終章


解放軍

 

十字の騎士 イーヴ

 帰還したアレス王子の下、アグストリア解放軍の七将軍筆頭と、新生ノディオン王国の大将軍を兼ねる。内政・軍事両面で活躍し、若き王子を助けた。

 

十字の騎士 エヴァ

 ノディオン解放の後も、アグストリア解放軍の先陣を努めた。戦闘においては常に勝利を収め、民衆からは常勝将軍との異名で呼ばれることとなる。

 

十字の騎士 アルヴァ

 他の兄弟とともに、ノディオン王国の中核をなす将軍となる。その温厚な人柄は、荒くれ者ぞろいの傭兵たちからも慕われ、解放軍における重要な役割を果たす。

 

風の賢者 ホーク

 ノイッシュが去った後のアグストリア解放軍において、軍師としての役割を一手に引き受けることとなる。その的確な作戦は、多くの戦において解放軍を勝利に導いた。

 

神速の竜騎士 ルファス

 マッキリー峡谷の戦い終了後、ドラゴンマスターへと昇格する。アリオーン王子存命の報は、彼を勇気づけた。本国からの帰還要請に対しては、今しばしこの地に留まる旨を伝え、七将軍の職務を全うすることとなる。

 

竜馬の将軍 アーダン

 グランベル、及びシアルフィ解放後もアグストリアに留まり、重装騎士たちの指揮をとった。巨場に跨り、戦場を駆け抜ける彼の姿は、味方の士気を高め、敵に恐怖を与えたという。

 

鉄壁の勇士 ルクソール

 アーダンの元、解放軍に留まり、かつて魔将が乗っていた竜馬を乗りこなし、二人目の竜馬騎士となる。上官であるアーダンを補佐し、困難といわれた作戦の数々を成功させていった。

 

熱血一直線 ゼヴァン

 特務部隊解散後、父親であるエヴァ将軍の部隊に配属となる。パラディンに昇格してからも、その性格は落着くことはなく、より一層熱血に磨きがかかったという。

 

辺境の聖女 ヴァナ

 兄・ルファスとともにアグストリア解放軍に残る。アグストリア解放を見届けたいと、本人が希望したとのことだが、解放軍の騎士と恋仲ともっぱらのうわさで、こちらが本当のところではと囁かれている。

 

微風の天馬騎士 フェミナ

 特務部隊から、ホーク将軍の部隊へと転属になる。その機動力を活かした情報収集・諜報の分野で兄のサポートに徹した。

 


帝国軍

 

紫電の妖狐 タラニス

 生き残りの帝国軍部隊を取りまとめ、フィンスタニス・メンシェンと結託して、反グランベル同盟軍を結成する。アグスティ、マディノ、マッキリー、シルベールらの城を所有し、なにやら、陰謀を画策しているようだ。

 

邪悪なる老神官 ドンヌ

 マンフロイ大司教死後、混乱状態にあったロプト教団の掌握に乗り出し、再組織化に尽力する。その結果、多くのロプト信者が彼の元に集結、フィンスタニス・メンシェンの首領として、また、ロプト教団の大司教として、その権力を確かなものにした。

 

四天王・闇の魔法騎士 ゲイズ

 フィンスタニス・メンシェンの筆頭魔道士にして、剣術の使い手である彼は、事実上組織のナンバー2としての地位を確固たる物としていった。

ドンヌの忠実なる部下として、解放軍の前に幾度も立ちふさがることとなるだろう。

 

四天王・凶戦士 ガヌロン

 いまだ、その実態を見せない闇の戦士。ガヌロンという名も、教団内での通称に過ぎず、その実名は常に闇の中である。噂によるとガヌロンと呼ばれる人物は複数存在するとか。

 

魔宮の妖女 アン

 教団内でも、最も魔道の薬学に精通している、美貌の魔女。不思議なことに、解放軍による、ノディオン城奪還作戦以後、彼女の姿を見たものはいない。

 

鮮血の指揮者 ルドラ

 トリスタンとの死闘で、重症を負った彼だが、その遺体は発見されず、まるで煙のごとくその姿を消した。・・・後に遥か東方の砂漠で、彼の姿を見たという噂が流れたが、その真偽の程はさだかではない。

 

底の浅い小悪党 イド

 ノディオン城攻防戦で、いつの間にかその姿を消す。配下の者共々野党に身を落としたと言われる。

 

ドズルの猛将 テウタテス

 最後まで、武人として戦いを求め、そして、戦いに散っていった。その遺体は、イーヴらの手によって、故郷であるドズル公国へと帰っていった。ドズル本国にてヨハン公子の下で丁重に弔われたという。

 

繊細なるマスターナイト パトリック

 その行方は杳として知れない。ユングヴィの地では彼の夫人が、その胸に抱いた乳飲み子とともに優しき夫の帰りを待ち続けている。

 

ユングヴィの弓騎士 メッツェ

 同僚とともに、上官の行方を捜して、アグストリアの地を駆け続けている。

 

ユングヴィの騎士 ロモス

 同僚とともに、上官の行方を捜して、アグストリアの地を駆け続けている。

 

稲妻の貴公子 ラインハルト

 帝国崩壊直後のフリージ公国を立て直す為に奔走する。後に、捕虜から解放されたイシュタル王女(後に公女)を補佐し、その能力を十二分に発揮することとなる。

またヴェルダンから、イシュトー王子が存命であるとの報を受けると、内密でかの地を訪れ無事再会を果たす。その時に正式にフリージの未来を託される。

 

アルスターの王子 アミッド

 妹と共にフリージ公国に帰還する。その後、ラインハルト卿、イシュタル王女、そして、リーフ王子の計らいによって、アルスター王国に帰国する。離れ離れになっていたミランダ王女とも無事に再会を果たす。その後、王太子として正式に承認され、民衆からも祝福された。

 

アルスターの王女 リンダ

 アミッドと共にアルスターに帰国する。その後、親善大使として再建された王都バーハラへと赴く。主に内政・外交・戦略等の勉強のために、サイアス卿に師事し、その才能を開花させることとなる。

 

雷撃の将軍 ガレスフ

 「タラニス卿を倒すまではフリージには戻らぬ」との誓いを立て、アグストリア解放軍の一員として戦うこととなる。

ベオウルフの部隊の副将の一人として、活躍を重ねた。

 

紅蓮の貴公子 ベレノス

 いまだ、その消息はわからない。

 

薄紅の公女 アルティオ

 ヴェルトマー公国に一度帰還した後、取って返してノディオン入りし、アグストリア解放軍の一員として戦いながら、行方不明の兄を探している。

 

老練なる忠臣 ルゴス

 主家の姫君であるアルティオと共に、解放軍の一員としてその剣を振るう。ガレスフと並んで、ベオウルフの部隊で副将を務める。

 


シレジア解放同盟

 

雪の三天馬騎士 レイヤ

 ノディオン城北の野戦にて、その指揮部隊共々姿を消す。以降、本国に戻った様子もなく、その存在は完全に闇の中へと消えてしまった。

 

雪の三天馬騎士エイル

 他の姉妹と共に、行方不明となる。彼女だけは、その数ヵ月後に目撃談があり、ヴェルダン国境近くの森上空でその姿を見たといわれている。

 

雪の三天馬騎士 フノス

 傷ついた彼女の天馬が、夜戦の翌日、マッキリー峡谷南西の平原を低空飛行していたとの報告を最後に、その消息は完全に絶たれてしまう。目撃者の証言では天馬には二人の人影が見て取れたという。

 

シレジアの王族 ブリンディ

 マッキリー峡谷の戦いとほぼ同時期に、何者かによって暗殺される。仲間の裏切りにあったとも、ロプト信者の手によって殺されたとも言われるが、その真偽のほどは定かではない。

 

不気味な賢者 ヴェゴ

 ノディオン城北の夜戦において左腕を失うも生き延びる。その後、シレジアに戻るが、ブリンディ公暗殺の混乱の最中にその姿を消した。

 


ヴェルダン解放軍

 

森林の王者 ジャムカ

 自国以外の国々がある程度安定してきたことを見計らうと、自国領内の帝国軍残党、及びロプト教団の掃討にかかる。

間もなく、正式に戴冠式を済ませて、ヴェルダンの王となる予定。

 

義に厚い斧戦士 ヨハルヴァ

 ジャムカ王子の下でウォリアーとしての修行を積む。その後、無事昇格を果たす。

ドズル公国に帰る気はなく、このままヴェルダンに骨をうずめる覚悟のようだ。

 

深緑の聖騎士 アレク

 シアルフィ公国には戻らずに、ジャムカ王子の下でその剣を振るう。

いわく、「まだ、俺にはやり残したことがあるんでね。」

彼が故郷の地に帰るのは、まだ大分未来の話である。

 

雷光の騎士 イシュトー

 いまや、ジャムカ王子の腹心の友とも呼ばれるほどになった彼は、対闇司祭の戦いにおいて数々の武勲を立てる。

後にラインハルトとも再会した彼は、フリージのことを妹・イシュタルとラインハルトの二人に託し、継承権を放棄した。あくまで、自分が死んだことにしたほうがよいと判断したのだろうか?・・・それは、本人が黙して語らぬ以上、余人の知るところではない。

 

雷鳴の女性騎士 ライザ

 イシュトー王子にどこまでも付き従い、戦場においても常にその傍らから離れなかったと言う。フリージ公国の継承権を放棄したイシュトー王子と共に、ヴェルダンの地に留まって、帝国軍残党や、ロプト教団と戦いを繰り広げた。

 


グランベル王国

 

炎の天才軍師 サイアス

 ヴェルトマー公国の、若き当主となったアーサーを助け、公国の復興に尽力する。

その後、グランベル王国の連合軍軍師の職につく。国王セリスの命の下、多くの弟子と共にアグストリアへと派遣される。無論、侵略目的ではなく、いまだ戦火のくすぶるアグストリアで戦い続ける、アレス王子の支援の為である。

 

炎の紋章を受け継ぎしもの アーサー

 空位にあった、ヴェルトマー公国の当主となる。公妃に迎えた、シレジア王国のフィー王女や、助言者となったサイアスらと協力して、公国の再建に奔走することとなる。

後に、フィー王女との間に一男一女をもうける。

 

風に祝福されし天馬騎士 フィー

 父・レヴィン、兄・セティの祝福のもと、ヴェルトマー公・アーサーの下に嫁ぐ。

どこかのんびりしたアーサーを、叱咤激励し、公国の再建に貢献した。その明るく、しっかりとした性格は、公国の民からも愛された。

 

 

 

そして・・・。

 


「・・・殿下、間もなくお時間です。どうかバルコニーの方へ。」

「解った。」

 

侍従のものにそう答えると、漆黒の鎧を身につけた青年は、飾りなど一切無い実用的なマントを翻し歩き始めた。その腰には、聖戦士のひとり、黒騎士ヘズルが愛用した「魔剣・ミストルティン」が収められている。

 

彼はこれから、中庭に集った戦士たちに対して、出発の号令を行うのだ。

猛将テウタテスが敗れたとはいえ、アグストリア国内にはまだまだ多くの敵勢力がひしめいている。

これらを一掃せぬ限り、真の平和は訪れないのだ。

 

 

黒き若獅子 アレス

 ノディオンに帰還した彼は、戴冠は全てが終わった後に行うとの誓いを立てた。アグストリア解放軍の中においては、イーヴ卿に代わって盟主の座についた。彼の直属部隊は、クロスナイツの中でも選りすぐりの精鋭からなり、皆一様に黒字に銀の装飾の入った鎧を身に着けることとなった。

後に言う「アグストリアの黒騎士団」は、この戦において初めて結成されたのだ。

 

 

鉄靴の音を響かせながら、城内を進むアレスの前にドレスを纏った、美しい女性が姿を現した。アレスは、かすかに微笑むと、女性に手を差し出した。

女性も微笑みを返しながらその手をとった。

二人は並んで廊下を進み始める。

 

 

美しき王太子妃 リーン

 身分違いであることに、密かに悩み続けたリーンであったが、その出自がブラギの直系たるクロード神父の娘であることが判明してからは、誰もが彼女を受け入れた。

もっとも、誰がなんと言おうとアレスは彼女を妃とするつもりだったようだが・・・。

アレスが出陣の折には、彼女も剣を携えて常にその傍にあったという。

 

 

彼らの前方にバルコニーが見えてきた。居並ぶ騎士たちの歓声が押し寄せてくる。

二人は顔を見合わせて頷くと、バルコニーへと踏み出した。

 

 

 


「そろそろ、国境を越えるな。・・・懐かしのグランベルの地・・・という訳だな。」

紅の鎧を着た騎士は、愛馬を高台に立たせると、その背から周囲を見渡してそう呟いた。

 

「・・・さあ、行くか。・・・・ん?」

彼は、今まで進んできた方向を振り返った。微かに砂埃が見える。それに伴って馬蹄の響きが大きくなってくる。

「・・・。」

騎士は、警戒して腰の剣に手をやった。

 

しかし、すぐにその手を離すと、大きく目を見開いた。

 

徐々にはっきりと見えてきたその騎影は、彼が良く知る人々だったのだ。

「・・・何故ここに!?」

呆然としている彼の元に三人の男女が集まってきた。

 

その中の一人、壮年の騎士が、紅の騎士を小突いた。

「馬鹿野郎が、挨拶無しとは礼儀知らずにもほどがあらあな。」

男はそういってにやりと笑った。

 

 

さすらいの勇者 ベオウルフ

 隠者生活を止め、ノイッシュが抜けた穴を埋めるべく、七将軍の一人となる。

彼の部隊には、かつての帝国軍将兵も参加し、「グランベルの平和」を目指してロプト教団の残党部隊と激戦を繰り広げた。

 

 

「・・・ベオウルフ・・・・。」

「水臭いじゃねえか。・・・一言ぐらい言ってから行くもんだぜ?」

「すまない・・・。」

 

壮年の騎士は笑いながら頷いた。

「ま、後のことは心配するな。お前が帰ってくるまでなら、俺が何とかしてやる。・・・ただし俺は気まぐれだからな。飽きないうちに戻ってこんと、どうなっても知らんぞ?」

「・・・わかっているさ。」

紅の鎧の騎士も微笑んだ。そして、残る二人へと目を転じる。

「トリスタン、それにアーリアも・・・。」

若き騎士は師であった騎士の前に進み出た。

「・・・私もお供させてください。既にアレス王子とイーヴ将軍からの御許可もいただいております。」

紅の騎士は苦笑した。

「解った解った。・・・いまさら帰れともいえんだろう。・・・ただし、どんな危険があるかもわからんぞ?」

若き騎士は頷いた。

「もとより承知の上です。・・・お供させていただきます。」

そう言って若き騎士は爽やかな笑みを浮かべた。

 

ベオウルフは、その様子を見て満足そうに頷くと、傍にいた娘の背を叩いた。

「痛ッ!!」

顔をしかめる娘に笑いかけながらベオウルフは騎士に話しかけた。

「すまんが、こいつも連れて行ってやってくれ。・・・俺よりもお前や坊主と一緒の方が剣が上達するだろう。」

「いいのか?」

「ああ。お前さんにとっちゃ、お荷物になるかもしれんが、・・・まあ、死なない程度に鍛えてやってくれ。」

「親父!!」

ぷっとふくれる娘の頭にごつい手を置きながら、ベオウルフは豪快に笑った。騎士は、微笑みながらその様子を眺めた。

 

ベオウルフは、笑いを収めると、真顔になって騎士を見た。

「・・・じゃあ、もう行け。・・・そして、必ず帰って来い。・・・あの人も連れてな。」

騎士は、頷いて片手を差し出した。ベオウルフはその手をがっちりと掴んだ。

いろいろな思いが詰まった握手だった。二人の騎士は頷きあうとその手を離した。

 

 

三騎の騎影が、東へと駆けていく。大柄な騎士が一人、それを見送っている。

小高い丘の上から、その様子を伺っていた美貌の女剣士は、無言のまま馬首をめぐらすと、少し離れて三騎の騎影を追いかけ始めた。

 

 

美しき女剣士 アンナフィル

 傷が癒えると同時に、ノディオン城より姿を消し東へと向かう。後に、先を進んでいた三騎と合流し、そのまま旅に同行することとなる。

 

 

蒼き新星 トリスタン

 師と慕う騎士と共にユグドラル大陸の北東を目指して旅を続ける。以前の物よりも、より堅固となった蒼い鎧には、聖騎士の証たる勲章が輝いていた。

師と並んで馬を走らせる彼の顔には強い意志と自信が溢れていたという。

 

未完の剣士 アーリア

 父・ベオウルフの勧めで、北東を目指す旅に同行することになる。その胸の内に、様々な思いを渦巻かせながら、少女は今よりも遥かに成長していくことになる。

そして、己の出自と宿命がこの道中で明らかになることを、彼女はまだ知らない・・・。

 

 

すぐ傍で、馬を走らせる若き戦士二人に、騎士は、穏やかな笑みを浮かべた。

しかし、その顔はすぐに引き締まる。彼にとってこの旅は、決して物見遊山というわけではないのだから。

 

彼はまっすぐに前方を見据えると少し愛馬の速度を上げた。

 

 

紅の聖騎士 ノイッシュ

 ノディオン城を解放するという誓いを果たした彼は、ようやく一個人としての戦いへと乗り出すこととなる。

目指すは、大陸中東部の砂漠地帯。

そこで彼を待っているであろう、ある人物を助け出す為に・・・。

 

 

 

物語に終焉は無い。

ひとつの終わりは、また新たなる物語の始まりに過ぎないのだから・・・。

第1部 完


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