TOEFL iBT Speaking の試験を受験してみて

 

 TOEFL iBTを受験して3週間。何気なく公式ホームページの自分の登録情報を検索したらReading / Listening / Speaking / Writing / Totalのスコアが載っていました。事前に使用したテキストの正解率からたいしてよいスコアを期待おらず,また,Readingの受験環境が劣悪でいつもなら時間を余らせて解答できる1題が時間ぎりぎりにそれも十分に理解したとはいいがたい状態だったので,Reading/Listening/ Writingは予想外によくほぼ10年前に受験したpaper basedTOEFLと同じようなスコアになりました。ところがSpeakingだけスコアが低くてびっくり。自由なタイトルと与えられて20秒考え40秒話す問題こそGood(4.0-5.0)でしたが,あるテキストを読み,それに関する講義を聴いて,30秒考えて,1分話すTASKFair(2.5-3.0),ある学生の会話を聞き,何が問題であり,その解決方法としてふさわしい解決法とその理由を述べるTaskも同様にFair(2.5-3.0)総合は24でした。

 スコア全体がそこそこであったことに安心してから,しばらくするとこのSpeaking Sectionのスコアがだんだん不満になってきました。コメントでは「文法的な誤り,語の使い方の不自然さがあり,話にまとまりがない」レベルということになります。確かに練習でも1分のなかで,「要約→考え」と述べようとするとどうしても早口になったり,文法・語彙・発音がおろそかになりました。逆に文法・語彙・発音に注意を払うと速度がゆっくりとなって時間内に言いたいことが収まらない。模範解答では150語から200語要求されているようです。

 そこで,気になってTOEFLOfficialサイトから2006年度のiBTの分析結果をダウンロード,エクセル形式に変換して分析してみました。

 iBTのスコアが記録されている国は148カ国。受験者総数245,369名。受験者数の多い順の成績は次の通りです。

No.

Country

number

R

L

S

W

TS

Rank

1

Korea, Republic of

31,991

17

19

17

19

72

29

2

India

23,750

22

23

23

23

91

5

3

China

20,450

20

19

18

20

76

27

4

Japan

17,957

15

17

15

17

65

36

5

Germany

14,017

23

25

24

24

96

1

6

Italy

12,123

20

18

16

17

71

32

7

France

10,378

23

23

21

22

88

6

8

Taiwan

10,022

16

18

17

19

71

32

9

Philippines

5,882

20

22

22

21

85

9

10

Mexico

5,362

21

22

21

20

84

14

 

平均

 

18.8

21.4

20.5

20.2

81.6

 

 

標準偏差

 

5.0788

5.9559

2.2414

2.3342

9.3187

 

 

 日本は受験生数順位では4位です。TSは総合スコアですが,Rankは受験生が1000人を超えた39カ国を対象にしていますので,日本は下から3番目となります。ちなみに37以下はサウジアラビア,クウェート,アラブ首長国連邦で,受験環境の貧弱さ,あるいは受験生の準備不足が原因と推測されます。

 さて,問題のSpeakingですが,総平均は20.5。ちなみに私のスコア24よりよい平均の国がオーストリア,オランダ,デンマーク,ノルウェイ,南アフリカ,イギリス(!)と5カ国ありました。日本の平均15は参加国中最下位。スコアの違いでは実感できないので,日中韓のスコアを偏差値に変換してみました。

Country

R

L

S

W

Total

韓国

46.5

46

34.4

44.9

39.7

中国

52.4

46

38.8

49.1

44

日本

42.5

42.6

25.5

36.3

32.2

 (偏差値30以下はおそらくスコア0でも出ます。)

 偏差値の感覚が身に付いている皆さんには日本の成績がいかにひどいものか体感できると思います。特にSpeaking25.5は壊滅的です。指導すべき立場の私が24しかとっていないので,偉そうなことを言えませんが,Speakingに課せられたTask。「限られた時間に明確な英語でまとまりのある話をする」というかなりハードルの高い要求に応えるような対策なり英語授業をするとなると,やるべきことはかなり多いと実感しました。まず何より自分のSpeaking Scoreを上げることも必要でしょうが高額な受験料,劣悪な受験環境を考えると当分そのような気分にはなりません。

(「英語教育」,大修館書店,2008年4月号)