機動戦士ガンダム 0080 〜ポケットの中の戦争〜

(結城恭介/角川書店)


同名のOVA作品のノベライズ。

主人公の少年アルフレッド・イズルハ(アル)と、学徒動員されたジオン軍の新米パイロットであるバーナード・ワイズマン(バーニィ)との交流を描いた作品。

何が正義で、何が悪なのか?単純に二元論では括れないのがガンダムという作品ですが、この作品では特にその点について考えさせられます。

ガンダムという名を持つものの、当のガンダムは序盤ではパーツの一部分が、申し訳程度に登場するに過ぎません。
完全体として、登場するのは最終話手前です。

それまで、主人公の敵サイドとして描かれていたジオン軍側の人々を主眼において描かれているのも当時としては新鮮でした。

オリジナルであるOVA版は、最後は悲劇という形で幕を閉じます。
私も、衝撃のラストには、主人公のアル同様涙を流しました。

ですが、この小説版でも違った意味で涙を流しました。

「バーニィが生きている!!」

それは、OVA版の結末とは180度違う結末でした。

あとがきで、筆者は言っています。

「OVAで、この結末ならば、一流の悲劇が三流のハッピーエンドになってしまっただろう。」

しかし、結城氏はあえて小説版はハッピーエンドに変えました。

OVAで、やるせない思いを抱いた人にとって救いとなるように。

私は、ハッピーエンドな作品が好きです。現実世界ではやるせないことを我慢しつつ生活していく場面も多いのだから、せめて架空の世界だけでも幸せな結末が見てみたいのです。

そういう意味でも、この小説版・ポケットの中の戦争は大好きな作品の一つなのです。


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