「一日一善」辞書引き指導

 1年次は1年を通じて辞書引きの指導をしている。

 辞書の活用は小出しにするのが一番。学年全体で「1時間に1回は全員で辞書を引きましょう」と確認して,授業時間内での辞書引きの時間を確保している。称して「一日一善,辞書を引こう」

 教室での全員での辞書指導に紙辞書がふさわしいのは,まず,教師が生徒の前で教科書のように扱えること,生徒が物理的に辞書を引いているのが確認できる,生徒の引いているページがこちらの期待したページかどうか確認できる,辞書を引くという体を使った動作が単調な授業に一定の刺激を与える,などだ。

辞書引き「一日一善」の例

①基本語を抑える

 Yukina’s life was short, but she had lived on until life said, “I’m tired.” (Pro-Vision English Course , p.45)

 指示「onを引いて,本文の意味が記載されている項目を探しなさい。探したら,隣の人と確認をしてください」 live onは教科書欄外のイディオム・語法蘭でも取り上げられているが,ここは副詞onの持つ意味合いを確認させたい。onのような重要基本語は記述が大夫に及び視認性のよい紙辞書で引くのが有効だ。「語義の要約」で概観し,該当意味を探し出し,目的の語義にたどり着く,一見簡単そうだが難敵だ。

 

②語法の確認

Anne died from illness in 1945. (, p.57)

私のように古い教員はdie ofは「病気でなくなる場合」die fromは「(事故など)外的要因でなくなる」と前置詞の使いわけを強要されたり,強要した時代を懐かしく思い出す。全員で引いてみる。「die of[from]...(病気・けが・事故など)がもとで死ぬ』語法・重要 die ofは『病気などで死ぬ』場合に用いられるといわれることがあるが,実際には区別されていない」と遠い昔とはちがった説明がある。これで,die of die fromはほぼ同意だと確認できる。

 

③語のイメージを広げる

Audrey finally agreed to read out some lines from The Diary of Anne Frank. (同,p.59)

当たり前のような単語でこの文脈では意味が思いつかないlineを引く。「lineの中心的な意味は『線』です。それが転じて様々な線の意味があります。たとえば,ひも,釣り糸,それから,洗濯に使う物干し綱とか。辞書には列のイラストがありますね。それから,横に並んだ場合はlineではなくrowだということもわかりますね。本文のlineは文章の線,すなわち『行』ですね。」添えられたイラストとともにイメージを膨らますことができる。

 

④一人では引きそうもない単語で知識を広げる。

In 1943, during World War , Holland was under the control of Germany.

Germany – Germanの関係は混同されがち。国と国の形容詞が著しく異なるHolland –Dutch,それから,ちょっと失礼な表現go Dutchなど,Hollandは単語の散歩にはうってつけの単語。「それでは引いた人は大変少ないHollandを引きましょう。『オランダ』とありますね。それからNetherlandsを見ろ!とありますね。Netherlandsを引きましょう。オランダに関する表がありますね。国名はthe Netherlandsか俗称のHolland,そして『オランダ人』にはDutchもありますね。それではDutchを引いてみましょう。go Dutch「割り勘にする」というおもしろい意味がありますね。ただ,[時に差別的]と書かれていますね。そりゃそうですね。『オランダで行こう』が「割り勘」じゃオランダの人に失礼ですものね。」

 

かくして一日一善の辞書指導は続く。

(2009年4月)