夜壊
マリューの背中が寂しそうで、それでムウはようやく気付いたのだ。
彼女からは決して自分には踏み込んでこないという事を。
彼女は何かに怯えている。
無意識のうちに嫌っている。
「今更、訊かれるとは、思わなかったぜ?」
だからムウは、どうして戻ってきたのだ?と訊ねる彼女に、笑って見せた。
本気で気付いていないのか、それとも気付かないようにしていたのか。
いいや、違うな。
ムウはマリューに口付けて、彼女が一瞬の拒絶の後、自分に身を委ねるのを感じて思った。彼女は、ただ、「愛せない」と思っていただけなのだと。
「わ、私は、モビルアーマー乗りは嫌いです。」
真っ赤な顔で、辛うじて告げられたその台詞に、ムウは勝ち誇ったように笑って見せた。
俺は違うからと、確信を込めて。
「あ、俺今、モビルスーツのパイロット。」
「少佐?」
「一個だけ確かめたいんだけど。」
現在、アークエンジェルは宇宙空間を漂っている。ウズミ・ナラ・アスハの理想を受け継ぎ、ザフトとも地球軍とも違う、もっと別な道を探そうと、地球を脱してきたばかりである。
そんな状況の中。
ムウにキスされて告白されたのは、ほんの二日前。
ムウと晴れて恋人同士になって嬉しいと思いながら、しかし、マリューは少し彼をいつもとは違う風に見ていた。
つまり、ちゃんと異性、として認識した、という事だ。
今までは・・・・・まあ、普通の気兼ねなく話せる同僚、くらいの気構えだったのだが、いざ恋人、となってしまうと、どうにもくすぐったくて、態度がおかしくなってしまっていた。
誰かを愛する心・・・・それをここ何年かどこか遠くに置き去りにしてしまっていたため、どこかぎこちない。
まるで恋を知らない小娘のようだと思うが、どうにも居心地が悪かった。
だから、彼が突然やってきて、マリューを前に真剣な表情をするから、彼女は咄嗟に身構えてしまった。
「何です?」
こわごわムウを見上げるマリューに、彼は殊更がっくりとうなだれて見せた。
「あのさ、俺のこと嫌い?」
とんでもない。
「なんか・・・・・態度よそよそしくないか?」
それは・・・・・当たり。
「・・・・・・・・・・・。」
返答に困って俯く艦長に、少佐は頭を掻いた。
「やっぱ、迷惑だったか・・・・・・。」
以外にしおれた声だったので、マリューは咄嗟に「そんなこと!」と声を荒げた。
「じゃあ、どういうこと?」
すっと目を細め、腕組みするムウを前に、マリューはきゅうっと唇を噛んだ。
「あ・・・・の・・・・・・。」
「うん。」
「わ、私は艦長です。」
「うん。」
「で、ですから、あまり・・・・・浮ついた行為はちょっと・・・・・。」
「・・・・・・・・・・つまり、それが迷惑っていうんじゃないか?」
困ったような顔で言われて、マリューは慌てて首を振る。
「ち、違います!だから・・・・あの・・・・・・。」
「状況判断くらい俺だってするさ。場所もわきまえないでいちゃいちゃする気もあんまりないし。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・艦長室に入り浸るのも駄目、とか言うか?」
マリューは困ったように俯いた。
そうじゃない。
そうじゃなくて。
「少・・・・・佐のお気持ちは嬉しいですし、私も・・・・・少佐と一緒に居たいです。キス・・・・されて嫌じゃなかったし。」
俯いて、マリューは続ける。
「でも・・・・・戦争をしてる状況で・・・・・戦艦で・・・・・これから先も判らない状況で、私達だけ、浮ついてていいんだろうかと・・・・・。」
「別に浮ついてるつもりはないんだけどな。」
あっさり言って、ムウは艦長室のソファーに座り込んだ。
「マリューさんはさ、恋愛ってのは全部浮ついてると、そう思うわけ?」
「・・・・・・・・・・。」
沈黙に、ムウがうなだれた。
「傷つくよ、それ。」
「で、でも。」
「俺は、」
慌てて弁解するように側に寄ったマリューの、細い手首を掴んでムウは彼女を引き寄せた。あっと思った時には、マリューは彼の胸に落ち着いていた。
ぱあっと頬が赤くなる。
「別に浮ついた気持ちでマリューにキスしたわけじゃない。」
空色の瞳が、マリューを捕らえている。そこから抜け出す事は、困難に思えた。
「真剣にマリューを愛してるのに、そういうわけ?」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
不意に、マリューの目の奥が熱くなった。
急に、情けない思いが膨らんだのだ。
「マリュー?」
ふと、慌てたようなムウの声がして、マリューは益々情けなくなる。
「な・・・・・ど、どうした!?」
「・・・・・・ごめんなさい。」
消え入るような声で呟き、マリューはありったけの愛しさを込めてムウの首筋に抱きついた。
「ちょ・・・・・・。」
バランスを崩したムウが、ソファーの上に押し倒される。その胸に顔を埋めて、マリューは肩を震わせた。
「ごめんなさい・・・・・・。」
「マリュー?」
「私・・・・・・どうしていいか分からないの・・・・・。」
「え?」
ふっとムウの顔が曇った。
「貴方の事を、死ぬほど愛してる・・・・・でも・・・・・どうすればいいのか分からないの・・・・。」
声が湿っていて、ムウはどきりとした。手を伸ばして、柔らかいマリューの髪にそっと触れる。
「どういう意味?」
「・・・・・・・恐くて・・・・・。」
マリューが最後においてきた恋の破片。
その破片は、今でもマリューの胸に突き刺さり、抜けてはくれない。
いや、違う。
それは唐突に終わりを告げた恋だから、その思いをどうすればいいのか分からないのだ。
抜けてはくれないのではなくて、抜き方が分からない。
だから彼女は戸惑う。
ちゃんと振り切れていない自分が、ムウの想いに甘えていいのか。
ムウに囁かれた愛しい言葉を、受け入れていいのか。
それは、凄く浮ついた事じゃないのか・・・・・・。
「何が恐いんだ?」
そっとマリューの柔らかい髪に触れて、ムウは優しく訊ねる。
「俺が恐い?」
ぎゅうっとマリューがムウの制服を握り締めた。
「戦争が恐い?」
「・・・・・・・・・。」
「愛して、失うのが、恐い?」
弾かれたように顔を上げたマリューの瞳には、「何故知っているの!?」という色が浮かんでいた。それに、ムウが笑った。
「なら、俺も恐いよ。」
そっと両頬に手をあてがい、彼女の額に、自分の額を押し当てる。
「君を失ったらと、恐いし、君に嫌われたらと、恐い。」
「・・・・・・・・・。」
呆気にとられたようにマリューが目を丸くした。それを認めて、ムウが静かに切り出した。
「俺だって、どうしていいのかわからないし、どうすれば君が笑ってくれるのか、そればかり考える時もある。どうやって君を愛したら・・・・・君が幸せになるのか・・・・・・。」
分からなくて、不安になる。
だから、ここに来た。
「距離を縮めたい。」
マリューの目を、真っ直ぐに見て、ムウが言った。悪戯っぽく笑う。
「今は手を伸ばして繋いでるだけだから、君の姿かたちが見えない。」
ふっと、ムウは手を動かして、ゆっくりとマリューの唇をなぞった。微かに、彼女の身体が強張る。
「ちゃんと、マリューを確かめたい。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「もちろん、嫌ならしないケド?」
互いを知らなければ、先には進めないと、ムウは言う。
だから知りたくて側に居たいと、そうも言う。
触れてみたい。
ふと、マリューはそう思った。
この人に触れて、この人がここに確かに居ると、それが分かれば、自分に巣食う夜が壊れるかもしれないと思ったのだ。
愛してみたい。
愛されてみたい。
不確かな気持ちの中で、その思いだけが強烈に強くて。
マリューは手を滑らせて、彼の胸元に添えると、そっと身を伏せた。
「私も・・・・・・貴方を確かめたい・・・・・・。」
ここに、確かに居るのだと。
薄暗い部屋。ベッドの上。見えるのは、そのベッドの天蓋と・・・・・・。
「ん・・・・・・・・。」
考え事を断ち切るように、口付けられる。ゆっくりと舌が押し入り、絡まり、マリューは必死でそれに応えた。
目を閉じて、腕を回して、離れては落ちてくる柔らかなそれを、求めるように。
制服に手がかかり、一枚ずつ、もどかし気に脱がされていく。
器用に、口付けたまま、するすると脱がせていくから、マリューは頭の隅でぼんやりと随分手際がいいな、と思った。
下着に手がかかったとき、思わず彼女はキスの合間に感心したように言っていた。
「慣れてるのね・・・・・。」
「え?」
間近で見るムウの顔が、一瞬ぽかんと呆気にとられた。それから、肩を震わせて笑い出す。
「何よ!」
「ん・・・・・ごめん・・・・・。」
必死に笑いを噛み殺すムウに、マリューは頭の下の枕をぼすん、とぶつけた。拍子に、ブラジャーの肩紐がするっと外れる。
「だからごめんって。」
「・・・・・・・。」
枕を胸元に抱え込んで、マリューはふいっとそっぽを向いた。キレイな首筋が、よく見える。
「マリューってば。」
そっと首にキスを落とし、ついでに舌を這わせると、途端に、彼女の身体がぞくっと震えた。
「枕・・・・・放してよ。」
「いや。」
ふうん。
がっちりと上半身を包み込むように枕を抱いて、マリューはやっぱりそっぽを向いている。
「じゃ・・・・・・。」
ムウはマリューの背中に手を滑らせて、さっさとブラジャーのホックを外し、枕はそのままで、なんどもしつこく首筋やら唇やらにキスを落としていく。
自分の背中に、つと指が滑り、マリューは思わず体を跳ね上げた。
「ん〜?」
「っ・・・・・・。」
にやっとムウが意地悪く笑う。
「ここ、ひょっとして弱い?」
肩甲骨の辺りを、すうっと撫でられて、マリューは全身を駆け抜けるぞくぞくを押さえきれなかった。
「や・・・・・・だっ」
「じゃあ、枕放して。」
「や。」
「あっそう。」
今度は脇の下辺りをくすぐると、たまらずにマリューが身体をよじった。
「やだ・・・・・ちょっと・・・・くすぐったい!」
「そのうちよくなるから我慢して。」
手のひらでなで上げられ、くすぐったい、というよりも、戦慄が走る。
思わず声が漏れた。
「もっとくすぐっちゃおっか?」
「や、やだ・・・・・。」
「じゃあ、枕放して。」
「・・・・・・・・・。」
「頑固だな。」
じゃあいいですよ。
と、ムウは太ももに手を掛けた。
「や・・・・・ちょっと・・・・!」
慌てて足に力を込めるから、ムウが意地悪そうにマリューを見た。
「ここ、どうにかしないと、何にも出来ないでしょうが。」
ぐっと力を込められ、マリューは再び枕を振り上げた。
「な・・・・・生々しいこと言わないで下さい!」
「あれ?そういうの苦手?」
ひょいっと枕をかわして、ムウは彼女の手首を掴んだ。
「よく出来ました。」
「っ!!」
あっという間にムウはマリューの上にのしかかり、さっさとブラジャーをはずしてしまう。マリューの右手はつかまれたままだ。
「もう!」
「ん〜。」
白い両胸の果実に口付けて、弄ぶ。頂を口に含まれ、触れる舌の感触に、堪らずマリューが顔を背けて、漏れそうになる声を呑んだ。片一方を唇で、もう片方を指先で弄ばれて、マリューは声を押し殺すのに必死になって、唇に指を持っていった。だが、見咎められてつかまれる。
「や・・・・あっ・・・・・。」
ず、っと足がシーツを蹴り、胸を責めながら、ムウは少しずつ唇で肌を下っていく。
肌に触れる、舌と、唇の感触。
「あ・・・・・・はっ・・・・・んっ」
腰の付近に手が彷徨い、口付けが下腹部を通って、太ももへ移動していく。
「やあ・・・・・ん・・・・・。」
慌てたように足を閉じかかるマリューに、顔を上げたムウが、そっと口付けた。
「だから、だめだって、マリュー?」
耳たぶをかまれて、「んんっ」と切なげな声が漏れる。
「こうしてくれないと、出来ないだろ?」
ぐっと足を割られて、咄嗟にマリューは先ほどの枕を抱きしめた。
「・・・・・・・・・・。」
まあ、イイケドさ・・・・。
ぎゅうっと抱きしめられている枕に嫉妬しそうな自分が、少し大人気ない。
が、そのうちきっと彼女は自分を抱きしめるだろうと考え直す。
「んっ・・・・・・。」
下着を下ろし、開かれた体の奥の、柔らかく潤んだ部分に、そっと指を這わせて、撫でていく。
「んっ・・・・あっ・・・・・ふっう・・・・・。」
声がくぐもっているのは枕に顔を押し付けているからだろう。
つくづく枕が羨ましい。
あれをどうにかとっぱらえないかと、今度は舌で、音を立てて責めながら考え、ふと何を考えているんだろうとおかしくなった。
それくらい、ぎゅうっと枕を抱きしめたマリューが可愛くて、その腕を、どうしても自分の背中に回して欲しいと願ってしまう。
「ひあっ!」
びくん、とマリューの背中が跳ね上がり、ムウは一番敏感な部分を口に含んで、舌でこする。とめどなく溢れてくる、温かい物で、しっとりと指を濡らし、ゆっくりと体内に押し入れる。
「ああっ・・・・んーっ!」
競りあがってくるような下腹部からの快楽から、マリューは逃れるように身体を浮かせる。でもそれは、更に求めているようにも見えて、ムウは、ゆっくりと抜き差ししながら中を掻き乱す。
マリューの中は柔らかく潤んで熱い。
それを肯定するように、身体の奥から溢れてくるそれに舌を絡めて、こっそりと彼は笑った。
自分の与えるものに、ここまで素直に反応されると、男として、嬉しくなる。
その反面、いじめたくもなる。
「あっ・・・・・・あ、ああっ・・・・。」
断続的に続く快楽に、だんだんマリューの息が上がってくる。浅い呼吸は肺に十分な酸素を届けず、染まる頬のまま、懇願するようにマリューはムウを見た。
「も・・・・・・やめ・・・・・・・。」
「なんで?」
つ・・・・・ともう一本指を増やすと、首を振るマリューの喉から、切ないなきごえが返ってきた。
「やめて欲しいようには、見えないけど?」
くすくす笑って言われ、マリューは羞恥心と快楽で真っ赤になった。
「だ・・・・・って・・・・。」
あっ・・・・ああんっ・・・。
吐息に混ぜて、マリューは続ける。
「い・・・・・・っちゃいそ・・・・。」
指を入れたまま、ムウは身体を起こしてマリューにかぶさると、つっとその細い喉に舌を這わせた。
「あはっ・・・・・んんっ!」
予想外の刺激に、びくん、と彼女の身体が強張り、
「んあっ・・・・んんーっ」
枕に顔を押し当てて、真っ赤になって声を押し殺した。
「んっ・・・・ふ・・・・・。」
びくびく、と内部が収縮し、そこから指をゆっくり抜いて、ぬれたそれを咥え、ムウはそっとマリューの耳元に囁いた。
「マリューさんってば、可愛い。」
ほうっと力の抜けた彼女が、上気した頬のまま、その潤んだ瞳をムウに投げた。それが腰の辺りがざわつくくらい、挑発的で、艶っぽくて、可愛くて。
「マリュー・・・・・・。」
ん・・・・・・・。」
濡れた彼女の唇を大急ぎで塞いだ。何度も噛み付くようにキスを繰り返し、ぐっと彼女の足に手を掛けた。
すでに、マリューの身体から抵抗する力も抜けている。
「あ・・・・・・。」
あるのは、身体の奥をかき回されて、熱く火が付いた欲求だけ。
「ん・・・・・・。」
「枕は・・・・・・無しな・・・・・。」
ゆっくりと、彼は自身の欲求を彼女の濡れて溢れた部分に押し当てた。
「んあっ・・・・・・ふ・・・・・んーっ」
躊躇うように、でもゆっくりとマリューの身体はそれを受け入れ飲み込んでいく。
「あっ・・・・・はあんっ」
津波のように身体のそこから快楽が押し寄せてきて、マリューは堪らずに、シーツを握り締めた。
「っ・・・・・。」
逃げる彼女の腰を押さえて、締め付け、反発するような、それなのに熱く潤って飲み込もうとする部分に、押し入っていく。
とめどなく溢れてくる透明な液体が、彼女自身が彼を拒んでいないことを証明している。
だから。
ムウも、マリューを求めて深く深く腰を押し進め、やがてゆっくりと動かしていく。
「ん・・・・・あっ・・・・あ、あ、あっ」
快楽に声をあげ、動かされるそれに、体内を擦られる。
「はあっ・・・・・ああっ!」
水音と、身体の当たる音が、ぼおっとする頭に妙にクリアーに響いて、マリューは目を閉じ声を抑えようとした。
「声・・・・我慢しないで。」
「で・・・・も・・・・恥かし・・・・。」
「俺以外、誰も聞いてないよ。」
律動を刻むムウの身体を、目を閉じていても感じる。
「マリュー・・・・。」
囁かれる自分の名前。それは確かに自分の名前なのに、どうしてだろう?
ムウに呼ばれると、妙に身体に響いて、感情を煽る。
「あ・・・・・少、佐・・・・・・・。」
手を伸ばす。
頬に触れたマリューの指は、そこかしこが熱いのに、何故かひやりと冷たくて、ぞっとムウの背中を戦慄が走った。
「あああっ」
激しさを増した行為に、彼女の腕がムウに絡まる。
「あ・・・・・ああっ・・・・んっ・・・・少・・・・佐・・・・少佐ぁっ」
耳元で上がる声は切れ切れで、艶っぽく、それがますますムウの行為に火を付ける。それに煽られてマリューの声もいよいよ切なさを帯びていった。
「名前・・・・・」
「はっ・・・・あ・・・・。」
「ムウ、って・・・・・・。」
容赦なく追い詰められて、頭の芯が蕩けていく。マリューは求められるまま、腰を動かし、しがみつき、うっとりするほどキレイな声で愛しい人の名前を請うように呼んだ。
「ムウっ・・・・・・・ムウ・・・・・んぅー・・・・・。」
「辛かったら・・・・動くの・・・・やめるけど?」
囁かれた言葉に、彼女は頭を振った。
「つ・・・・づけて・・・・」
お願い・・・・・。
「か〜わいいこと言うね。」
お願いされちゃったか。
くすっと笑うが、あまりムウにも余裕が無い。
飛びそうになる意識を必死で手元に手繰り寄せ、強く、弱く、優しく、意地悪に彼女を追い詰めていく。
「あ・・・・・ああっ・・・・あっ!」
しがみ付くマリューの唇を塞ぎ、声を飲み込む。奥から、入り口まで抜き差ししたまま、彼女の柔らかい胸をぎゅっと掴み、口付けると、同時に湧き上がる別の刺激にマリューが喉を逸らした。
「あ・・・・・はっ・・・・・やあっ・・・・・。」
「もっと、って言ったのは・・・・・マリューだろ?」
「で・・・・も・・・・・あっ・・・だめぇえっ!」
「駄目じゃ・・・・ないだろ・・・・。」
ムウの息も上がってきて、でも、彼女を追い詰めるのが楽しくて、追い詰められる彼女が可愛くて、どうしても手加減なんか出来なくなる。
「あ・・・・や・・・・もっと、ゆっくり・・・・・っ」
「無理・・・・・。」
はあん、と喉を逸らし、声をあげる。濡れてみだらな音を立てているのにも、気が付かなくなる。
「あ・・・・・はあん・・・・ああーっ」
つと、涙が頬を濡らし、懇願するような濡れた褐色の瞳がムウを捉えた。
「だ・・・・・だめぇ・・・・も・・・・・いっちゃ・・・・・。」
ぐっと収縮してくるそこと、マリューの泣き声に、ムウの欲求が強く押されて。
「いいよ・・・・マリュー・・・・・・。」
呟かれた言葉に、マリューはぎゅうっとムウにしがみ付いた。
「んっ・・・・・んんんぅ」
「マリュー・・・・・」
「んぁっ・・・・・ああっ・・・・ああああっ」
びくん、と彼女の身体が強張る。
追いかけるように、ムウの意識も高みへと誘われて。
体の中心から競りあがってきた快楽にマリューの意識が付いていけず、彼女は真っ白な空間に放り出されるような、甘い痺れに身を委ねたのだった。
身体の奥に、温かいものを感じて・・・・・・。
「で、感想は?」
枕に勝った、と変な所で優越感を感じていたムウは、腕のなかでくったりとなっているマリューの耳元に、そう囁いた。
「・・・・・・・・・・・・。」
赤くなった頬を押し隠すように、マリューはムウの胸に潜っていく。
「ちょっとちょっと、顔見えないでしょ?」
髪の毛に口付けて、手でマリューの肩を押す。嫌がるように彼女が頭を振った。
「マリュー・・・・・・そんなに下手だった?」
くらくらする。
「バカ!」
くぐもった声がそれに応えて、じゃあ、とムウが笑顔を見せる。
「気持ちよかった?」
「もっとバカ!!」
今度は軽く胸元を叩かれた。
「それは肯定と解釈してよろしいでしょうか?艦長殿。」
耳まで赤くなり、無言のマリューが可愛くて仕方ない。
「距離は?」
「・・・・・・・・・・・・。」
ふと、遠い目をしながら、ムウは毛布に頭まで潜りかねないマリューを抱きしめる。
「縮まった・・・・・・?」
「分かった事があるわ・・・・・。」
そっと顔を上げたマリューが、まだムウの胸元にしがみ付いたまま、ごにょごにょと呟いた。
「何?」
「・・・・・・・貴方はイジワルだってことです。」
上々の答えだ。
「俺も分かったよ。」
「・・・・・・何がです?」
「あんまり君が可愛くて、絶対手放したく無くなった、ってこと。」
「・・・・・・・・・・。」
「愛してる。」
ぽっとマリューの頬が赤く染まり、マリューは逡巡した後、そっと答えた。
「私も・・・・・。」
あれ?
マリューは一瞬の吐息の間に、胸につかえていた破片が、痛まないことに気付いた。
私は確かに、ちゃんと恋の終わりをもてなかった。
だから、ずっとずっとあの人に気兼ねしていた。
抱かれてしまったら、その後悔でいっぱいになると思ったのに。
なのに、胸の中の破片はちっとも痛まない。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「マリュー?」
不意に、気持ちが温かくなって、マリューはムウの腕の中で、気持ちよさそうに身体を伸ばした。
怪訝な顔をするムウに、笑ってみせる。
「愛してる。」
はっきりと、告げる自分が嬉しかった。
後悔するかと、思った。
でも、事実はその逆で。
目一杯の愛を、その全身に受けて、マリューはそれを肯定した。
その瞬間に、多分、唐突に途切れた恋は終わりを告げたのだろう。
この人は、そんな冷たい夜を持っている私を、心から愛してくれた・・・・・・・。
なら私はきっと、この人を愛していける。
失ったものを、満たしてくれる。
「愛してるわ、ムウ。」
「ああ、俺もだよ。」
嬉しそうに微笑む男に、マリューはそっと口付けた。
その行為に、ムウがどきりとしたのは、言うまでも無いだろう。
「勤務・・・・・まだ来ないよな?」
「え?」
いぶかしむ彼女を、再び抱き、上に圧し掛かりながら、彼は笑った。
「もう一回くらい、したいんだけど?」
(2005/03/09)
※再UP 20100517※
あとがき
いや、エロいんだかエロくないんだか、私の基準じゃ判断不能なんですが(爆)とりあえずR18第二弾です。前回「手段」が結構痛めな内容だったので、今回はらぶらぶを目指したんですが・・・・・・(涙)
えっちいシーンまで長かったですよね・・・・・あんなに長くなる予定はなかったのに・・・・(笑)「なんか・・・・別にR指定じゃなくてもいいんじゃない?」ってな内容が前半にくっついてます(わはは)
受けマリューさん・・・・可愛くて好きです(笑)
対して攻めて攻めて攻めて・・・・なムウさんといふタイプが好きです(笑)
そういうキャラな気がしてるんですが?(笑)
平気でエロいこと要求して、言っちゃいそう(笑)で、「生々しいです!」ってマリュさんに怒られるんだよ、あの男は(笑)
今回は、いちさまの素敵なアイコンがきっかけでダッシュで立ち上げてしまいました!(笑)
・・・・・・いちさんのみフリー・・・・にしたら貰ってくれます?これ・・・・・(爆)
いちさん、欲しかったら言ってください。
この話のきっかけは、貴女です(笑)
と、裏第二弾でしたぁ・・・・・・。