追悼/ポール・ニューマン
「レーサー」
WINNING
主演/ポール・ニューマン、ジョアン・ウッドワード、ロバート・ワグナー 他
脚本/ハワード・ロッドマン
音楽/デイヴ・グルーシン
監督/ジェームス・ゴールドストーン
1969年ユニヴァーサル映画製作
先日、往年の名俳優ポール・ニューマンが亡くなった。83歳だっだという。彼の歴史はそのままアメリカ映画の歴史といってもいいぐらい名作を多く残している。誰でも知っているであろうロバート・レッドフォードとコンビを組んだ「明日に向かって撃て」と「スティング」。更には「タワーリング・インフェルノ」や「ハスラー」等など。そんな彼の隠れた秀作が「明日に向かって撃て」の前年に公開された。私生活でもレースをしていたニューマンだからこそ出来たのかもしれない作品、レースを通して男女の愛を描いた「レーサー」(原題:WINNING)というあまり知られていない映画を敢えて紹介する。
レーサーのフランク・キャプア(ニューマン)は全米の大きなレースで好成績を収め続ける有望株。親友でライバルでもあるルー・アーディング(ワグナー)と各地を転戦する。そんな中、キャプアの運が落ち始める。車のトラブルや貰い事故等で思う様な成績が取れずにいた。
ある晩、パーティーから抜け出し気晴らしにレンタカーを借りに入った店で出会った美人エローア(ウッドワード)と恋に落ち、その後結婚する。彼女は十代の息子を持つ離婚経験者だった。エローアは新たな愛を得て、しっかりとした家庭を造る決意をする。しかし、しばらくするとライバルに先を越された彼の方は次第にレースにばかり没頭し始め、家庭を顧みなくなる。愛に悩むエローアと業績不振に悩むキャプア。二人の間には徐々に離婚に向かう兆しが見え始める。そんな中、彼女の息子がはるばるキャプアのガレージに泊まりに来る。彼との愛情を感じたキャプアはその子を養子しようと決意する。そしてレース・ウィークが始まり近くのモーテルを借りて本格的に始動を始めたキャプアはある昼下がり、モーテルの自分の部屋のドアを開けたその先に愛を交わし合うエローアとアーディングの姿を目の当たりにする・・・・。
自分は中学2年の時にこの映画を観た。その頃からレースが好きだったので愉しみに出掛けたことを思い出す。しかし、この映画には迫力一杯のレース・シーンが随所にあったにも関わらず思い出されるのはもっぱら切ない男女の愛の機微だった。10代のガキだった自分にさえ染み込んだこの作品の哀愁を決定的にしたのが実はそのサウンド・トラックなのだ。当時はまだまだ無名のデイヴ・グルーシンが自らの楽団を指揮して造った数々の音楽。今聴いても当時の切なさが甦って来る。自分には、思春期から青年に移る微妙な時期に物事の美しさと醜さを教えてくれた貴重な映画として一生の思い出に残る名作として生き続けている。ビデオやDVDになっているのか解らないけど、もし観る機会があれば是非お薦めしたいポール・ニューマンの隠れた名作です。ちなみに、ウッドワードは実生活でも彼に愛されていた妻でした。
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