Side-Tracked by Henning Mankell, 1995

 夏休み中に読み始めたMankellのクルト・ヴァランダー,シリーズも4冊目を終了しました。もともと,この本を購入して,最初の数ページを読んだところ英文が異常にに易しかったこと。シリーズ物であることを知り,第1作から読み進めることにしました。翻訳版も(スウェーデン語から英語への)第7作まで出ているようです。ただ,他にも読みたい本もあるので,しばらく休みます。Mankellの著作は第1作Faceless killerは8万語と標準的な長さでしたが,第2作Dogs of Rigaでは9万7千,第3作の推理小説と言うより,冒険小説だったWhite Lionessは15万5千。今回の作品はどうも第5作にあたるらしいのですが,やはり12万9千語と大変長く,その長さを感じさせない,とはいえ時間がかかることは事実。これを読み終わるのにも土,日を含めてほぼ2週間かかりました。

 いまさらですが,スウェーデン語の発音がわからず難儀しました。もっと早くにインターネットで検索すれば良かったのですが,さすがに,いくつかのホームページで確認できました。

アルクのページではわずかですが,実際の発音も確認できます。http://www.alc.co.jp/kaigai/travel/aisatsu/swedish/

 さて,易しいと思った書き出しを紹介します。

Just before dawn, Pedro Santana woke. The kerosene lamp had started to smoke. When he opened his eyes he didn't know where he was. He had been roused from a dream in which he wandered through a peculiar, rocky landscape where the air was very thin, and he knew that all his memories were about to leave him. The smoking kerosene lamp had penetrated his consciousness like the distant smell of volcanic ash. But suddenly there was something else: a human sound, tormented, panting. And then the dream evaporated and he was forced to return to the dark room where he had now spent six days and six nights without sleeping more than a few minutes at a time.

途中少し長いですが,単文が続き,難しい単語もありません。ところでこの冒頭部分は全体の話の中ではほとんど関係のないところで,大事な複線ではありますが,このPedro Santanaという人は,冒頭で登場するだけでした。

4作目ということで,さりげなく,これまでの出来事にも触れられていますので,Wallanderとともに4歳年をとった感じです。前妻のMonaは全く出てきませんが,2作で,恋心をいだき,どういうわけか第3作では恋人になっていて,今回も恋人であるBaibaは直接は登場しませんが,彼女と過ごす休暇が迫っており,アルツハイマーになった父親と共に常にWallanderの頭の隅にあります。

これまでの登場人物に加えて,片腕として突如登場するHoglund。人はいいが世間体を気にする署長Bjorkはそうそうに引退。次期署長が赴任するまでHannsenが指揮をとりますが,実質的にはWallanerというよくわからない関係。

話は本の裏表紙にあるように,連続殺人の話。最初から犯人が登場しているので,この犯人とWalladerがどのように接触していくのか。そして,最後はこれまでの作品を読めばおおよそ見当はつきますが,どのような形で二人が対峙するのか,が興味の中心です。それにしても人が死にすぎました。これでは,ハリウッド映画みたいです。人が死なないラモツエを読んだあとでは,ちょっとなぁ,という感じ。

moped

He pulled the helmet down over his head. Then he went over to his moped, which he had ridden there the day before and left parked under a lamppost, taking a bus back to Malmo.

moped「モペット:軽量で低速走行用の補助エンジン(50cc 未満)付き自転車. [1956.<ドイツ語,究極的には<スウェーデン語(trampcykel med) mo(tor och) ped(aler)モーター付き自転車](ランダムハウス英和)

なんか動詞の過去形みたいですが,名詞。結構重要な働きをします。

sidetracked

The feeling that they had been sidetracked was still with him.

「脇道にそれた」は本のタイトルでもあります。「脱線」とでもなりそうですが,Wallanderは捜査の方針を決めて指示を出すのですが,どうも自分の想定した方向性が間違っているのではないか。的はずれの捜査をしているのではないか,という疑問を持ちます。犯行が同じ手口で行われるので,連続猟奇殺人とはすぐ確定しますが,その犯人像,動機について,思いを巡らすことに物語の大半がさかれます。

aquavit

Sjosten had drunk a few shots of aquavit with beer, while Wallander stuck to mineral water.

アカビット《北欧のヒメウイキョウ(caraway)で香りをつけた強い蒸溜酒;akvavit ともいう;cf. schnapps》.

sidetrack

"Why couldn't this be possible?" he said. "That he was killed by the same man, but for a completely different reason.

"That doesn't make sense.” said Birgersson.

"Nothing makes sense in this case.”

"So you mean that we should be looking for two different motives.” said Wallander.

"That's about it. But I could be wrong. It was just an idea, that's all." Wallander nodded. "We shouldn't disregard that possibility"

"It's a sidetrack.” said Birgersson. "A blind alley, a dead end. It doesn't seem likely at all"

(2004年9月12日)