マイルス・ディヴィス「トリビュート・コンピレーション」2作品
ジャズを語るうえで必ず引き合いに出される巨匠「マイルス・ディヴィス」が亡くなって早20年。くぎりの良いこの時期にいろんな企画ものが発売されている。つい最近発表された彼のエレクトリック期の傑作「TUTU」のデラックス・エディションでは、1986年のヨーロッパ・ツアーでのライヴが収録されていて当時のグループの躍動感あふれる演奏に酔いしれたばかりだった。
2008年に発表されたマイルス・トリビュートともいうべきコンピレーション・アルバム「マイルス・フロム・インディア」は、敏腕プロデューサーとして知られるボブ・ベルデンによりマイルスに所縁有る様々なミュージシャンを起用して彼の作品をインド音楽を用いてレスペクトしたなかなかの出来栄えの作品である。中でもジョン・マクラフリンやロン・カーター、チック・コリア、マーカス・ミラーなど
マイルスの右腕だったメンバーが名を連ねている。
インドのミュージシャンは実に16名もの参加で、シタール、タブラ、カンジーラといったインド楽器を演奏しマイルズ・ミュージックの素晴らしさを改めて感じさせてくれる。また、ウォレス・ルーニーの吹くトランペットはマイルスそのもの。マイルスの特徴的なハイ・テンションで攻撃的なあの独特なタッチには敢えて踏み込まずにフレージングで彼の存在を疑似体験させてくれる。もし、マイルスが健在の時にこのアルバムが制作されたとすれば、必ずしもこうはならなかっただろうという不満は当然あるだろうが、なかなか画期的なトリビュート・アルバムではある。
そして2011年、またまたボブ・ベルデンが同様のトリビュート・アルバムを制作した。今回はマイルスのオリジナル「スケッチ・オブ・スペイン」をベースにかねてからフラメンコはスペインにおけるブルースだと語っていたマイルスの音楽感をベルデンなりに解釈し新たに前作同様マイルス・ファミリーのミュージシャンを招集して完成した。不敵にも「ニュー・スケッチ・オブ・スペイン」とタイトルされたアルバムは2枚組。
大勢のスパニッシュ・ミュージシャンと共にアレックス・アクーニャ、クリスティーナ・パトといったワールド・ミュージックのビッグ・ネームやベテランのジャック・ディジョネット、エディ・ゴメスに加え一癖もふた癖もある独特な演奏で知られるジョン・スコフィールドまで起用しての熱の入れ様は作品の出来が代弁してくれている。ここではマイルスの存在を意識させずに純粋にマイルス・ミュージックの新解釈に挑んでいるように感じる。
この作品を気に入ったファンは、マイルスのオリジナルを聴いてみることも一興だろう。
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