今回の「ハコダテ☆ものづくりフォーラム」設計競技は、函館の西部地区に現存する「歴史的建造物の維持保全を目的とした事業計画の提案、並びに計画敷地内に建つその他の既存建物、及びこれらを取り巻く空間の再生」を題材といたします。
函館市の条例により、景観形成指定建築物として登録されている純和風木造住宅建築「石井家」を、函館を代表する貴重な歴史遺産の一つとして後世に残すことを第一の主題とし、同敷地内に建つ他の建築物を含めた空間の有効な利用再生計画案を広く一般に公募するものです。
計画地は、函館山の麓、市条例により「都市景観形成地域」に指定された区域内にあり、「元町末広町伝統的建築物群保存地区」に隣接した函館観光には欠かせないスポットの一つに挙げられます。
凡そ150年前の開港時には、国際外交、また北方開拓の礎として位置づけられていた箱館の中でも、この西部地区は行政を司る公共施設や、外国の領事館、また海運会社や金融機関などの商業施設、更には国内外の様々な宗派の宗教施設が軒を連ねる中心市街地として開発が進められ、明治より、昭和の初期にかけて経済的に隆盛を極めた当該地域には、贅をつくし技術の粋を凝らした日本的伝統建築や、木造の洋風建築、和洋折衷様式の建物、また重厚な組石造やレンガ造の建造物が混在して建てられ、独特の異国情緒を漂わせる街並みを形造ってまいりました。
道外の既存都市に比較して、新興都市であった箱館の成長の速度は、他に類をみないものであったことは想像に難くありません。その後、北洋漁業の拠点ともなった函館の経済の発展は、人口の急激な増加として都市形成に大きな影響を与えてまいりました。函館市特有の地形や、度重なる大火も影響して、市民の居住域は北部や東部の郊外域へと放射状に拡散してまいります。これに呼応し都市の中心機能も西部地区から徐々に北部へと移行し、今日では行政や金融の中心地は函館駅周辺域となり、飲食や商業施設の集積地は、五稜郭周辺域や美原地区へと変化しています。
中心市街地としての一つの役割を終えた西部地区は、その美しい街並みを今日に至るまで残して来たことで、今や国際的な観光都市へと成長した「函館の顔」としての新たな側面を担うこととなりました。函館山を背にして二つの海に挟まれた市街を見下ろす数多の坂、それと交差するように広がる歴史的な建築群が織り成す景観は、誰もが誇りに思う函館市民の共有の財産として、これからも、このまま在り続けることを希求されております。
函館市は、かつて人口30万人をかかえる中核市として位置づけられていましたが現在では27万人台へと減少し、更なる流出に歯止めがかからぬ状態となっています。特に若年齢層の減少は、今後の自然増が期待されない今日にあっては、深刻な社会問題を引き起こす要因となることが懸念されております。
こうした社会問題の産物とされる「都市の空洞化」は、特に中心市街地に居住する人々の高年齢化を助長し、また近年では「都市の縮小」と呼ばれる新たな都市問題をも引き起こす原因となっております。これらの都市問題の弊害として顕在化してきた事象に、市街地における老朽建築の放置問題があります。
長引く経済不況も相まってか、居住に適さないまでに老朽化した建物を所有する高齢者世帯の多くは、改築や改修することが困難なまま移住を余儀なくされ、また相続する者がないまま所有者をなくした建物は放置され、やがて老朽建築として取り残されているのが現状です。近年、函館市街地の街並みに確認される様になって来たこうした現象は、例外なく西部地区にも見受けられる様になってまいりました。
市民による存続の陳情も虚しく歴史的建築物が解体され、また景観形成指定建築物の指定解除申請が記事として新聞に掲載されることも増えてまいりました。
こうした状況を食い止めるため、函館市は、改修のための助成を行うなどの施策を行っており、またNPO団体や民間の篤志家の働きで、修復が行われ市民や観光客の集いの場として新たに蘇る伝統的建築物も徐々にではありますが増えてまいりました。しかし、こうした明るいニュースの一方で、名もないまでも古き良き函館の街並みの一角を賑わせ、その景観の一部を担ってきた中小の格式ある商家や、しもた屋、瀟洒な個人住宅などは、今もなお人知れず姿を消しているのが現状です。
今回の設計競技の主題として取り上げさせていただく建物は、昭和の初期に建てられた木造二階建ての個人住宅「石井家」です。管理者のご尽力により、丁寧な改修が重ねられて来た結果、建設当時の佇まいを今日にまで残すことが出来た貴重な名建築です。当該建物は、函館港を見下ろす八幡坂の裏手にあり、旧函館区公会堂とハリストス正教会を結ぶ観光ルートのほぼ中程に位置する場所にあります。建設された当初は、約660坪に及ぶ敷地内に、日本庭園、及び数戸の離れと共に配置計画されており、現在では、庭園の一部と離れは、ペンションとして生まれ変わり利用されております。今回、利用再生計画案を提案して頂く対象となるのは、この敷地の一部で、個人住宅が1棟建てられている1区画、ペンションが1棟建てられている1区画、当該建物「石井家」の建つ1区画、及び当該建物の建つ敷地が接する現存道路としての2区画、計5区画(約376坪)といたします。
景観形成指定建築物「石井家」を維持されている管理者が、唯一望まれていることは、約90年の永きに渡り函館の街並みを創り出す一翼を担ってきたとも言える当該建物を、そのままの形で後世に残してゆくことです。
「ハコダテ☆ものづくりフォーラム」設計競技2012では、こうした要望を実現させるため、また今日の函館の街並みを蝕みつつある都市問題への解決策を見つけ出すことを目的に、第1段として、当該建物、及び敷地を有効活用し、これらの存続に必要な収益性を主題とした「事業計画コンペ」を行い、第2段として、「事業計画コンペ」の優秀案を基に設計条件を策定し、これをマスタープランとし、計画地とその周辺地域の再生を主題とした「建築設計コンペ」を2段階方式により行います。
函館の貴重な観光資源でありながら、存続の危機に瀕している数多の建物を守ることにも通じる「革新的」で「持続可能」な解決策をご提案ください。
競技日程
1)「事業計画コンペ」主題の告知
2012年8月6日(月)より
2)「事業計画コンペ」応募要項、資料公開(事務局ウエブサイトにて)
2012年8月13日(月)より
3)「事業計画コンペ」応募登録受付開始(事務局ウエブサイトにて)
2012年8月13日(月)より
*応募登録の完了は、各代表者にメールによりお知らせいたします。
4)「事業計画コンペ」質疑受付開始(事務局ウエブサイトにて)
2012年8月13日(月)より
5)「事業計画コンペ」現場見学会(出席は任意とします。)
2012年9月23日(日)
集合場所;計画地
集合時間;午前10時
*現地には、十分な駐車スペースがございません。公共の交通機関をご利用下さい。
6)「事業計画コンペ」質疑応答締め切り
2012年10月1日(月)
7)「事業計画コンペ」応募登録受付締め切り
2012年10月22日(月)
8)「事業計画コンペ」応募案受付
2012年10月22日(月)より10月25日(木)まで
(10月25日の消印、受付印まで有効)
9)「事業計画コンペ」審査(非公開)
012年10月29日(月)より11月12日(月)まで
*一等案として一作品、入選案として数点を選定いたします。
10)「事業計画コンペ」受賞案の発表(事務局ウエブサイトにおいて同日掲載いたします)
2012年11月12日(月)
* 受賞案を基にして「建築設計コンペ」の設計条件を追加設定いたします。
11)「建築設計コンペ」応募要項、設計資料公開(事務局ウエブサイトにて)
2012年11月19日(月)より
12)「建築設計コンペ」応募登録受付開始(事務局ウエブサイトにて)
2012年11月19日(月)より
*応募登録の完了は、各代表者にメールによりお知らせいたします。
13)「建築設計コンペ」質疑受付開始(事務局ウエブサイトにて)
2012年11月19日(月)より
14)「建築設計コンペ」現場見学会(出席は任意とします。)
2012年12月16日(日)
集合場所;計画地
集合時間;午前10時
*現地には、十分な駐車スペースがございません。公共の交通機関をご利用下さい。
15)「建築設計コンペ」質疑応答締め切り
2012年12月28日(金)
16)「建築設計コンペ」応募登録受付締め切り
2013年2月12日(月)
17)「建築設計コンペ」応募作品受付
2013年2月12日(火)より2月14日(木)まで
(2月14日の消印、受付印まで有効)
18)「建築設計コンペ」一次審査(非公開)
2013年2月18日(月)より3月11日(月)まで
*8作品程度を1次審査通過作品として選定します。
一次審査通過作品発表(事務局ウエブサイト、及びメールにて)
2013年3月11日(月)
19)「建築設計コンペ」最終審査(公開)
提案発表・質疑応答・審査
受賞作品の発表(事務局ウエブサイトにおいても同日掲載いたします)
表彰式・受賞パーティー
2013年3月24日(日)
20)「建築設計コンペ」作品展示会(函館市内の各地にて移動展示を予定)
2013年3月25日(月)より4月末日まで
作品集配布(2013年7月末日までを予定)
* 作品集は、作品を提出して頂いた皆様に郵送いたします