河合塾への1通目の手紙とその経緯
9月に河合塾主催の第2回全統記述模試という全国規模(参加者20万名前後)の模試が実施された.
表記問題はその語法問題のひとつ.選択枝はat, of, inなど4つ.私は最初戸惑い,go fishing in the river(川で釣りをする)の類推でreserve rooms at the hotel(ホテルで予約する)を選んでみたが,念のため手元の辞書をいくつか引いてみた.大方の学習辞典はreserve a room at the hotelとなっていたが,三省堂 ニューセンチュリー和英辞典では,「Aホテルに予約している/I've reserved[made a reservation for, booked] a room at [in] A Hotel」という記述があり,どうもinでも良いかもしれないと思えてきた.そこで,私家版入試データを検索したところ96年の芝浦工大の入試英文で,” Some people always reserve a room in a hotel, but others think: 'Oh, I shall be able to find a hotel room somewhere.”という英文もあった.atが模範解答であることに異存はないが,inを不正解にする理由はないと判断した.記述模試実施直後だったので,まだ,採点に間に合うだろうと思い,和英辞典の記述,入試に登場した英文を添えて,判断を仰ぐ電子メールを翌日9月14日に送付した.
語法での論争は嫌いではないので,出題者からの詳細な反駁,もしくは,素直に誤りを認め当該の問題を採点から除外するか,inも正解にする処置を取る,いずれかの反応を期待していた.ところが,返事は届かず,それから2ヶ月もたった11月4日にfaxをいただいた.この文面を読んだ私は回答に対する失望から,怒りへと変わった.その回答全文をここに公表したい.
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第2回記述模試(英語2A(1))について,回答させていただきます. English-speaking people のチェックも受けましたが,inを入れた場合,「ホテルの中でホテルを予約する」というきわめて不自然な状況となり,ここでは不適切と考えます.
簡単ではありますが,以上回答とさせていただきます. 1999年10月8日 学校法人 河合塾 記述模試プロジェクト |
まず,こちらが,勤務校,名前を出して,問い合わせをしているのに,〜プロジェクトという責任の所在の曖昧さに首をかしげた.10月8日という日付の意味もわからない.仮にもひとつの判断を提供する時にEnglish-speaking peopleという曖昧なインフォーマントの提示はないだろう.どういう人に,何人に聞いて,どういう返事であったのか書くのが礼儀というものである.それに当今,English-speaking peopleというだけでありがたがってお説拝聴というわけにはいかない.私の隣りのAETは,どちらでも良いと言っているのだから.さらに,「ホテルの中でホテルを予約する」といった解釈がどこから出てくるのだろうか.どうしてこれを素直に,「ホテルの中の部屋を予約する」と解釈できないだろうか.ちなみにDictionary of American English(The Newbury House)には,”He reserved a room for three nights in the hotel.”というどうみても打ち消しのできない例文が載っているし,OALDでも” to reserve the same seat in a theatre, room in a hotel, etc for two different customers at the same time”といった定義文が載っている.
私は河合塾の回答文を読んで,河合塾の尊大さ,相手に絶対隙を見せまいとするかたくなさを感じた.なぜ,きちんと反論するなら反論しなかったのだろうか.全国20万の受験生が参加した模試の威厳を落としたくなかったのだろうか.
考えてみると業者(あえて,業者と呼ばせていただく)の実施する模試は大きいものでは40万人からの受験者をかかえ,センター試験に次ぐ大規模試験になっている.そして,その結果である点数=偏差値に受験生は一喜一憂し,場合によっては志望校選定の決定的な要素になっているのである.その点数の根拠となっている問題についてはあまり議論されることがなかった.今回でもreserve a room ( ) the hotelという問題がそれほど重要で,きちんと受験生の英語力を検定している問題なのか怪しい点もある.センター試験に次ぐ受験生がいるのだから,「これでいいのか大学入試」という前に,模試の中身を変えれば,それだけでも,英語教育は変わるかもしれない.つい最近実施されたマーク模試と呼ばれる模試でも,選択枝にwhoeverとwhomeverを並べたものがあった.私は「whomeverは死んだ」と常々言っているのだが.