SONY /5BAND RADIO ICF-5800
「スカイ・センサー」
自分が高校生の頃に買ってもらった古いラジオが押し入れの奥から出て来た。たしか、当時はこの商品のラインアップがいくつかあって、その中の上位機種だった記憶がある。ラジオは今でも毎日欠かさず聴いている。テレビを見ない自分としては人一倍ラジオにはお世話になってきた。
そのスタート時期に使い込んだマシーンだけにしばらく振りの再開に癒された気がした。実際にスイッチを入れてみたらまだまだしっかりと動いてくれる。バリコンの移動時にやや雑音が出てしまうものの、FMから短波までバッチリ受信してくれた。
若い頃はもっぱらFENやVOAなどのアメリカ軍放送ばかり聴いていた。あの頃のラジオといえば受験生の代名詞「深夜放送」と相場は決まっていたが、自分は勉強などそれほどしなかったのでまったくその世界は知らない。今、テレビで大儲けしている民放ワイドショーのキャスターたちの多くがその分野出身だとか。なんだか、ねー。ま、それはさて置き、このラジオの謳い文句のひとつがタフネスだった。外観から受ける印象も軍隊が前線で使う無線機の趣きで、ハードな条件下での使用が保証されていた覚えがある。その裏付けでもあるかの様にこれには3バンドの短波受信能力がある。
今の若者にはあまり馴染みはないだろうが、このショート・ウェイヴ ( SW )は世界中を駆け巡っていた。有名な話では70年代以降の冷戦下における東側諸国に対してのアメリカ軍が流し続けた放送がベルリンの壁崩壊に象徴される一連の動向に大きく関わったとされた。我々先進国では当たり前の自由な放送も独裁国家や社会主義国家にあってはすべて操作される。その周波数をかいくぐって流れる短波はそうしたプロパガンダを徐々に打ち負かして来た歴史があったんだね。
短波って気象変化や地質学上の条件に大きく左右される。地球上には限定周波数帯域が多く存在する。そのため、同じ放送が様々な周波数で発信されているので選局がかなり難しい。VOA(Voice Of America)を初めてキャッチした時には細かな周波数をメモした記憶もある。 SSBを復調するためのBFOスイッチまで搭載されていた。そんな事言っても理解出来る人は少ないけどね。
今ではテレビにまでデジタル信号が使われる時代になったので、ラジオの世界も様変わりしそうなもんだけど、投資が少ないのか人気が無いのかラジオのデジタル化は遅れている印象は拭えない。
でも、こんな味気ない時代にアナログが共存しているという事実は喜ぶべき事だぜ。70年代初頭の人気商品とそのデザインから当時のエネルギーをちょっとだけ貰えたかもね。
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