2002年オフのFAによる大リーグ流出が懸念されている巨人・松井秀喜外野手(26)に、ポスト長嶋として「プレーイングマネジャー(監督兼選手)」を任せる仰天プランが浮上。ここまで期待されたら、ゴジラも巨人を見捨てるわけにいかなくなってきた。
新世紀にふさわしいビッグスケールの構想だ。巨人球団関係者が、こう明かす。
「去年はONシリーズで盛り上がったけれど、長嶋監督だって、永久にさい配を振うわけにはいかない。山室球団代表ら球団首脳が心配しているのは、むしろ長嶋退任後です。2002年にサッカーW杯があるのに加え、選手のメジャー流出傾向も止まらないだけに、人気衰微の可能性がある。危機感は相当なものですよ。『松井にプレーイングマネジャーを任せられないか』という声まで上がっているほどですから。データに細かい山室代表のことだから、過去のプレーイングマネジャーのケースなどを研究しているんじゃないでしょうか」
かつては故村山実氏(阪神)、野村克也阪神監督(当時南海)らが務めた「プレーイングマネジャー」だが、最近はめっきりお目にかからなくなった。一見、時代に逆行している。
しかし、ダイエーの王貞治監督がプロ入りしてONコンビが結成されたのが昭和34年(1959年)で、まる42年が経過。いまだにON人気にオンブにダッコの球界の現状は、非常に危ういといえる。
「ミスターといわれる長嶋さん以後、ミスター・プロ野球の称号を受け継ぐ選手がいるとすれば、松井しかいないのが現実でしょう」(前出球団関係者)という説明はうなずける。
背景には、ポスト長嶋茂雄の人材難もある。
本命といわれた森祗晶氏が横浜監督に就任。長嶋監督が禅譲の意向といわれる原辰徳ヘッドコーチには、フロント内に「ヘッド格を2年務めて、底が見えた」という声がある。
堀内恒夫元ヘッドコーチの手腕には高い評価があるが、地味な感が否めない。
日本テレビサイドに推す声が強いといわれる江川卓氏は、「シーズン中、グラウンドに降りてきて取材することがほとんどないのに、テレビでは現役選手をおもしろおかしくちゃかすようなことばかり言っている。はっきり言って、反発を感じている選手は多い」(野手のひとり)という現実がある。
いずれにせよ、長嶋監督に比べるとスター性で見劣りするのは避けられず、後継者はだれがなってもやりにくい。
仁志敏久などは「うちくらいメンツがそろうなら、細かいさい配は必要ないと思う。むしろ、型にはめられると、力が発揮されないんじゃないか」と言っている。なるほど、視線が選手レベルの松井のさい配は、インパクト十分だけに、あながち暴論でないのかもしれない。
松井は「何言ってんの!? そんなの、あるわけないじゃん」と一蹴するが、球団サイドの松井に注ぐ視線はただごとではない。
異例の8年契約提示をけられた球団は今後、メジャー流出を防ぐためにも、将来の監督手形どころか、この仰天プランを持ち出してくる可能性があるのだ。
[夕刊フジ2001年01月04日]