60年代の若者向け番組「セヴン・トゥー・オー」(朝7時20分の放送からつけた名前)に来日時に出演していた彼を知っている人は、きっとウォーカー・ブラザースのファンだろうなぁ。モータウンのヒット曲「ダンス天国」をカヴァーして大スターになったウォーカー・ブラザースの一人がこのスコットだ。ブラザースと言っても実は3人それぞれは他人だけど。とにかくそのグループからソロになって発表したファースト・アルバムでは実に重厚な大人っぽいヴォーカルを聴かせてくれた。子供時代から歌を唄っていて、当時まだ二十歳そこそこなのに何と渋いヴォーカルテクニックを持っているんだろうと驚いたものだ。ティーン・エイジャーのファンが引き続き彼のレコードを買ってくれたおかげで、セカンド・アルバムあたりまではヒット・チャートを賑わせていたものの、サード・アルバム以降ではファン層がもっと大人に代わっていった。
作曲の才能も素晴らしいものがあり、アルバムごとに自作曲が増えていった。彼の敬愛するフランスの歌手、"ジャック・ブレル"の曲のカヴァーは事のほか多い。スコットの歌唱スタイルで特徴的なのは、圧倒的な肺活量で前小節から次の小節までを息継ぎなしで通して唄いきる点だろう。その結果 セクシーな声の微妙な「かすれ」が生まれ、一層その曲が厚みを増すことになる。三枚目のアルバムを契機に彼の歌詞とスタイルに変化が見られはじめる。途中、彼がBBCで持っていた自分の番組から作られたスタンダード・ナンバーを中心としたアルバムがリリースされたが、これがなかなかいい出来で、気に入っている。残念ながらこのアルバムだけがCD化されていない様だ。海外の主だったCDストアーに問い合わせたが、いまだに見つからない。イギリスの彼の熱烈な女性ファンに聞いたところでは、マスター・テープが既に存在しないとの事。それでも何か情報を持っているファンの方がいましたらご一報下さい。さて、彼はその後名前をスコット・エンゲルに換える。(本名はノエル・スコット・エンゲル)。そして2枚のアルバムを発表してからしばらく表舞台から姿を消してしまった。しばらくしてから何と「ウォーカー・ブラザース」を再結成して登場するも単発で消滅。そして次に現れたときにはカントリー・ミュージックのアルバムを引っさげての復活だった。もちろんそのアルバムも買ったけど、昔の彼を知る我々には少々戸惑いがあった。もともとアメリカ中部の生まれだけに、経験を重ねるうちに自身への回帰を果たしたと言えるのかも知れない。現在も音楽活動は続けている様だ。                                    青春時代の思いでと共に、彼と彼の声はいつまでたっても私の中では永遠のアイドルであり続ける。
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