第二回 「見慣れているから読める文字」
〜みんなが使っている「かな」の奥深さ〜
日本には漢字のほかに仮名という文字がある。特に平仮名は50音として誰でも自由に使っている。この50音の仮名が教育で用いられる様になったのは明治時代からだ。基本的に仮名それぞれの文字には漢字にある固有の「意味」は存在しない。単に「音」としての機能に限定される。
そもそも仮名は漢字から派生したものであり、解り易く説明するならば「草書」から生み出されている。例えば、「な」という文字をよく見てみると「奈」の名残を感じられる。同様に「ほ」は「保」から、「の」は「乃」からと関連付けは容易だ。仮名がその存在を確立したのは平安時代といわれている。みなさんも一度は見た事があろう平安朝時代の書物は美しい仮名で書かれている。例えば音としての「あ」を用いる時に「安」をくずして書いたり、「阿」を用いたりとそこには書き手の感覚に委ねられた自由な世界が存在する。では、50音の平仮名以外にも仮名があるのかと尋ねられれば,答えはもちろんYESだ。ただ、平仮名とは別の仮名であり、それらは総して「変体かな」と呼ばれる。
難しい話はこの辺にして、ではその「変体かな」が現代ではどの様に使われているのかを見ると、身近なところでは「そば屋」の看板にある。
左の文字は「きそば」という字だ。実際の漢字に直すと「生・楚・者」になる。「そば」という漢字は他にも存在する。「蕎麦」という字だ。
この漢字には「喬く(たかく)生える麦」という意味が含まれている。
「喬」の上に草かんむりがある事で漢字がいかに高機能な表現手段であるかが判る。その点から考えるとここに書かれている「楚者」という文字が単に「音」として用いられた変体かなだという事がお判りカナ?
この様に文字には深い歴史とともに絵にも劣らない表現領域があるという事を感じ取っていただければ幸いです。
ホーム