長嶋、森「覇道」野球を敵対視



 悲願のV2を阻むのは、やっぱり森横浜−。巨人・長嶋茂雄監督が、渡辺恒雄オーナーに約束した「2年連続日本一」に対して、立ちはだかるのは、星野中日でも、山本広島でもなく、“犬猿の仲”である森祇晶氏が率いる横浜であることがわかった。

 大雪の影響が残る東京・稲城市のよみうりランドで28日、21世紀最初のファンとの集い、「GOGO巨人軍」が開催された。6500人のファンを前にあいさつした長嶋監督。「戦うからにはねらいます」と高らかにV2を誓った。だが、胸のうちを推し量ると、一つの不安に付きまとわれていた。

 今季のライバルに関して、長嶋監督は「他の5球団より、わがチームの中にある」としながらも、興味深い発言をした。

 「野球は覇道ではなく、王道でありたい。巨人が培ってきた伝統の重さ、奥行きを構築しながら、将来の道をかっぽしないといけない。現場とフロントが一体となって推進の役割を担っていく。現場だけじゃない」

 長嶋監督が目指す“王道”とは、思いやりと徳を主とした管理術を言う。一方、“覇道”とは武力や権謀を用いること。まさに正反対の監督術。

 その“覇道”とは、そう、横浜の森監督の主張するテーマ。西武時代からよく口にしてきた言葉で、横浜監督に就任しても変わらない。捕手出身の森野球を最も端的に表している。長嶋監督が春季キャンプが始まる直前になって、“覇道”を口にしたのは、森横浜を最大限に警戒しているからに他ならない。

 長嶋監督のライバルは、“巨人キラー”川崎憲次郎をFAで獲得した星野中日、“ミスター赤ヘル”が復帰した山本広島、そして、森横浜といわれてきた。その中で、森監督が今季のセ界をかき回す主になることを恐れていたのだ。「V9戦士はケガがない。そのまま突っ走ってしまう」

 長嶋監督は過去にも最も警戒する監督を、直接たたかずに批判したことがあった。「野球は戦術だけでは勝てない。今の時代、グラウンドの上での戦術に大差はない。戦略というものが必要だ。オフの補強などのチーム編成だ」

 戦術で勝とうというのは、阪神・野村監督がヤクルト時代から盛んに公言しているテーマ。「勝つには戦術ではない、戦略だ」と言って、暗にライバル視していた。長嶋監督は言葉を利用することで常に心をもり立て、ライバルに打ち勝ってきたのだ。

 森横浜を完ぺきにやっつけることが、巨人V2の必要条件。長嶋監督が“横浜銀行”を設立できたとき、自動的にV2は転がり込んでくる。

[夕刊フジ2001年01月29日]