3-D(3rd. Dimension)とは三次元、つまり立体を意味する表記だ。しばらく前にブームにもなったステレオ・グラムの様々な刊行物。そこには平面に描かれた画像を肉眼で交差視する事で実に見事に立体画像が浮かび上がるという驚きの世界が存在した。実はこの原理はすでに150年以上も昔に発表されていた。イギリスでは1893年にステレオスコピック協会という立体写真の研究団体が設立されており、そこでは肉眼の視点から2種類の写真を撮り、それらを交差視して立体写真を愉しむという当時としては画期的な趣味の世界をリードしていたという。1950年代には赤と青のセロファンを使って立体画像を体験できるアナグリフと呼ばれる技法が開発され、雑誌や映画で使われた。これは色相の持つ特殊な効果を利用して一種の錯覚を呼び起こすことで立体感をつくり出すという技術だった。そして現在ではアナログからデジタルに移行して更に進歩した理論により、様々な3-D技術が開発されている。ホログラフィーなどは好例である。我々が毎日楽しんでいるテレビの画像は平面に映し出される単純な二次元映像であるが、今ではこれらの映像も簡単に立体映像に変換してくれる素晴らしい技術が存在する。ここで紹介する機材はアメリカのReal Eyes 3D社の立体画像デコーダーである。このデコーダーは特殊なシャッター式ゴーグルを装着することにより、二次元の映像を立体化できる。原理は簡単にいうと映像を左右にずらすことで生まれる微妙な時間差を利用して実際に我々が肉眼で感知している立体感をつくり出すというものだ。ただし、普通の映像は立体を想定して創られているわけではないので、この技術はあくまで脳への「騙し」の信号で造られる。いわゆる立体映画とは異質の疑似立体画像なのである。この技術は「Fake 3-D」と呼ばれ、人間の曖昧な感覚をうまく利用したものなのだ。しかし、その奥行きの広さや高低差の表現はなかなかのものである。特に「スター・ウォーズ」の様な宇宙ものは迫力が増して画面に釘付けになること請け合いだ。また、紀行などの自然ものの番組も実に臨場感があり、自分がその場に居る様な錯覚さえ感じられる。このデコーダーは同時に4台のゴーグルを接続できるので、みんなで立体の世界を愉しむ事ができる。また、効き腕同様に人間には効き眼というものがあるらしく、映像のシフト調整も左用・右用とその両方に対応しており、シフト値も自在に設定可能。通常は20ポイント程で完璧な立体感を得られるが、シフト値を上げれば一層の立体感を生み出してくれる。ただし、眼の疲れはそれに伴い大きくなるので、適度なシフト値での使用が望ましいとされている。現在ではゴーグルを使わずに立体映像を再現しようという研究が進んでおり、近い将来にはどこでも簡単に3Dを楽しめるテレビも登場することだろう。技術の進歩は常に我々を新しい世界に連れて行ってくれるんだよね。
REAL EYES 3D社 3-Dデコーダー 「Stereoscopic Television」
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