまずあげる。そして、次に松井の売り物であるホームランに関してもこうアドバイスする。
「もっと1試合でホームランを量産する必要があるね。オレが55本打ったとき、1試合で2本以上打った試合が10試合もある。1試合4ホーマーもあったけどね。単純計算すると、10試合で22本打ったことになる。あのときは140試合だったから、残りの130試合で33本しか打たなかったわけだよね。でも、ホームラン打者というのは、もともと調子の波が大きいものなんだ。だから打てるときにまとめて打つ必要がある」
昭和39年に日本新の55ホーマーを記録した自らの体験を語り、1試合でのホームラン量産の重要性を説く。
松井にすれば、何より心強い王監督のエールになるだろう。もともと4番戦争は「今年は内なる戦い」を宣言した長嶋監督のマスコミに対するリップサービスと、巨人ラストイヤーに燃えている清原への配慮だ。
ところが、巨人の4番として2冠王になり、6年ぶりの日本一の原動力になった松井とすれば、愉快な話ではない。不快感を隠し切れないでいたが、世界の王の言葉を聞けば、「見ている人は見ている」と納得するだろう。王監督の4番・松井全面支援は、格好のフォローになる。
[夕刊フジ2001年02月21日]