PS2ソフト「仮面ライダー 〜正義の系譜〜」

その5 各章紹介

4章 仮面ライダー1号


※ 以降の文章にはネタバレがありますので、未クリアの方や、見たくない人はお気をつけください。
一部、ハカりんの脚色が入っていますので、原文のままではない箇所もあります。ご了承ください。


起死回生を測るべく、ショッカー首領が下した決断は苛烈であった。組織建て直しの為、不要な構成員を全て粛清し、南米の宗教結社・ゲルダム団との合併によって、新組織ゲルショッカーを結成したのだ。

そのゲルショッカーの出現から1ヶ月後、悪の気配を察知し、ドクガンダーと対決した仮面ライダー1号・本郷猛は、謎の言葉を残し飛び去ったドクガンダーを追い、稼動間もない地熱発電所へとやってきた。

「ヤツが逃げ込んだのはここに間違いない・・・。」

発電所内に潜入した1号ライダーは変身を解き、本郷猛の姿へと戻っていた。

「・・・妙だな。人の気配が無さ過ぎる。」

いぶかしがる本郷だったが、不意に何者かの気配を感じた。

「・・・ん!?」

そこには虚ろな目をしたまま、ふらつくように歩く作業服の男がいた。

「・・・様子がおかしい・・・!?」

警戒する本郷に男は突然襲い掛かってきた。

「ムゥ!?・・・正気ではない!操られているのか!?」

本郷は、相手がただの人間である事を瞬時に見抜いていた。

「変身して戦うわけにはいかない・・・。」

ライダーの超パワーで戦えば、普通の人間ならば即死してしまう。それを危惧した本郷は、人間の姿のままで、男に強烈な当身を食らわせた。

そのショックで、正気を取り戻した男から、本郷は現在この場所で起こっている異変について聞く事が出来た。謎の女が現れ、次々と作業員たちを操ったのだというのだ。

本郷は、迂闊に変身するのを控え、人間体のままで施設内を駆けた。

操られた人々を正気に返らせ、立ちふさがる戦闘員には容赦ない攻撃を加えていく。

やがて本郷は、中央制御室と銘打たれた部屋へとやってきた。だが、どうやら奥の所長室に入るには、特別な解除装置のキーとなる3種類のパンチカードが必要なようだ。

パンチカードを求め施設内を探索する本郷猛。その眼前に立ちふさがるのは、ショッカー怪人・エイキング。

繰り出される攻撃をかわしつつ、本郷猛は変身ポーズを取った。

「ライダー・・・変身!!」

ベルトの風車が唸りをあげる。緑の仮面に真紅のマフラー。銀のグローブとブーツが光を反射して輝く。

その威風堂々たる勇姿に、敵意をむき出し唸りを上げるエイキング。

だが、かつて、2号ライダー・一文字隼人を苦しめたこの稲妻怪人も、幾多の戦いを潜り抜けてきた仮面ライダー1号の敵ではなかった。

「走れ!イナズマ!」

強力な電撃が放たれる。・・・だが、その電撃はライダーに命中することなく虚しく空を切り裂くのみ。

「ライダー・・・稲妻・・・キーーーック!!」

稲妻勝負は、ライダーの勝利に終った。爆発四散する怪人。パンチカードを握り締めたライダーは、変身を解くと再び発電所内を走った。

そして、巨大なタービン室へと足を踏み入れた本郷は、何者かの気配を感じて身を隠した。

そして、注意深く身を乗り出すと、眼下の通路を覗き込んだ。

そこには、ふらつく作業員たちを誘導する、不気味な雰囲気の女性らしき姿があった。幸い、本郷に気づくことなく、タービン室奥のドアの中へと消えて行った。

本郷もすぐその後を追いかけたが、扉の向う、灼熱の溶岩が渦巻く坑井には既に一団の姿は無かった。

慌てて最下段に下りたものの、施錠されたドアに阻まれ、それ以上先に進めない為に、本郷は一度タービン室へと戻る事にした。

「!!」

扉を開けた瞬間に作業服の男が飛び掛ってくる!

本郷が素早く当身を食らわせると、正気を取り戻した男は、最後のパンチカードを本郷に手渡した。

中央制御室に戻った本郷猛は、3つのパンチカードを使い、所長室の扉を開いた。

様々な資料や書類から、ここが何かの研究施設であることを突き止めた本郷は、所長室のコンピューターを操作して、中央制御室内に隠されていたエレベーターを出現させる事に成功した。

その先は、見慣れたショッカーのアジトのような通路へと繋がっていた。

「・・・やはりショッカー・・・いや、ゲルショッカーなのか?」

通路を進む本郷は、何かのボンベが立ち並ぶ場所へと足を踏み入れていた。襲い掛かってくる戦闘員を倒すと、その懐から1枚のカードが零れ落ちた。

「・・・!・・・これは!!」

それは、見まごうはずの無い、忌まわしきショッカーのエンブレムが刻印されたカードだった。

「それでは・・・このボンベの中身は・・・。」

その途端、唐突に本郷の足元が開き、彼はその中へと吸い込まれてしまった。

落下した先は、数多くのダクトが並ぶ狭い空間だった。

・・・と、突如、女の笑い声が響き渡る。

「邪魔者、仮面ライダー。お前はそこで死になさい。」

その声と同時にダクトからガスが噴出される。

本郷は咄嗟に目にした扉が閉まりきる前に、素早く跳躍し脱出に成功した。

「・・・あの声・・・まさかな・・・。」

本郷は、急ぎアジトの内部を駆け抜けた。襲い来る戦闘員を蹴散らしながら進む本郷は、巨大な謎の装置が設置された部屋を発見した。

「・・・何だ?この部屋は??」

本郷は、何とも言われぬ不安を感じながらもその部屋を後にした。

そして、彼は作戦司令室の扉の前へと立った。

注意深く中に入る本郷。部屋の奥。一段高くなった場所では、先ほどの女性が本郷に背を向けたままで何かの装置を動かしている。

タービン室では、あまりよく見ることが出来なかった。だが、今はその背中、そして先ほどの声により本郷の脳裏にある怪人の姿が結像しつつあった。

本郷は声を張り上げた。

「作業員を操っているのはお前だな!」

「ホホホホホ・・・」

女性は振り返る。その奇怪な姿は、本郷が思いだした怪人そのものだった。

「蜂女!ここで何を企んでいる!」

「ホホホ・・・」

蜂女は手にした細身の剣を弄びながら本郷猛を見下ろした。

「間もなくやって来る理想の世界。その住人となる我々、怪人軍団の前にはお前など石ころ同然。」

蜂女は剣の切っ先を本郷に向ける。

「怪人軍団!?」

聞き返す本郷に不気味な笑みを向けると蜂女は再び言葉を紡ぎ出した。

「それに、この計画はお前の手の届かない未来でも進められているのよ。」

「何だと!」

「あきらめて死になさい。ホホホホホ・・・」

蜂女は高笑いをしながら本郷に背を向けた。

「私はね、地獄でも決して忘れなかった。」

嘲る様だった蜂女の声に、徐々に憎悪の色が混じっていく。

「お前に倒された・・・この悔しさをね!!」

その言葉と同時に振り返った蜂女は、剣先から巨大な針を放った。

その攻撃をかわした本郷に向かって、蜂女が高台から飛び掛ってきた。

縦横に空を駆け、鋭い切っ先で斬りかかる蜂女。その攻撃をかわしながら間合いを取った本郷が、裂帛の気合と共に変身ポーズを取る。

「ライダー・・・変身!!」

仮面ライダー1号へと変身を遂げた本郷は、やすやすと蜂女の攻撃をかわす。

『・・・再生されたが、強さは変わっていないのか??』

徐々に、蜂女の表情に焦りの色が見て取れるようになった。

「死ね・・・仮面ライダー!!」

幾多の戦闘でパワーアップを果たした1号にとって、蜂女の攻撃は哀れに思えるほどだった。

『・・・せめて、一撃で終らせてやる。』

ライダーの姿が掻き消える。驚いて振り返る蜂女の頭上から、ライダーの蹴りが迫る。

「ヒッ!?」

「電光ーーー!!ライダーーーーーキーーーック!!!」

ライダー渾身の必殺技をその身に浴びた蜂女は、空中に溶け込むよう四散していった。


蜂女が操作していた装置の前に立った1号ライダー。その耳に、装置からノイズ交じりの声が飛び込んできた。

「・・・こち・・・20・・・年・・・聞こえ・・・か」

1号ライダーは、その声が意味するものを即座に理解した。

「これは・・・未来からの通信!?」

ライダーは、装置の操作パネルを一瞥すると、調整を開始した。

やがて、ノイズ交じりだった音声がクリアになる。

「こちら2004年、誰か聞こえますか?」

1号は通信機のスイッチを入れた。

「こちらは1972年。聞こえるぞ!」


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