※下記の記載事項はあくまで一般的な例です。
詳しくはお住まいの市区町村、又は専門家にお問合せください。
Q1.遺産分割の種類
A.
☆現物分割 → 一般的に多い。
例えば住んでいた土地、建物は妻に、別荘は長男に、預貯金
は次男に。
問題点 ⇒相続人間でのバランスが悪く、不満がでる。
解決方法 ⇒代償分割
☆代償分割 → 多くもらった相続人が、その代りに現金や他の不動産を他の
相続人に渡す方法。
☆換価分割 → 例えば引き続き住む予定のない土地、建物を一旦相続人の
共有財産とし、それを売却して、そのお金を相続人で分ける
方法。
Q2.遺産分割の心構え
A.
@跡をとる相続人がリードする。
A各相続人が受け取る財産は、一応法律で法定相続分が決まっている。
B財産がいくらあるのかオープンにして、他の相続人がどんなことを考えている
のかよく聞くようにする。
C遺産分割協議のスケジュールを各相続人に知らせる。
D話し方一つで、うまくいくこともうまくいかなくなる。
Q3.遺産分割はやり直せるか?
A.
☆法的要件が整っている場合(最初の分割が法的に正しい)
@相続人全員の同意が得られれば可能である。
A申告前のやり直しはいいが、申告後のやり直しは余分な税負担がかかる。
B一度申告して確定した相続財産を移動させることは、贈与になる。
☆法的要件が整っていない場合
@裁判で瑕疵が認められれば遺産分割のやり直しをすることができる。
A遺産分割のやり直しのために、税務署は申告期限を延ばしてはくれない。
B取得する財産が当初の申告より多くなる人は、修正申告をし、少なくなる人
は更生の請求を行う。
Q4.不動産での代償分割
A.
@現金で渡す場合と不動産を渡す場合では、かかる税金の取り扱いが異なる。
A現金は渡す方には税金がかからず、受け取る方は相続税を負担する。
Bマンションなどの不動産を渡した場合、渡した人に時価と原価の差額に
対して譲渡所得税や住民税がかかる。
C不動産を受け取った方には相続税、登記費用、不動産取得税がかかる。
D譲渡所得税→受け取ったときの時価より高い額で取得した不動産を売却した
場合、その差額に対してかかる。
Q5.法定相続分と異なる分割ができるか?
A.
@法定相続分は法律上の目安。
A遺産分割の原則をいえば、相続人の間で決めた割合で分ければよい。
Q6.連れ子は財産を相続できるか?
A.
@養子縁組の有無によって、変わってくる。
A養子縁組をしていなければ、2次相続のときに相続の権利がない。
Q7.相続人に行方不明者がいたら?
A.
@行方不明者でも法定相続人であれば、死亡が確定しない限り、当然に相続の
権利が発生する。
A行方不明になってから7年が経過していれば、行方不明者の配偶者や兄弟
姉妹が行方不明を証明する資料とともに「失踪宣告」を家庭裁判所に提出し
て、行方不明者は死亡したものとみなしてもらうことが可能である。
B「失踪宣告」が出されていない場合は、「財産管理人」を選任する。
C「財産管理人」は遺産分割に関して利害関係をもつ人が家庭裁判所にその
選任を求めて選んでもらう。
D「財産管理人」は、行方不明者の代わりに遺産分割協議に出席し、そこで
分割された財産をその後、管理する。
E行方不明者の相続分は法定相続分になることが、一般的である。
(本人がいないため)
F行方不明から7年たつと、「失踪宣告」の手続きをして、もう一度管理されて
いた財産に対して、相続人の間で遺産分割を行う。
Q8.マイナスの財産が多かったら?
A.
@「相続放棄」(相続の開始から3か月以内)
はじめから相続人ではなかったとみなされる。
相続人が個別に家庭裁判所に申し立てができる。
A「限定承認」(相続の開始から3か月以内)
申し立ては家庭裁判所に相続人全員でしなければならない。
プラスの財産の範囲で借金の返済をする。
「相続放棄」と「限定承認」の選択
@土地・建物が担保に取られていなくて、借金の大半が消費者金融等の借入
であれば「相続放棄」でもかまわない。
A土地・建物が担保に取られている場合には「限定承認」を選択する。
※「限定承認」であれば土地・建物の売却の権利は相続人側にある。
※売却益から借金を返済し、それでも借金が残る場合には、免除される。
人的担保がある場合
相続人が借金の連帯保証人になっている場合には、「相続放棄」「限定承認」
のどちらをしても責任を免れることはできない。
Q9.「相続分のないことの証明」とは?
A.
@被相続人からすでに相続分に等しい贈与を受けているので、被相続人の死亡
による相続については、受けるべき相続分の無いことの証明
A大部分はより簡便な方法として、事実上相続放棄と同じ目的を達成するため
に用いられる。
B正式な相続放棄の手続きや遺産分割協議書の作成などに代わる書類で登記
所に提出する添付書類として利用される。署名、押印(実印)、印鑑証明書を
添えて提出
問題点
@「相続放棄」と異なり被相続人の債務は承継する。
A贈与を受けた証明なので、税務署から贈与税を問われる可能性が全くないと
はいえない。
Q10.相続人に未成年者がいたら?
A.
@「特別代理人」が必要になる。
A「特別代理人」は未成年者の代理人として遺産分割協議に参加する。
B「特別代理人」は家庭裁判所に申し立てをして許可を得なければならない。
C「特別代理人の申請」をするときに、遺産分割案もいっしょに提出しなければ
ならない。
D利益相反の関係にある者は、特別代理人にはなれない。
Q11.相続人に認知症の人がいたら?
A.
@「成年後見人制度」を活用して、遺産分割をする。
A家庭裁判所に成年後見人を立てる手続きをする。
(医師の診断書、鑑定書を付ける)
B家庭裁判所は診断書や鑑定書から、後見、保佐、補助かを決める。
Q12.相続人に海外居住者がいたら?
A.
@通常より時間的余裕をもって遺産分割を進めていく必要がある。
A海外居住の相続人に遺産分割協議書を送り、署名・捺印をしてもらわなければ
ならない。
Bそれを現地の日本大使館にもっていき、本人の署名であることを証明して
もらう。
C海外には日本のような印鑑証明書の発行がないので、その代りに現地の日本
大使館からサインの証明書を出してもらう必要がある。
D預貯金や有価証券の名義変更などには、遺産分割協議書とは別の書類が
必要となるが、これらに関しては、現地の日本大使館の証明書は必要なく、
本人の署名・捺印で足りる。
Q13.相続人ではない人に相続させられるか?
A.
@一番いいのは、遺言書を作成しておくことである。
A遺言書がない場合でも養子縁組をしておくことで、相続させることはできる。
B遺言書もなく養子縁組もしていない場合、被相続人が 「生前、自分が死ん
だら○○に○○をあげたい」と言っていて、それを第三者が証明でき、相続人
全員が認めれば可能である「死因贈与」に当てはまる。
C第三者が証明できなくても財産を譲ることは可能であるが、それは本来相続
するはずの相続人からの贈与という形になり、相続税より高い贈与税がかか
る。
D兄弟姉妹に相続させたいときには、例えば子供が相続放棄するという選択肢
もある。
Q14.子供がいなかったら?
A.
@夫婦に子供がいない場合、それぞれの財産が相手の親族に相続される可能性
が出てくる(2次相続のとき)
A遺言により指定することが有効である
B信託法の改正により
「自分が亡くなったら財産は妻に、その後、妻が亡くなったときには妻が相続
した財産を自分の弟に譲る」というその先まで指定できるようになった。
※現金の類ではなく土地や事業を自分の血族に残したいという場合有効な
手立て
Q15.法定相続人がいなかったら?
A.
@法定相続人になれるのは、兄弟姉妹の子供までである。
A相続人ではなくても死亡した人の看護、介護や日常生活の援助をした人には
「特別縁故者」として申請すれば、財産の一部を受け取れる制度がある。
B「特別縁故者」の申し立ては、故人が生前に養子縁組や遺言書の作成をしな
かった場合や認知症などでできなかった場合の窮地の策である。
Q16.借金は誰が相続するか?
A.
@まず、その借金が何に由来するものか確認する。
A例えば賃貸アパートを建てたときの借金であれば、そのアパートを誰が相続
するかで決める。
B日常生活のために借金を重ねた場合には、取得財産の割合により借金の負担
を決めてもよい。
C借金を引き継いだ相続人が借金を返済できなくなった場合、債権者が承諾
していれば他の相続人が責任を持つ必要はない。
Q17.遺産分割後に消費者金融から請求がきたら?
A.
民法915条は、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時
から3か月以内に、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない」
と定めている。つまり、「相続の開始」のときからではなく、「相続人が相続の
開始を知ったときから」3か月以内ということになっている。条件を満たせば貸金
業者の請求を受けてから3か月以内なら相続の放棄は可能である。
Q18.遺言書が遺産分割の後で見つかったときは?
A.
遺言に反した遺産分割の部分は無効
しかし
@相続人全員の同意があれば、あらためて分割のやり直しをする必要はない。
A遺言書に遺言執行者が指定してある場合は、当初の分割を維持するには、
この執行者の追認が必要。
B発見した遺言書に遺贈や認知の指示がある場合は、原則通り発見前の遺産
分割協議を無効とし、再分割するしかない。
Q19.抵当権付きの土地・建物の相続
A.
@被相続人自身が借金をして、その担保として抵当権を設定した場合
相続人はその借金も引き継ぐので、債務者として支払義務を負う
A他人の借金を担保するため被相続人が抵当権を設定した場合(物上保証人)
相続人は物上保証人の立場を引き継ぐだけだから、借金の返済義務はない
ただし、債務者が債務を支払わない場合はその不動産は競売にかけられる
Q20.事業そのものを相続することはできるか?
A.
@個人事業の場合は、その事業に使用している土地・建物が被相続人の所有で
あれば、その土地・建物は相続の対象になり、在庫品等の商品も相続の対象
になる。
A商標を登録している場合も、その商標は相続財産に含まれる。
B個人商店の場合などは、営業を継続している間に自然に生まれてくる信用や
評価(のれん)も経済的価値のあるものとして取引の対象となっており、相続
財産に含まれる。
C被相続人が会社を経営していた場合は、その株主(出資者)としての権利が
相続の対象となる。
Q21.合名会社や合資会社の無限責任社員としての地位は相続の対象になるか?
A.
@定款に定めがない限り相続の対象にはならない。
A地位の相続ができない場合は、持分(出資金)の払戻請求権を相続すること
になる。
Q22.特許権・実用新案権・意匠権・商標権・著作権の相続は?
A.
@すべて相続の対象になるが、一定の手続きが必要である。
A特許権・実用新案権・意匠権・商標権→特許庁長官への届出が必要。
出願中の権利も同じ。ただし相続により手続きを受け継ぐ申立が必要。
B著作権→一人が相続する場合は、届出等は不要。
複数の相続人が一つの権利を分割して引き継ぐ場合は文化庁へ
の登録が必要。