TOEFL iBTを受験して

 昨夏TOEFL iBTを受験しました。毎年数名留学を目指してTOEFLを受験する生徒がおり,その助言を与えるための経験をする,というのが第1の理由。受け持ちの生徒が卒業して精神的,時間的に余裕ができたのが第2の理由。昨今の教員の研修については厳しい制限がかけられるようになり,「夏休みにTOEFLを受験するのは準備も含めて立派な研修だろう」というのが最後の理由。
 日本で開始して2年目を迎えるTOEFL iBTは現在会場が不足しているようで,3か月ぐらい前に申し込まないと受験そのものが困難な状況。170ドルというのは高いとは思いましたが,最後の機会だと思い受験することにしました。約2か月の準備期間で利用したテキストは公式ページの体験テストの他にThe official Guide to the NEW TOEL iBT, Barrons How to Prepare for the TOEFL iBT, Longman Preparation Course For the Toefl Testです。この3冊の情報を総合すると,

1)個人によって時間が変わるので,同じペースで受験生が全員受験するわけではない。
2)メモを取ることは実際の学習でも重要。したがって効果的なメモを取る練習をしなさい。本番ではa wad of paperが支給される,ということがわかりました。

TOEFLiBTはこれまでの英語の試験の常識を覆すような新鮮な部分があります。それは特にIntegrated Testと呼ばれるSpeaking/Writing Sectionに顕著です。Listeningも解答時間を受験生がある程度コントロールできます。難しい問題には時間をさいて,易しい問題では即答で時間を節約する,ということが可能になりました。このようなTOEFL iBTは好ましいテストと思い,勝手に試験の本番をシミュレーションしていました。それは,

1)パソコンはパーティションあるいはブースに収められている。
2)a wad of paperとは白紙のノート(お絵かきのような)。
3)筆記用具は自分で用意し,場合によっては色分けができる。

 ところが受験当日に会場に行ってびっくりしました。まず,端末は開放式のいわゆる一般的なコンピュータ教室のパソコンであったこと。私立大学のコンピュータ室ということで,普通なら40台ぐらいしか設置されていない教室に60台を超える端末が詰め込まれていました。まさか,そこに全員が座ると思わなかったのですが,実際には隣は肘と肘が触れるぐらいの距離,正面は顔をつき合わせるくらいの距離に受験生がいました。受験生の試験の時間がずれるというのは,受付を済ませた受験生から試験を始めるという乱暴さ。そのために何が起きるかというと,Readirlgをしている最中に隣に受験生が座ったり,受付でのやりとりが耳に入ってくるという喧燥の中で最初のReading Sectionに取り組むことになったのです。さらにa wad of paperとはA4用紙3枚。私は1題につき,1面を使うつもりでいたので,これでは足りず,その場合は試験中に追加を頼まなければなりません。しかし,試験は待ってくれません。用紙の配布を待っている間にも試験は進行していくのです。筆記用具は鉛筆1本。これが書けなくなったら交換を試験中に要求。TOEFL iBTの先進さにくらべ,この劣悪な受験環境はなんなんでしょうか?170ドル,すなわち2万円の受験料に見合うような試験会場とはかけ離れていました。
現在TOEFLの会場を検索すると語学学校,大学,高校など様々な教育機関が会場として登録されています。ETSも会場を募集中です。しかし,少なくとも私の受験した会場はおおよそこれまでの検定試験の会場とはかけ離れたものでした。当然このことはETS本部にもメールで伝えました。全国でTOEFLの会場になっている教育機関は早急に次の5点を検討すべきです。

1)端末はブース,パーティションを用意する。それが無理なら受験生同士十分な間隔をとる。
2)メモ用紙は受験生の申告として,必要枚数だけ事前に配布する。
3)筆記用具は持参とするか受験生が希望するだけ事前に貸与する。
4)ReadingSectionの開始時間だけは全員一斉に始める。
5)ヘッドセットは防音性の優れたものとし,他の受験生のスピーチが他の受験生に影響を与えないように配慮する。

今回のiBTではSpeakingといってもただしゃべるだけではなく,「読んで,聞いて,まとめる」「聞いて,まとめて,自分の考えを述べる」と総合的な活動になっています。Writing Sectionも同様に,2題目は「読んで,聞いて,要約を書く」活動です。したがってSpeaking SectionやWriting Sectionに取り組むときにもListeningが必要であり,他の受験生に声の大きい人がいれば,聴き取りが困難になります。実際そのような経験をしました。
 TOEFLの受験料の高さからも,かなりの金額が会場使用料にさかれていると思われます。大概の受験生は必要に迫られての受験だと思います。その環境がこのような劣悪のものというのは詐欺に近いのではないでしょうか。これからの受験生を代表して,実情を報告すると同時に,関係者の早急の対応,改善を望みます。


(「英語教育」,大修館書店,2008年2月号)

The official Guide
to
the NEW TOEL iBT

Barrons How to Prepare
for the TOEFL iBT,
Longman Preparation Course
For the Toefl Tes

Longman
Preparation Course
For
the Toefl Test