C o C o M el maiden voyage

   処女航海記(伊勢〜オーストラリア・3500浬)




 船籍地オーストラリアのダーウィンまで、伊勢から3500浬の行程を、試運転を兼ねての初航海です。もともと台風など、特別の悪天侯を除けば十分にこの航海に耐え得る実績のある船型なので心配はしておりません。

 1万Lの燃料タンクの容量にあわせて、燃料の給油地をうまく選定することがポイントでした。燃料消費量を計算し、途中3ケ所の港で給油する計画を立てました.那覇、マニラ、ピトン(インドネシア)の3港です。

 新しいエンジンなので無理な負荷をかけないようにと、1600rpm(平均20kt)での航海としました。

 10月27日13:00pmに伊勢を出港し、那覇まで直行。志摩半島、熊野灘、潮岬を通過し四国沖に差しかかると日はたっぶりと暮れ、夜間航行です。十分に気を付けてワツチをしながら、慎重に本船を走らせます。翌28日10:00am、都井岬を右手に見ながら航行、いよいよ黒潮に入ります。黒潮は東に向かって約6ktで流れ、本船はこれに逆行しての 航行です。船速も自然と遅くなりますが、17ktで航行、黒潮に負けてません。

 15:00pmには種子島を通過、風向が南東に変わり向い波です。海も荒れ模様になってきました。1300〜1500rpmにエンジン回転を落としながらも、本船の波をたたかない凌波性の良さに気分良く走らせ、真夜中には奄美大島を通過。

 船首甲板上に積んでいるボストンホエーラーの荷崩れが気になり調べましたが、固定ロープ、ワイヤーの弛みは無し。安心してそのまま続航し、第一寄港地の那覇に看いたのは29日8:00amでした。

 燃料軽油の残量は、2800L、余裕のある残量でした。出港時の積込量が9700Lですから、43時間航行し、6900Lの消費です。これは、1時間当り160Lの燃料消費量です。 航海は、1600rpm(1000馬力)なので、最高の燃費効率と言えます。

 新造船の航海には、思わぬトラブルに出くわすものです。途中から、トイレの水が出なくなり、大変。バケツで水を流しつつ急場を凌ぎました。レーダーのヘッドマーカーが少し左舷にずれており、この誤差のため夜間には、前方の他船の位置確認に神経を使います。又、キッチンの水も出なくなり、清水ポンプが故障だと慌てました。那覇に着いてから、調べてみると、水栓のストレーナーに微粒子が詰まっており、これを掃除したら水の出が全て回復し、一安心です。那覇では、先ず給油を終え、レーダーの調整を地元のフルノで完了しました。あいにく、東シナ港に温帯低気庄が発生し、行く手を遮ります。安全 を期して、那覇で3日間の天気待ちです。

 11月1日6:40am、まだ波は高いですが、石垣島避難も考慮しつつ、那覇を出発.4mの波高の追い波を船体に受けながら進んでいく。ここでも、この船の凌波性の良さが我々に全く不安を感じさせない。15:20pm、宮古島沖を通過、翌2日の正午には、N20度13分、E 121度04分地点。3日の10:00a m、マニラに到着しました。この日は、給油後、ビルジポンプを総点検。大切なエンジンは実に快調、船の走行性能の良さに、気分爽快!クルーの体を少し休息させる。

 翌4日8:00am、マニラを出発。12:00amにはN13度40分E120度37分地点を過ぎ、ビトンに向かう。

 5日の12:00amにはN7度11分、E121度52分を通過し、6日の12:00amにビトンに到着しました。この日と翌日は国民休日のため停船を余儀なくされました。荒海での航行中には無事故なのに、現地の船が、停船中の我が「C o C o M el」に接触し、船首部の手摺を少し壊してしまいました。破損部はそのクルー達の手で、緊急の復旧はしましたが、実に残念な事故でした。悪いことに、8日、9日も国民休日らしく給油ができません。結局、給油して出港したのは11日の8:00amでした。実に気ままなインドネシアのラマダン休日でした。

 同日12:00amには、N0度24分E125度分を通過しました。

 翌12日12:00amには、S6度27分、E128度42分を通過、13日の9:30am、やっと無事にダーウィン港の沖合いに到着、停泊しました.全員、体調も良好です。そこへ税関船が釆て、本船は検疫を受けたましたが、短時間で完了。その後、港内で接岸し多数の人々に出迎えられ、下船しました。              、

 長い航海を無事に終え、息つく暇もなく空港まで車で移動。ジェット機に搭乗し、夕方には、懐かしい日本、関西国際空港に到看です。往路に比べて、何と素早い帰路でしょうか。感嘆! 同日、地元のラジオ局のニュースにも本船のことが流れ話題になりました.

 追記)同週末に、オーナートライアルがありました。一泊二日の魚釣りファミリークルーズです。200浬先のいつものポイントまで航海し、食べごろの魚を大漁しました。 wonderfulll & excellent performance とのお褒めの言葉を戴き、ホッとした心持ちです。 3500浬の行程を延ベ200時間の航海でした。。平均の燃料消費量は、170L/h.機関、船体には何のトラブルも無く終えることができました。途中の、悪天侯も難なく乗り切り、凌波性、速力、安定性そして低燃費で経済性に優れていることが、即ち、本船の船体諸性能の良さが、改めて実証されました。設計、製造した造船所としても実に嬉しい限りです。




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