寝室

 引っ越してきたばかりの家のリビングに、段ボール箱が積まれている。その中から、いそいそとお皿を取り出し、キラの母とラクスが作ってくれた料理を並べていく。大皿には、ムウが買ってきてくれたケーキを乗せて、テーブルすらないフローリングがその日の食卓となった。
「わっ・・・・・・オープナー見付かんね・・・・。」
 少し離れた場所で、箱と格闘しているムウが必死でワインを開けるオープナーを探していた。
「自分で仕舞ったんでしょう?」
 グラスを出そうとして箱を開けると、そこに無造作に突っ込んである探し物にマリューは思わず吹き出した。
「や・・・・そうなんだけどさ。お姫さんとか子供たちにも手伝ってもらったから・・・・。」
 箱を閉めて戻ってきたムウの手に、マリューはそれをおしつけた。

 白熱灯では雰囲気が出ないから、とオレンジ色のルームライトに切り替えた部屋は、ほっと暖かい色に溢れていた。床は綺麗に磨かれていて、きらきらとあちこちで乱反射している。
 カーテンだけが引かれたリビングには、梱包されたソファーや立てかけられているテーブルやらが見える。
 そんなリビングをぐるっと見渡し、すとん、とマリューは床に座った。
「ほら。」
 どこからか引っ張り出してきたクッションを彼女に渡す。箱にそれを預けて背中を寄りかからせると、すかさずムウが隣に座ってきた。
 持っていたグラスをマリューに差し出す。
「はい。」
「ありがとう。」
「ケーキ、蝋燭たてるか?」
「じゃあ、18本ね。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「なによーっ!」
 ぽかぽかと殴られて、ムウは爆笑しながらマリューを抱き寄せた。
「おやおや、俺の奥さんは10歳近くもサバ読みたくなるようなお年なんだ。」
「セクハラですっ!」
 笑いながら、ムウは、数を無視して均等に蝋燭を刺してあげた。
「気にしてるの?歳。」
 蝋燭に火をつけて行くムウを眺めながら、マリューは彼の分のクッションを抱きかかえて頬を膨らませる。
「するでしょ、普通。」
「そういう態度見てると、子供みたいなんだけどな。」
「三つ子の魂百まで、っていうらしいわよ?」
「どういう意味?」
 苺のたくさん乗った、真っ白なケーキを眺め、揺らめく蝋燭に眼を細めたマリューがにこっと笑う。
「オンナノヒトには歳を聞くものじゃないってこと。」
 ふう〜、と吹き消す彼女を抱きしめて、ムウはくすっと笑った。
「女性は魔性の生き物ってほんと?」
 彼に寄りかかって、マリューはくすぐったそうに笑った。
「誰です?そんな失礼なこと言ったの。」

 キラの母はかなり腕を振るってくれたらしく、色とりどりな料理が、プラスチック製の容器を開けるたびに出てきた。
 特に玉ねぎと牛肉が入ったポトフーは一品であった。
 ただし。
「・・・・・・・・・・・。」
 まるっきり玉ねぎがダメなムウの、今にも泣きそうな顔にマリューが大爆笑したのは言うまでも無いだろう。
「残さないでくださいね?ロアノーク一佐?」
「ひょっとして命令?」
 そんな風に、心行くまで晩御飯を楽しんで、デザートのバナナのシャーベット風味をスプーンですくって食べながら、マリューはほっと溜息を付いた。
「・・・・・・・・・・。」
「暗いこと考えてるだろ。」
 指摘されて、どきっとマリューの心臓が一拍だけ強く鳴った。素直にこっくりと頷くと、手を伸ばしたムウがマリューをしっかりと抱き寄せた。
「ごめん。」
「・・・・・・・・・・。」

 幸せすぎる今に、思い返す二年間。

 それをいわなくても察してくれる優しさが、マリューは少しだけ痛かった。
 辛かったのは二人とも同じなのに。
「私も・・・・・ごめんなさい。」
 謝ると、驚いたようなムウの瞳にぶつかった。
「もっとちゃんと、貴方の事を探せばよかった。」
「・・・・・・・・・・・。」

 もう、戻らない命だとそう思って、マリューは逃げたのかもしれない。もしあの場でどうしようもない事実を見つけてしまったら、自分は壊れてしまうとそう思った。
 だったら。
 だったら見たくなかったというのが正直な感想だ。

 負けたのだ。
 軍人としての自分ではなく、女としてのマリュー・ラミアスに。

「ごめんなさい。」
 手をのばして、マリューはムウの頬にはしる傷跡に指を滑らせる。
「いいよ。」
 自分が泣きそうな顔をしていると、柔らかく微笑むムウの表情に見て取ったマリューは彼の胸元に顔を埋めた。
 とても、温かくて、体中の力が抜けていく。

 生きている音が、響いてくる。

 と、時計が22時を告げるのを聞いて、ムウは柔らかくマリューの髪を梳きながらそっと訊ねた。
「それで・・・・・・マリューさん?」
 求めるような色合いの瞳にぶつかって、マリューはぽっと頬を赤くした。
「ダメ。」
「なんで?」
「お風呂入ってから。」
「・・・・・・・・・・。」
 今日一日、ずっとドックにこもりっきりだったのだ。ムウの腕を逃れて、食器やら何やらを片付け始めるマリューを、ムウは制した。
「いいよ、皿、俺が洗うからさ。」
「え?」
「誕生日、だろ?」
 ちゅっと額に口付けられて、マリューは嬉しそうに微笑んだ。食器を片付け、洗い始めるムウの後姿を、くすぐったそうに見た後、マリューはキッチンから廊下に出て、洗濯場所の隣のバスルームの扉をあけた。浴槽を洗ってお湯を張る。バスタオル、バスタオル、とリビングに戻ると再び箱を開け始めた。
 皿と容器を綺麗に洗って、ムウがキッチンからリビングへ行こうとした時、お風呂を沸かし終えたマリューが、バスタオルとパジャマを持っている姿に遭遇した。
「お風呂、入ってくるわね。」
「お〜。」
 バスルームに消える彼女を見送り、リビングに戻ったムウは腕を組む。
 さて。
「今日は寝室使えないよな。」
 そこもちっとも片付いていない。もっとも、仕事の合間に大急ぎで荷物を搬入しただけなので、どこもかしこも荷物の山が出来ている。大した量ではないが、今日中に荷解きするのは遠慮したかった。
 ムウはぐるっと辺りを見渡し、唯一スペースのあるリビングを今日の寝室にすることに決めると、二階に、敷き布団とかけ布団を取りに上がって行った。



 お風呂から上がり、ドライヤーで髪を乾かしてリビングに戻ったマリューは、ただっぴろいそこに、布団が敷いてあるのをみて、ちょっと目を見開いた。
 周りをダンボールで囲まれたそこは、子供の頃にやったままごとの情景を思わせる。
「・・・・・・・・・。」
 箱に寄りかかって雑誌をめくっていたムウは、佇んで、不思議な空間を眺めているマリューに気付いた。
「どうした?」
「うん?」
 普通ではあまりみない光景だなと思って。
 なんだか楽しくなってくる。
 自分の私物が入っている箱を空けて、中から化粧水を出すマリューに、ムウもちょっと笑うとバスタオルをもって立ち上がった。
 彼女はコットンに化粧水を落としながら、興味深々と言った様子で布団を眺めている。
「俺、風呂入ってくるけど。」
「うん。」
「寝ちゃうなよ?」

 どうも怪しい。

 そう思って釘を刺すと、子供じゃないんだから、とマリューは軽く笑った。

(どうかな〜・・・・・。)
 さっさと上がろう、と心に決めて、ムウはバスルームへと向かう。その間に、マリューは既にいそいそと布団の上に上がっていた。
「・・・・・・・・。」
 固い床に敷かれた布団は、ベッドの国で育ったマリューにしてみれば珍しかった。スプリングもないし、硬いかな、と思うが案外ふかふかで、そこに座っていると気持ちが良くて欠伸が出た。
 大体、今日は朝早かったのだ。
「・・・・・・・・・。」
 きょろっと辺りを見渡し、マリューはくふふ、と笑うと布団をめくってその中にもぐりこんだ。

 眠る気は毛頭無い。毛頭ないが。

「・・・・・・・・。」

 ダンボールに囲まれて、仕切られた狭い空間が心地良かった。見慣れぬ天井を、暗めの、オレンジ色のライトが陰を作りつつ照らすのも気持ち良い。なにより、寝室では味わえない天井の高さが面白かった。
「・・・・・・・・・・。」
 お湯に浸かって、緩んだ体がほかほかしてきて、マリューはう〜ん、と布団の中で伸びをすると、目を閉じた。引越しの為に梱包する前に、とキラの母が布団を干してくれた所為か、日向の香りがする。

 ふわふわで、良い香りがして、狭い空間が気持ちよくて・・・・・・・。



「・・・・・・・・・・・・。」
 タオルを首から提げたまま、パジャマ姿で戻ってきたムウは、布団に包まって幸せそうにくうくう寝ている最愛の恋人に脱力した。
 あんまり寝顔が可愛いので、起こす気にもなれない。
「ったくっ!」
 隣に寝ようかと思ったが、布団を目一杯堪能して眠る彼女にそれも可哀相かなと溜息を付いた。
 結局もう一組持って降りてくると、彼はなくなく彼女の隣に布団を敷いて眠りに付いた。



 ゆっくりと時間は流れて行く。すうすと響いていた寝息がぴたりと止まった。ゆるゆるとマリューが目を開ける。
「ん・・・・・・・。」
 ぼんやりする頭で色々な事を考え、そしてふと彼女は自分が眠ってしまった事に気が付いた。
「あ。」
 がばっと起き上がると、隣に布団を敷いて眠るムウが、暗がりに見える。
「・・・・・・・・・。」
 かあっと彼女の頬が真っ赤になった。
(やだ・・・・・私ったら・・・・・・。)
 いつもなら、起こしてでもむりやり近寄ってくる彼なのに、今日は同じ布団に寝ることも無く、隣で眠っている。
「・・・・・・・・・・・・。」
 起こすのがはばかられるくらい、のびのび寝ていたんだなと、マリューは益々赤くなった。
 時計を見れば、もう直ぐ二時になろうとしている。
「・・・・・・・・・・・・。」
 ちょっと考えた後、マリューはそっと布団の上を這うと、寝ているムウに近寄った。彼は自分に背中を向けて寝ていて、入るスペースがある。
「・・・・・・・・・・・。」
 ちょっと笑うと、マリューはそおっと布団をめくって彼の隣に滑り込んだ。ムウの体温と香りがふわっと自分を包み、彼女は目を閉じるとそっと背中に頬を寄せた。
「ん・・・・・・?」
 と、背中に違和感を感じたのか、ムウがはっと目を開け、首だけで後ろを振り返った。
「って、マリュー?」
「あ、起こしちゃった。」
 ころ、と寝返りをうって、ムウは目を丸くする。
「どうした?」
「ん?・・・・・・あの・・・・・・・。」

 どうした、なんて訊かれるとは思っていなかった。

 俯くと、マリューはぎゅっとムウのパジャマを握り締めた。
「なに、マリュー?恐い夢でも見たのか?」
 ぽんぽん、と背中を叩かれて、マリューは首を振る。
「じゃあ・・・・・・。」
「先に・・・・・・。」
「うん。」
「寝ちゃったから・・・・・その・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
 落ちた沈黙が恥かしくて、真っ赤になるマリューは慌てて布団から出ようとした。
「って、あの・・・ごめんなさいっ!」
 あわあわと元の位置に戻ろうとする彼女を、ムウは後ろからホールドする。
 細い首筋に唇を寄せた。
「眠気。」
「ん。」
「吹っ飛んじゃったんだけど。」
「・・・・・・・・うん。」
「責任取ってくれる?」
 甘く囁かれて、ふるっとマリューは身体を震わせるとこっくりとうなづいた。




 ちゅ、と軽めに唇にキスを落とすと、珍しくマリューからムウの頭を抱え込んできて、彼はちょっと驚いた。
「んぅ・・・・・・。」
 頬に手をあてて、ねだるように口付けてくるマリューを自分の下に組み敷く。口腔に舌を忍ばせて、絡め取ると、彼女が夢中で答えてきた。
「あに?」
 キスの合間にからかうように告げる。
「随分積極的だけど?」
 ちゅう、と音を立てて首筋に唇を寄せると、「ふあっ」と鼻に掛かったような声が漏れた。
「んっ・・・・・。」
 器用にパジャマのボタンを外して、脱がせる。白い胸の先端は既に硬くなっていて、指で軽く擦るとびくん、と彼女の身体が震えた。
「あっ・・・・・・ん・・・・・。」
 音を立てて吸い上げて、舌で先端を転がす。甘くかんだり、手で柔らかくて、弾力のある塊を捏ねていると甘い声が喉から漏れてきて、ムウの背筋を戦慄が走った。
「あっ・・・・・ムウっ・・・・んっ」
 胸元に顔を埋めたまま、手を下に伸ばす。パジャマの下も、下着も脱がせて、身体の深いところに指を滑らせた。
「ひあっ!」
 あ・・・・んっ・・・・んぅ
 漏れる声を飲み込むように口付けて、指先で濡れてくるそこをかき回す。中心に指が当たって、びくり、とマリューの身体が強張った。
「ふあ・・・・あっ・・・あああっ!」
 指で刺激を与えるように弄ぶと、彼女の身体が振るえ、キレイな足がシーツを蹴った。
「ん・・・・・・良い声。」
 つ、と指を濡れた部分に沈めると、彼女の身体が震えるのが分かった。二本、差し込んで中を擦り上げる。
「ふあ・・・・あっあっ・・・あああんっ!」
 枕もとのシーツを握り締める彼女の手が、びくん、と震えた。そのたびに、ムウは中を強く攻めていく。
「気持ち良いの?」
 胸元の硬い部分に唇を寄せて、甘く噛み、中を追い立てながら、敏感な部分も容赦なく攻める。
 同時に三箇所も攻められて、耐えられずマリューがぎゅっと唇を噛み締めた。
「ふ・・・・んっ・・・・んんんっ―――――っ」
 細かく震える身体に、ムウはくすっと笑うと、浅い呼吸を繰り返す彼女を抱き起こして口付けた。濡れた指をくわえる。
「気持ちよかった?」
 こんなに濡らして。
「あっ・・・・・・。」
 ムウと向かい合って座っている状態で、再び濡れた部分に指を押し込められる。
 思わずマリューは彼の肩にしがみ付いた。
「だ、ダメっ」
 逃れようとする彼女をしっかり抱きかかえて、差し込んだ指先で中を溶かしていく。
「あっあっあっあっ」
 ぎゅっと目を閉じて耳元で嬌声を上げるマリューに、ムウは微かに笑った。
「んっ・・・・んう」
 ぎゅっと肩に掴まる手に力が入り、涙眼の彼女がムウをみる。と、彼は彼女の中から指を引き抜いた。
「やあっ!?」
 達するまで後一歩で、身体がそれを求めていただけに、思わず抗議の声がマリューの喉から出た。
「やらしいの。」
「っ・・・・・・・。」
 かあっと赤くなるマリューに口付け、ムウは彼女を抱えて後ろに倒れこんだ。
「ほら。」
「あっ」
 下から胸をつかまれて、マリューの身体が震える。
「欲しいなら自分で。」
 意地悪く言われて、真っ赤になったマリューが、そろっとムウの上に腰を落とした。
 手で支えて、少しずつく挿入ていく。
「あっ・・・はっ・・・・・ああっ」
「もうちょっといけるだろ?」
 ぐ、と差し込まれて、ひあん、とマリューの唇から嬌声が漏れた。
「ほら、気持ちよくして。」
 自分から動き出すマリューにムウは眼を細めると、下からも突き上げる。

 濡れた音が、リビングに広がった。

「足りないよ、マリュー。」
 必死に快楽を追うマリューに、ムウは低く告げると、繋がったまま、彼女を押し倒した。
「あああああん」
 態勢を入れ替わられて、そこから更にうつ伏せにされる。
「あっ・・・・やあんっ!」
 後ろから攻め立てられて、彼女の泣きそうな声が辺りに響いた。
「あっ・・・・あっ・・・・あん」
「先に寝ちゃった罰。」
 加減無く後ろから攻められ、シーツを握り締める手に力がこもる。その手も、ムウに取られて、マリューはただただ快楽の淵を落ちていくしか出来ない。
「マリュー。」
 耳元で呼ばれて、無理な体勢で口付けを迫られる。
 ぼろっと、頬を涙が零れ落ち、それも指でぬぐって、くるっと身体を入れ替える。
 抱きしめられた形で追い詰められて、マリューは思わずムウの背中にしがみ付いた。
「っ・・・・・・。」
 痛いって。
「っああああっ!?」
 お仕置き、とばかりに更に激しく動かされて、マリューの背中がしなった。

 どんどん、どんどん追い詰められていく。

「っ・・・・・いいよ、マリュー。」
 知らず腰を使って、ムウにあわせるマリューに、しかし彼の声は届いていない。
「マリューさんってば。」
「あ・・・・ムウ・・・・・だめっ・・・・こ・・・・・んな・・・・・」
「いいじゃん。」
 いっちゃて。
「あっあっあ・・・・あ・・・あん・・・・・」
「っ・・・・・・。」

 んんんっ・・・・・・・・。

 びくん、と強張る彼女の体に、ムウも煽られて二人で同時に絶頂まで達するのだった。




 はふ、と吐息を吐き出す彼女を抱きしめて、ムウは熱い額に口付ける。
「ん。」
 それに、マリューは手を伸ばしてムウにしがみついた。
 何かを確かめるように、ムウの首筋に頬を寄せる。
「何?」
 柔らかい塊を顎の辺りに感じながら、ムウは手を伸ばしてマリューの髪の毛を優しく梳いた。
「不思議。」
「う〜ん?」
「ここ・・・・・リビングなのに。」
「うん。」
「貴方が隣に居ると、どこでも寝室になるみたい。」
 それに、ムウは思わず吹き出した。
「俺、そんなに所構わず襲ってるイメージあるのか?」
「そうでしょ。」
 間髪居れずにいわれて、閉口する。
「酷いよ、マリューさん。」
 その声音がおかしくて、マリューはくすくすと笑い出した。
「あんまり失礼に笑ってると、もっかいするよ?」
「や〜だ。」
 ちゅっとムウの首筋にキスを落として、それからマリューは暗がりの中でもよく見える、空色の瞳を覗き込んだ。
「貴方がいるとね。」
「うん。」
「すっごく安心するの。」
「・・・・・・・・・・。」
 手を伸ばす。

 その先に触れる、温かい感触がマリューの全てを満たしていく。

「その安心って、寝室とか家とか、そういうのと似てるから。」
「お手軽な寝室だな。」
「貴方がいるとね。」
 ふわあ、と欠伸をして、マリューは気持ち良さそうに体を伸ばした。
「どこでも安心して眠れるの。」

 ゆるゆると眠りの淵を落ちていく恋人を、ムウはそっと抱きしめた。

「マリュー?」
「う・・・・・ん?」
「安心してお休み。」

 自分の腕の中で、本当に幸せそうに彼女が微笑んで眠るから、ムウはぎゅうっと彼女を抱きしめて誓う。


 彼女がこれから先も穏かで心地よい時間が持てるように、自分はいつでも彼女の側に居ようと。


 そしてムウにとっても、彼女は。

「安心して眠れる存在、だよな?」


 温かい彼女を抱きしめて、ムウもまた幸せそうに瞳を閉じた。



 二人の新居の夜は、こうしてふけていった。


































あとがき

 「今日と明日の〜」の続きでございます!引越し当初の、あの、ダンボールに囲まれて眠る感じが書きたくてやっちましました(爆)

 しかも裏!?(どーん)

 でも実はマリュさんのBD話を書く際、一番に書きたかったのは、実はこの「夜中に目が冷めて、ムウの所に行くマリュさん」でした(笑)
 ああん・・・・なのに表ででなかった(汗)

 やっぱりあんまりエロくないのですが(汗)こちらもBD仕様ということで!
 はっ!?やった!今日は割かしはやく上がったよ!!!(笑)



(2005/10/15 掲載)
(2011/07/04 再録)