ビートルズがバンド存続中にリリースした最後のシングル盤が " LET IT BE "である。ご存知のとおりこの時期のアップルを取り巻く状況はジョンとポールの仲たがいの影響からレコード一枚を発表する事すらスムースには出来なかった。
この時期、ジョンは自らが率いるプラスティック・オノ・バンドで同時進行の二足のわらじ状態で、ポールと二人でビートルズでの録音曲を自分主導で名義を変えて使おうというとんでもない事態が展開されていたそうだ。
そしてそのすったもんだの名残がこのオリジナル・UKファースト・プレス盤に実在するのだ。
それはレコードのB面に表記されているカタログ・ナンバーと呼ばれる部分の修正箇所である。
当初、ビートルズは「ホワッツ・ニュー・メリー・ジェーン」という新曲をリリースする予定だった。ところが裏面に収録がすでに決まっていた「ユー・ノウ・マイ・ネーム」をジョンがプラスティック・オノ・バンドとしてリリースしたいと言い出した事でポールともめて最終的にジョンの作品である「ホワッツ・ニュー
・メリー・ジェーン」を外し替わりに「レット・イット・ビー」を持ってくる事で決着した。しかしすでに前述のカタログ番号によるマスターが出来上がっていたため、急きょキャンセルされた番号部分をバツ印で消し込む作業がなされた。
その番号はAPPLE1002というカタログ番号だった。
実際にレコード盤を明かりにかざしてよく見るとしっかりとそのプレスが見分けられる。
つまりこれが当時のビートルズが空中分解をおこす間際の事実を具現化した物的証拠としてマニアの間では大変に貴重とされる所以なのである。
当然の事ながらイギリスでのセカンドプレス以降とその他世界中のLET IT BEのシングル盤にはこの消し込みは存在しえない。それだけにこのUKファーストプレスは保存状態が良いものであれば高値での取り引きが行われる事も珍しくない貴重品でもある。
ちなみに自分がコレクションしているものはそれほど美品ではないので価値的には落ちるものの、でもやっぱりファンとしてはその事実に価値を見いだすことだけで十分だと思う。
単に投機的なコレクターに何が分かるというのか。最終的に金額としての「数字」にこだわる様なコレクターは、何も出来ないエリートと同じで馬鹿馬鹿しいの一言に尽きるってものだね。
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