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クラシック・ミュージックに匹敵すると評論家たちから絶賛されたこの曲は、ビートルズが初めてジョージ・マーティン以外のアレンジャーを使って創られた楽曲である。そのアレンジャーとはマイク・リンダーの事である。実は、新聞で家出少女の心痛む記事を読んだポールがそこから影響されて書き上げた曲を想いが冷めぬうちにレコーディングしようと早速ジョージ・マーティンに電話を入れたところ、ちょうどシラ・ブラックのレコーディングの真っ最中だったため断られ、仕方なくマイクにスコアを頼んだという経緯がある。この事情にジョージ・マーティンは傷付いたと語っている。この曲ではビートルズは一切演奏には関わっていない。ハープに4つのヴァイオリン、2つのヴィオラ、2つのチェロそしてコントラバスをバックにポールとジョンがヴォーカルとコーラスをつけているだけである。マイク・リンダーはそれまでのビートルズの弦楽アレンジを踏襲しながらスコアを書き上げた。そのためジョージ・マーティンの作風に近くなっており違和感はまったく感じられない。それだけにマーティンも余計に傷付いたのかも知れない。ジョンがコーラスの部分を書いたが、その歌詞にある"We Gave Her Everything Money Could Buy"(金で買えるものは何でも与えてやったのに)という部分が、当時のヒッピーの価値観を代弁する結果となり、アメリカの若者に共感を与えた。そしてこのドロップ・アウトは当時の社会現象になる。ビートルズのメッセージ性はもはやどんなマス・コミニュケーションにも勝るパワーを持ち始めたと証明された時代だ。ビートルズは音楽を通して世界のファッション、文化、そして価値観までもリードするエポック・メイキングの王道を突き進むことになるのである。 |
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