Time誌に紹介された旅とミステリーの最後の1冊。このところ,シリーズものの途中の1冊だけを読んで苦労したので,今回は事前に調べました。スェーデンの探偵Kurt Wallander(私としてはカート・ワランダーと読みたいのですが,現地語ではクルト・ヴァンダラーだそうです)はヘニング・マンケルの書くシリーズ。Time誌で紹介されたのは4冊目のSidetrackedですが,一読して,英文が短く,単語が易しいことがわかりましたので,1冊目から読み進めることにしました。
CHAPTER 1
He has forgotten something, he knows that for sure when he wakes up. Something he dreamt during the night. Something he ought to remember. He tries to remember. But sleep is like a black hole. A well that reveals nothing of its contents.
これは冒頭の英文ですが,全編大変平易な英文で訳されています。第1作の訳者はSteven T. Murrayという方。第2作からはLaurie Thompsonという方。現在シリーズの4冊がありますが,英文の易しさはかわらないよう。ただし,どんどん厚くなっています。1作目が一番短いようです。
さて,わざわざ1作目(初版は1992年。英語版のハードカバーが2001年)から読むのはWallanderの背景知識を集めるため。
舞台はスウェーデン,スカンディナビア半島の南端,スコーネ地方の小都市イースタード(Ystad)。エンカルタで地図を印刷して照合しながら読み進めましたが,まず地名が読めない。それから,エンカルタの地図や本の冒頭に添えられた地図にはない地名も登場。さらに距離感がつかめなくてWallanderは気軽に40キロぐらい離れたマルメ(Malmo)に行ったり,かなりの距離を移動しています。
Wallanderは42歳。警察署のNo.2ですが,所長がスペインへ休暇中で,物語の前半では彼が指揮をとります。人里離れた民家で老夫婦が惨殺される,という事件が冒頭におきますが,Wallanderの私的な事柄にもページがさかれます。家を出てしまった妻とのこと。家出してうまくいっていない娘のこと。ボケが始まった一人暮らしの画家である父親のこと。そして,今一つよくわからないですが,Prosecuter(検察?)である既婚の女性Anette Brolinに思いを寄せ,単身赴任の彼女もまんざらでもなさそう。(ちょっと都合よすぎ)さらに同僚で,退職間近いベテラン刑事Rydbergの病気のこと。さらに部下の刑事の競馬熱とか,細々したことが続きます。
事件そのものは実際はこんなふうに進むんだろうな,という感じ,最初の1ヶ月ぐらいはかなりのテンポで事件は進展しますが,後半はぴたりと事件が進展しなくなります。1月に起きた事件が最終的に解決するのは8月に入ってから。前半の臨場感のある動きと後半の静けさは対照的です。
At
野球の記事をよく読みますが日本語にもなっているslugger「強打者」の動詞。今までも見たことがあったかもしれませんが,ちょっとうれしくなりました。
名詞のslug「なめくじ」はたくさん見ているようです。動詞も結構目にしているようで,つい最近読んだStonekissにも出ていました。(^_^;;)
Just tell her some random nutcase came up and slugged you. (Stonekiss)
He dared not think how far above the ground he was, or he would get vertigo at once.
get vertigo「ふらふらする」 こちらもこれまで11回ほど見た単語のようです。
ほとんど苦行のような状態で読んだサンテグジュペリの夜間飛行にもありました。
With no understanding at that moment of those depths, I was seized by vertigo, for with no root to cling to, no roof or tree branch between those depths and me, I was already adrift and sinking, abandoned to my fall like a diver.
(これで1文。やはり長くてわかりにくい)
Bjork had sat in on the long case meeting, and at Wallander's request he had let Hansson put aside work on the murder in Hageholm so he could join the Lunnarp group, as they now called themselves. Naslund was off ill again, but he rang in and said he'd be there the next day.
ここに署員の名前がずいぶん登場していますが,とにかくわかりにくい。頭に入ってきません。
(2004年8月10日)