オーケストラにおけるコントラバスの存在感。あの重厚な音色は欠かせない。また、ジャズ音楽でのウッドベースの魅力。フィンガー・ピッキングによる弦をはじく独特な乾いた音。そして何よりもフレットが無い楽器特有の無段階スラー・サウンドが最大の魅力だと思う。ジャズ・プレイヤーは大抵の場合、楽器を立てて演奏する。ウッドベース自体がプレイヤーの身長ほどあるので、彼等は運指を確認しながらプレイできる。
そしてフレットレス・ベースを演奏しようとするならば、すべてはプレイヤーの音感に尽きると言ってもいいだろう。フレットが無いという事は音程の区切りが存在しないという事であり、周りの仲間の音としっかり合わせなければならない。
そして話はエレクトリック・ベースに移る。自分は殆どの楽器を演奏した経験がある。もちろんベースもやったし、実際すごく好きなパートでもある。たいがい音楽を(バンド)をやっている連中はベースは地味でつまらないと言う。派手なギター・ソロから感化されてバンドを始めるパターンが多いはず。確かに素人目にはギターの方が格好よく映るだろう。が、しかし本来の「音楽」という確立されたある種アカデミックな視点に立って考える時、この
楽器の占める位置はリズムと共に最も重要であり、最も美しいのである。
さて、自分がこのフレットレス・ベースを弾くとき、最初は普通のベースで練習した後に持ち替えて演奏するわけだが、やっぱり難しい。よくフレットラインを引いて演奏する場合が多いらしいが、意地でもそんな事はしたくない。だってあののっぺらぼうの指板の存在感を殺すこたぁ無いやろ。何とか音感を研ぎすませ練習を重ねる事が必要であり、それがベストだと思っているから。
面白いもので、ドラムと同じ様にテンションがあがるとリズムが早くなるみたいに音程もややシャープするきらいがある。それでも踏ん張って最後まで弾き通す事で達成感が味わえる。
実際の演奏におけるポイントは、時々ハーモニクスを叩いて音程の確認作業をさり気なくする事だ。ハーモニクスはバンド全体の混沌とした騒音の中にあっても聴き取れるパルスを持っているので有効だと思う。フレットレス・ベースと言えば、ウェザー・リポートにいたジャコ・パストリアスがまず思い浮かぶ。彼の演奏では、このハーモニクス(倍音)奏法がよく聴かれる。また、マーカス・ミラーを始めとするベースマンがよくつかうスラップスティック奏法(チョッパー)も有効だ。
フレットレス・ベースの利点はベースギターがリズム楽器であるばかりでなく、メロディー楽器にもなれるということにもある。
前述のスラーを多用して自由自在なフレージングが可能。実際に演奏する本人は、フレットによる振動の制限から開放された生の振動がボディーからダイレクトに伝わるのを体感できる。それだけでもフレットレス・ベースを弾く醍醐味が愉しめる。ちょうど、オートマの車とマニュアル車の違いにも似ている。
自分がすべてをコントロールしているという達成感と満足感が味わえる。
それにつけても、ジャコはすげぇプレイヤーだったって今更ながら再認識させられた。
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