鷹・松中リタイアも王監督なぜか余裕



 昨季のパ・リーグMVPに輝いたダイエー・松中信彦内野手(27)が15日、練習中に左手首痛を訴え、打撃練習を回避、別メニュー調整を行った。「痛い。焦っています」と松中は浮かぬ顔だったが、王貞治監督(60)やトレーナー陣は、なぜかしら一様にニンマリ。主砲がリタイアした緊急事態に、この余裕。さて、その笑顔の裏に、何がある?

 左手首をさすり、小首をかしげながら、松中がロッカー室へ消えた。打撃練習を回避、まさしく緊急リタイア。しかし、その一報にも、王監督は驚かない。むしろ、笑っていた。

 「体の方が、ブレーキをかけているんだよ。ボクの現役時代? こういうのはなかったな。だって、彼らほど、マジメに練習してなかったからな、ハハハ」

 なにしろ、キャンプ初日から、小久保とともに居残り特打するのが、松中の日課。球場を後にするのは、日も暮れかける夕方6時ごろなんてのはザラ。小久保も、右でん部のハリで、今キャンプ中に一度早退しているのだが、とにかく、この2人の激しい練習ぶりにヒヤヒヤしていたのが、トレーナー側だった。

 「放っておくと、この2人は、いつまで練習をやっているか分からないですからね。今回? 練習のし過ぎでしょう。ややこしいことになる前に、止めた方がいい」と田中チーフトレーナー。猛練習の2週間で悲鳴を上げた左手首。松中の方から、大事を取りたいと言ってきたとあって、これ幸い。“大事故”に至る前に、自覚症状が出たとあって、王監督ともども、ホッと胸をなで下ろしたというのが、本音なのだ。

 「無理して打つと、フォームも崩れる。勇気を持って休みます。でも、なんで痛くなったのかなあ…。焦らないといけない。もう第4クールですから」

 この日から、ケース打撃がスタート。実戦突入とあって、松中は浮かぬ顔。周りがたじろぐほど練習しているというのに、半日休んで、もうイライラ。それにしても、練習しなくて、首脳陣を悩ます選手は数多いが、やり過ぎを心配しなければいけない選手も、いるものなんですね…。

 ○…右手中指のまめの影響が心配された山村(九州共立大)が、9日ぶりにブルペン投球を再開した。捕手を立たせたまま、威力ある速球を150球。山村は「久しぶりでバランスを崩したりもしたけど、(指は)大丈夫でした」と満足そう。「捕手を座らせてもいいぐらいの内容」と高評価を与えた尾花投手コーチをはじめ、首脳陣も安心した様子だった。

[サンケイスポーツ2001年02月16日]