小説 ウィザードリィ 〜隣り合わせの灰と青春〜

(ベニー松山/JICC出版)


日本のウィザードリィ・マニアなら、知っていて当然、知らない人はモグリというぐらい、WIZファンの中でのカリスマ的存在(やや大袈裟かも・・・)である、ベニー松山氏のおそらくデビュー作。

ウィザードリィ(WIZ)は、コンピューターゲームを多少なりとも知る人なら、一度は耳にしたことがあるでしょう。いまなお新作が作られ続けています(本家は言うに及ばず、日本オリジナルの外伝的なものまで)。

「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」という、いまやRPG(ロールプレイング・ゲーム)界の双璧とも呼べる作品も、原点をたどればこのWIZから派生しているのです(断言!!)。

小説に触れる前に、もととなったWIZというゲームを簡単に説明すると、まず、ゲームを進めるためには冒険者たちで6人のパーティーを組まねばなりません。このためゲームを始めると最初にプレーヤーの分身であるキャラクターの作成を行います(最初から用意されているキャラは、使用しない人がほとんど)。

いくつもある職業から、バランスの良い6人パーティーを組むと、いよいよ冒険に出発です。

・・・今存在するRPGとどう違うのかって?

大違いです!!

まず、迷宮内で全滅すると終わりです。

ドラゴンクエスト&ファイナルファンタジーのように最後にセーブしたところからやり直しなんてことはできません。死んだら死体は迷宮内に放置されています。この為、死体回収の為に別のパーティーを送り込むわけですね。で、運良く死体が残っていればラッキーです。大部分はアイテムを紛失しているか、死体そのものが消えています。・・・消えるんです。文字どうりのLOST(消失)です。別の戦闘に巻き込まれたのか、モンスターに喰われたのかは解りませんが、こうなってしまえば永遠にそのキャラは戻ってきません。
苦労して育てた何十時間が全てパーです。

また、運良く全滅を免れた、あるいは死体を回収できたとしても、生き返らせるにはお金がかかります。

現実だろうとゲームだろうと、地獄の沙汰もなんとやら。

これがドラゴンクエストシリーズなら教会でお金を払って蘇生依頼をすれば、生き返らせることができます。

しかし、このWIZは、お金を払って生き返らせようとしても、100%蘇生するとは限りません。
蘇生に失敗すると、死体は灰になります。この状態なら追加料金を支払ってもう一度蘇生の儀式を行えばまだ生き返るチャンスがあります。でも、灰の状態で蘇生に失敗するとLOST(消失)してしまうんです。

ね!シビアでしょう?

この小説のサブタイトルどうり、隣り合わせの灰と青春なわけです。

ゲーム好きで無くても、あるいはゲームのことを知らなくても、十分に楽しめる内容になっています。

ですが、やはり一度WIZシリーズのいずれかを遊んでみてから読んでみることをオススメします。
主人公たちにより感情移入できるはずですよ。

面白さが倍増しますから。

現在、集英社スーパーファンタジー文庫から文庫本サイズで復刊して売られています。


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