丹後山(1808.6m)

平成18年7月8日 曇りのち晴れ

 『稜線の草刈りと避難小屋の整備に参加しないか。』と中の岳救助隊長から連絡が入る。昨年は中の岳から今年は丹後山からの稜線草刈り。毎年交互に行なわれている。『中の岳に比べたら丹後山は小山だからの〜』と救助隊らは言う。しかし、私は丹後山の登りより、十字峡のスノーブリッジの状況が非常に気になった・・・。
 6月25日中の岳山頂で会ったハナさんによると、『丹後山の登山は十字峡から登山口までが非常に大変だった』と言う。隊長は『大丈夫!大したこと事ないから。でも、アイゼンとピッケルは持ってきた方が良いかも。』と最後に言った・・・。


 梅雨が明けない7月は蒸し暑い山登りが当たり前。汗かきで太腿の痙攣も体験し、水分不足は大敵と考え5リッター近い水分をザックに入れた!今年初の泊まり装備のザックは重い!二合目までの急登を担ぎきれるのか心配・・・。
 十字峡集合は5時!でも『後からゆっくり来ればいいさぁ〜』と言われ自宅を4時に出る。六日町まで高速に乗りあとは三国川沿いに十字峡へと車を走らせる。

 5:30〜十字峡出発。歩き始めて直ぐに雪渓が出現。これは大した事がない。隊長の言うとおりだ。でも硬くテツルツル滑る。でも川に落ちる事はないので余裕で通過。しかし、この直後のスノーブリッジにはビビッタ!『うえぇ〜大した事あるじゃん!』何処を歩こうか迷いながら雪渓に足をおろして直ぐに滑った!転びはしなかったが一気に恐怖心が湧いた!がぁ〜ん滑ったら一気に川まで落ちてしまう!と思うと恐怖が広がる・・・。出来るだけ山際を歩くが滑る。ダブルストックのキャップを外し気持を引き締めて慎重に歩く。冷や汗タラタラ状態。
 
 もっとも危険な雪渓を無事に通過する。この辺りでは対岸の滝を眺める余裕などない。林道は土砂崩れにより木々や土砂が所々に雪崩れ込んでいた。林道が崩れ道幅が半分以下の所が二ヶ所ほど。この冬の雪害によるのもだろう。
 一時間ほど歩き丹後山の登山口に到着。ここから二合目までがこの山一番の急登!重たいザックでは足の上がりも悪い。日帰り装備の登山者達は足取りも軽くどんどん登って行く。風もなく蒸し暑く汗がダラダラ頬をつたう。


二合目に続く登り

 20分程で一合目の大栃平に着く。ここでは休まず2合目を目指す。下草は鎌で刈ってある。どの辺りで草払いの人達と合流するのだろうか?などと考えながらひたすら急坂を登りつめる。松の木が見え始めると二合目の石柱が見えた。ザックを下ろし休憩。中の岳方面は重い雲が垂れ下がってる。沢筋の雪渓がはっきり見える。でも中の岳の上部は雲の中・・・。
 二合目を過ぎて直ぐに休憩中の草刈り隊と合流!『やっと追いつきました!』と挨拶。『いぁ〜重たそうなザック担いできたね〜』
休憩していた彼らの前には大きな松の木が横たわっていた!これも今年の大雪による被害。人力だけでは撤去出来ないだろう・・・。

登山道を塞ぐ(下山時撮影)

 二合目を過ぎて次の目標となる大きな五葉松の三合目。そして四合目に続く登りはブナ林がとても綺麗で気持が良い!眺めているとブナ林に吸い込まれそうになる。 

五葉松の大木  

ブナの杜

 ブナに囲まれた登山道歩きは快適・・・でもザックは重く汗が出る。時おり中の岳の様子を伺うがガスの中。沢の白い雪渓だけが見える。それでも四合目では日向山の雨量計が見えた。昼近くなればガスも上がり中の岳全容が見えるかもしれない!そしてこの辺りから可憐な花たちも姿を現し始めた。

雪渓
 
マイズルソウ                   ツバメオモト

 五合目にはまだ雪が残っていた。ショウジョウバカマがやっと蕾を膨らませている。昨年はここでタムシバの花を眺めて休んだように思う。ここを過ぎれば山頂までは近い?6〜7〜8〜9合目と距離的にも短く、晴れていれば中の岳を道ずれに歩ける。

中の岳

 六合目付近から眺める中の岳にはガスが掛かっていた。でも稜線に出て涼風を感じる頃には中の岳も綺麗に見えた。鉛色のような空も青空に変わっていた。気持良い風と風光明媚な景色・・・やっとここまで来た!そして7合目では可愛い女性が休んでいた。
 『東京からの方ですか?』と声を掛け挨拶を交わす。彼女は丹後山、中の岳の稜線刈払い行事に毎年参加している。足元をみればなんと救助隊員と同じスパイク付き長靴だ!!!流石キャリアが違う・・・。でも何処かで見た感じの顔だな〜。あっ!華原朋美に似ている!
 ここで腰をおろしコーヒーやパンを食べながらゆっくり休む。でもブヨがかなり寄ってくる。それでもやっぱり『山はいいなぁ〜』と景色を眺めながらうなずく。
 ここから先は山頂までタテヤマリンドウが沢山咲いているはず!逸る心を抑えながらカメラの準備をして歩き出す。

丹後山へ
 
タテヤマリンドウ                  トキソウ

オノエラン
 
イワイチョウ                  タテヤマリンドウ
 鎖場を過ぎて八合目の岩場から道の両脇はフラワーロード!まるい丹後山の笹の群生も一望。花を楽しみながら歩くとなかなか進まない・・・。右に越後沢山や巻機山に連なる稜線も見える。丹後山の方から草刈り機のうぃ〜んうぃ〜んの爆音が聞えてくる。

越後沢山へ

 心地好い風に吹かれ花々を眺めながら分岐の標識の前に出た。右は巻機山、左が丹後山避難小屋、中の岳。直進は水場となってる。左に曲がると笹が刈り払いされてる。花々はちゃんと残してある!すごお〜い。そして草刈り隊の姿を発見。近づいて声を掛けるが、草刈り機の音に消されて聞えない!何度も大きな声で呼ぶが聞えない。それならと・・・右横に出て『ご苦労様です!』 『おぅ〜良く来たねぇ〜。小屋はまだ入れないから、小屋前で休んでなぁ〜』

丹後山の草刈り
 11:05〜避難小屋前のデッキでザックをおろし軽くお昼を食べる。小屋の裏の方には遠く平ヶ岳が見えた!暫くは東京のお嬢さんとお父さんと会話。すると小屋の方に一人の男性が向って来た。うん?見覚えのある姿・・・あっ!昨年も丹後の山頂で会った健脚の勇者だ。それにしても二年連続丹後山で同じ時間帯に会うとは。不思議な感じだ。
 12:00〜中の岳もよく見えるようになり時間もあるので大水上山まで歩く事にした。登山道の笹原は刈払いされ足元が良い。

大水上山〜兎岳〜中の岳へ
 丹後山からの稜線歩きは快適だ!足元はツマトリソウやタテヤマリンドウ、ゴゼンタチバナ、ハクサンフウロなどの花たちが競演。周囲の山なみも見える。草刈り機の音がだんだん大きく聞える。大水上山に近づくと草刈り隊の三人に会う。『おぉ〜久しぶり〜』そうです彼らとは本谷山以来だ。今日は大水上山まで草を刈る予定とか・・・。
 兎岳まで行けるか?と心配しながも進む。大水上山から先は初めて歩く。花は咲いているのか?どうだろう。山の海が広がり稜線歩きは気持ちよい。そしてもうこの時期にトンボが飛んでいた。
 
大水上山から兎岳                           利根川水源と遠く平ヶ岳

 12:30〜大水上山からは平ヶ岳に続く尾根を眺める。これが利根川の水源となる山々。斜面の残雪が棚田のように見えた。兎岳の右横遠くに尖がった荒沢岳の姿を確認。登山道脇には薄いピンクのハクサンシャクナゲが咲き始めていた。ハクサンシャクナゲだと思うけれど・・・。

ハクサンシャクナゲ?
 大水上山から兎岳は直ぐ近くに見えた。しかし、それは違った。がんがん下ってそして兎岳に登り返す。遠くから眺めるとあまり下らないように思えた。やはり実際に歩かないと分からないものだ。でも兎岳への登りはそう辛いものではなかった・・・。だってザックを背負ってないから。
 驚いたのがハクサンシャクナゲの廊下というかカーテン状態というか・・・。とにかく物凄いです!こんなの初めて!
 13:00〜ハクサンシャクナゲを愛でながら兎岳着!山頂標識はあるが字が見えない・・・ここから眺める中の岳がまたいい感じ!さらに兎岳の周りはタテヤマリンドウ、ハクサンコザクラ、ハクサンチドリなどやはり花多し!
 大水上山付近にはオオサクラソウやキヌガサソウ、サンカヨウ、ユキザサ、シラネアオイが群生!このトライアングルコースの稜線は花の楽園と言っても過言でないと思う。オオサクラソウは初めて見るので少々興奮気味。

小兎岳と中の岳
  
ハクサンチドリ            シラネアオイ

キヌガサソウ

オオサクラソウ

兎岳から荒沢岳へ

 草刈り隊は大水上山を少し下った辺りまで草刈りを終えていた。大水上山を過ぎて彼らと一緒に花や山菜を教えてもらいながら歩く。ワタシは花の写真撮りに夢中!ハクサンコザクラは残念ながらピンボケ。そして辺りはすっかりガスに覆われ始め乳白色に変わる。上空では雷らしき音も聞こえた・・・。途中小さなヘビに出会い驚くと、なんとヘビは雪渓の下に逃げていった。
 ゆっくり歩き小屋に戻ると外壁のペンキ塗りが大詰めをむかえていた。これも毎年の作業。ペンキは重いから担ぎ上げるのが大変!小屋の扉を開けると中から良い匂いがする!料理長が豚汁を作っていた。今夜はお言葉に甘えて豚汁をご馳走になる!
 ワタシも持参した品を大皿を借りて並べる。『うわぁ〜大好き!重かったでしょう!一キロはあるね〜』とか言ってもらい。さらに食べて『手作り?』と聞かれるが・・・『違いますよ。スパーの袋の味ですよ!』でも皆さんに喜んでもらい良かった!
 
 うん?この豚汁凄く美味しい・・・味噌は何ですか?と料理長に尋ねる。『白味噌だなぁ〜』と。う〜んでも味が違う何か入ってる。あの〜他に何か隠し味とか入れました?『う〜ん○○を入れたなぁ〜』 あぁ〜やっぱりなんか違うと思った。このまろやかさの秘訣はそれか!今度試してみよう!でも、入れたのは○○山の極上の物だそうで。あまりの美味しさにナント三杯も頂いた・・・大きなお碗で!(マイ食器使わずに)
 ビールも頂き宴会は楽しく進んだ・・・。『おい。長岡のかあちゃん!』と旧隊長が言う。うん?もしかしてワタシのこと?『なんでしょう!』・・・すっかり長岡のかあちゃんになっちまったぜ(笑) 『おめさん、歳・・・いくつらねぇ〜』 『えっ!ワタシですか・・・○○ですよ。』と正直に答える。
 ガスに覆われ星は残念ながら見えず・・・。ガスランタンの火がぼわぁ〜と小屋の窓に映る。昔懐かしいような灯り。こうして丹後山の夜は更けていった。