3月号Forumにて,拙文に対して2名もの方から感想,反論を寄せていただきました.このような場での論争は,インターネット上の論争のようにリアルタイムではないものの,お互いに冷静に論議がなされるという点で評価されるべきことだと思います.
まず,KHR氏の指摘についてですが,第1にこのような純粋に語法に関する論争で匿名というのは理解ができません.お互いに対等の立場で意見を戦わすのであれば,所属と実名ぐらいは公表なされた方がよろしいかと思います.第2に拙文のNewbury Houseの例文を引用していただきましたが,一番大切な部分を間違って引用しています.He reserved a room … at a hotelとありますが,in the hotelです.第3に私の論点はどちらの解釈が応用範囲が広いかという点です.reserve a seat for her on the train to Hakata(スーパーアンカー)といった用例を理解したり,「ホテルの部屋を予約する」→reserve rooms at a hotel(ジーニアス和英)といった発想に結びつけるためには形容詞句と解釈した方が一貫性があるのではないかという考えです.しかし,KHR氏も書いておられるように,「in the hotelは副詞句で良いのだ」と「言い張る」のならばそれでよいと思います.
私の拙文はForum規定の字数をはるかにオーバーしていました.このような私の執拗さに浅野先生が「この人は一体どういう英語観で日ごろ授業をしているのだろうか」という素朴な疑問,疑念をもたれたのも当然のことと思います.実は,この問題はもっと簡単だったはずです.9月の模試が実施された翌日にこの問題に気がつき,軽い気持ちで,模試の実施母体に,「atだけを正解と認めているようですが,和英辞典や入試に登場した英文ではinもありますので,準正答にしたらどうですか」と連絡したのです.ところが,私の指摘について,「そうだ」とは答えてくれずに,「inを正答とした場合ホテルの中で部屋を予約するという極めて不自然な英語となる」という「杓子定規」な回答をしてきました.そこで,私の語法の旅が始まったのです.その過程はちょっとした謎解きのようなスリルもあり,これまでの英和辞典の記述に一石を投じる意味があると思いForumに投稿しました.
模試を作成したプロジェクトに「atは全ての英和辞典に載っているから,正解でいいけど,inを不正解にする理由はないのではないか」と説得するのに,あのような膨大な調査が必要だったのです.日本の英語教育,とりわけ高校でのそれは大学入試に大きく影響を受けていることはまぎれもない事実です.しかし,もう一つの怪物が存在しています.それが業者が主催する「ガイブモシ」です.高校1,2年生では,1回に40万人以上が参加する(その多くが学校単位で受験する)マンモス模試があります.大学入試がゴールだとすれば,その中継地点の要所要所に「ガイブモシ」というもう一つの指標が隠然と存在しているのです.生徒,そして担当者もその点数,偏差値に一喜一憂し,場合によっては進路をも決定しています.その模試の問題そのものについてきちんと議論されることはありません.この問題については改めて論じさせてもらいますが,そうした問題にも批判の目を向け,少なくとも「範例文」となった,「『完全主義』『同化願望』などの非合理性を助長するような」問題については,改善を求めるべきではないでしょうか.私の重箱の隅をつつくような執拗な追求は,元来「inでもatでもいいでしょう?」というおおざっぱな態度から出たものであり,「どうしてそんな瑣末なことを試そうとするのか」という追求を具体的な行動としてあらわしたものだと思っています.
ただし,模試は実施後詳しい解説と解答を発表し,出題意図を明確にしています.未だ解答を発表しない大学入試とは一線を画しています.私は模試の存在意義を否定するものではありませんが,結果である点数だけに右往左往するような教師ではありたくないのです.したがって,本当にあるべき力を模試が検定しているのかにも関心がありますし,生徒の学習の一指標である以上,その指標は将来に役立つような有益な学習目標たることも望んでいるのです.