3年前、「Two Against Nature」を発表し、そこでグラミー賞4部門を獲得して見事な復活を果たしたスティーリー・ダン。彼等の新作が早くもリリースされた。ドナルド・フェイゲンとウォールター・ベッカー、この最強コンビはもはやジャンルなど超越したまさに"スティーリー・ダン・ミュージック"というに相応しい独自の世界を確立している。70年代から80年代までに7作のアルバムを世に送り出し、特にロック史において「ガウチョ」と「彩」はいまだに不滅の名作として語り継がれている。その「ガウチョ」から実に20年振りに発表された前作でもその独特の世界は健在で、一層洗練されたタイトなサウンドに我々ファンは思わずニンマリしたものだった。        そして新作「everything must go」はその流れを持続しつつも彼等の絶頂期に聴かれたブルージーなハイレベルの泥臭さ(?)が随所にみられる。むしろ前述の「エイジャ」「ガウチョ」のサウンドに回帰した感がある。1曲目に歌われる「ラスト・モール」は閉店セールをテーマにしており、タイトル曲でもあるラストの「エヴリシング・マスト・ゴー」ではもうそろそろ全てを清算しなくちゃね、と歌っている。と、言うことは彼等がここで引退を匂わせているのだろうかと深読みしてしまう構成だ。いやいや、そんな筈はないぞとばかりに全曲がノリノリに展開してゆく。特に「ランチ・ウィズ・ジーナ」のリズミックなドライヴ感とフェイゲンのヴォーカル、そしてホーン・アレンジはファンにはたまらない。また、「グリーン・ブック」のジャージーなアレンジも素晴らしく、この曲などは80年代の彼等を彷彿とさせるものがある。しかし、そのタイトル曲には何となく物悲しさが漂っていて、自分ではビートルズのラスト・アルバム「アビーロード」の最後の曲「ジ・エンド」に似たムードを感じてしまうのも事実だ。はたして真意はどうだろうか?
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