You have to reserve rooms (    ) the hotle two weeks in advance.

9月に河合塾主催の第2回全統記述模試という全国規模(参加者20万名前後)の模試が実施された.

表記問題はその語法問題のひとつ.選択枝はat, of, inなど.選択枝を重複して選んでもよい.私は最初戸惑い,go fishing in the river(川で釣りをする)の類推でreserve rooms at the hotel(ホテルで予約する)を選んでみたが,念のため手元の辞書をいくつか引いてみた.大方の学習辞典はreserve a room at the hotelとなっていたが,ニューセンチュリー和英(三省堂)では,「Aホテルに予約している/I've reserved [made a reservation for, booked] a room at [in] A Hotel.」という記述があり,どうもinでも良いかもしれないと思えてきた.そこで,私家版入試データを検索したところ96年の芝浦工大の入試英文で,” Some people always reserve a room in a hotel, but others think: 'Oh, I shall be able to find a hotel room somewhere.”という英文もあった.atが模範解答であることに異存はないが,inを不正解にする理由はないと判断した.記述模試実施直後だったので,まだ,採点に間に合うだろうと思い,和英辞典の記述,入試に登場した英文を添えて,判断を仰ぐ電子メールを送付した.

1ヶ月半ほどたって届けられた回答文では,「inを入れた場合,『ホテルの中でホテルを予約する』というきわめて不自然な状況となり,ここでは不適切である」というものであった.実際に辞書にも定義があるし,河合塾はネィティブのチェックを受けたと言っているが,隣りのALTは「どちらも言う」という答えだったので,河合塾に再度問い合わせるために,この表現について調べてみた.

私はreserve a room at the hotelを決まった表現だと思っておらず,河合塾の回答の通り「ホテルで予約する」,すなわちat the hotelreserveを修飾する副詞句だと判断した.このような解釈は英和辞典にも見られる.

 

_〜 a suite at a hotel ホテルにひと続きの部屋を予約する. (グローバル英和辞典)
 

この辞書は明らかに副詞句として解釈している.

 

rooms at a hotel ホテルの部屋を予約する(ジーニアス英和辞典)

 

これは形容詞句のようにも判断できる.

 

そこで,さらに研究室にあるありとあらゆる英和・和英辞典で,book, hotel, room, reserve,「ホテル」,「部屋」,「予約」の項目を引いてみると,日本の辞書を引いていく限り.「センチュリー和英」を除いて,reserve a room at a hotel(冠詞の使い方には差がある)の表現しか出会わないことが判明した.”reserve a room at a hotel”はいわば「範例文」なのだ.もっとも,CD−ROMのブックシェルフ(小学館 プログレシブ英和・和英)を持っていれば,

 

1) ホテルで一番いい部屋を申し込んだ  I reserved the best room in the hotel.

2) ホテルの部屋を買い切る  reserve all the rooms in a hotel

 

といった表現にも出会う.そこで,1番の英文を見るとわかるが,この場合のin the hotelthe best room を修飾していることが歴然としている.すなわち,a room at a hotelは「ホテルにある部屋」という意味であって,「ホテルで予約する」のではないのではないかという可能性が見えてきた.

 

5冊ほど英英辞典も引いてみたが,英英辞典ではどうも"reserve a room at a hotel”を定型的な表現だと考えている様子がなく,単に「(ホテル,飛行機,レストラン,劇場などの席,部屋を)予約する」と定義されていた.幸運なことにDictionary of American English(The Newbury House)では,”He reserved a room for three nights in the hotel.”という目的とする英文例にも出会えた.さらにreserveの表現をおっていくと,次のような用例も目にした.

 

I'd like to reserve a seat on the next plane to Atlanta.

She packed her bags, then called the airport and made a reservation on the last flight out of Los Angeles. (Longman Language Activator)

 

こうした例では,on the next plane/ on the last flightが形容詞句であることは明らかだ.なぜなら,飛行機に乗って予約することはない.そうしてもとの英文に戻ると「ホテルで予約する」のもおかしいことが分かる.予約は電話や手紙など遠方ですることが通例で,直接ホテルで予約するのは行きつけのホテルなど,きわめて限られた場面になるからだ.したがって,at the hotelを副詞句としてとらえるとatinも五十歩百歩で「きわめて不自然な状況」になってしまう.

 

英英辞書を読み進むうちに,reserve の次に来る句はat the restaurant / at(in) the hotel/ in the theater / on the planeというふうにreserveの目的語となる名詞で前置詞が変化していることも分かってきた.restaurantはいつでもat, planeは常にon, theaterの用例は少ないもののin.ホテルにどういう前置詞が付くのか調べるのに,以前は定義語から引くしかなかったが,現在では全文検索という手段がある.OALDで全文検索をすると,”overbook”の語の定義で” to reserve the same seat in a theatre, room in a hotel, etc for two different customers at the same time”といった句が載っている. こうした例から「ホテルに」のホテルがどんなホテルかによって話者が微妙に使い分けているのではないかという仮説がなりたちそうだ.すなわち,いろいろな設備を要した広大なホテルではin,日本のビジネスホテルのような建物だけに近いホテルatというように.

 

ちなみにstay (   ) hotelという表現を確認してみた.多くの英和辞典はatが提示されていたが,一部の英和辞典ではinも認めていた.英英辞典ではCIDEが,"We stayed in/at a hotel on the sea-front."というふうに記述している.

 

多くの英和辞典(そして河合塾や私自身も)が”at the hotel”の句を副詞句と誤解して解釈してしまい,それが増殖して,ついに日本の個性豊かと思っていた英和辞典は批判精神もなく(センチュリーを除き)atしか認めなくなってしまったのだろう.

 たまたま,一度に多くのAETに会う機会があったので,この問題を提示して,判断を求めた.5人まで聞いてみたのだが,全員がinでもOKだというので,その段階で聞くのをやめた.

 その質問の折,これは reserve ... at the hotel なのか,reserve rooms (which are) at the hotelなのか,と聞いたところ私の予想通り,後者,すなわち,形容詞句だと答える.そして,私が結論するのに時間がかかった,「ホテルで予約するのはおかしい」という答えまで即座に出てきたのだ. 

この些細な語法問題は思いがけず日本の英語教育,辞書の持つ欠点を露呈する形になった.私もこんなことがなければ,副詞句だと思って過ごしていたことだろう.ひょっとしたら,「大規模の模試にも出題された用法だから注意するように」などと教え込んでしまったかもしれない.

この問題について一業者(模試を実施しているという意味で)や一予備校が糾弾されるべきではない.糾弾されるべきは,まちがった印象を植え付けた英和辞典にありそうだ.なぜなら,慎重の上にも慎重を期すはずの模試プロジェクトは手元の英和辞典を細心の注意を払って調べただろうから.

さらに,そのような「範例表現」を作り出す受験界(参考書,模試,現場の教師(高校現場も含めて))にも責任はありそうだ.河合塾の模試問題は日ごろの私の英語観を改めて見直す良い機会を与えてくれた.