第3回 「象牙ナットをローラーナットに交換」
今回はナットと呼ばれるネックの付け根にある弦をまとめる部品を交換しました。通常は象牙製のものが一般的ですが、ギター・プレイの多様化に伴って様々なパーツが登場しました。
今回は2本のギターにそれぞれ種類の異なるパーツを組み込む事にしました。
      フェンダー・ジャパン/ストラトキャスター・'62年モデル
        アメリカ・All Parts社製ローラーナットに変更
取り付けは、既存のナットを外しローラー・ナットの幅をノミで削り出す。今回のAll Parts社のナットは、かなり深く埋め込まないと弦高が高くなってしまうので、実際にはネックの中を貫いているロッドが見えるぐらいまで彫り込まなければならなかった。もちろん、指板よりも更に深くなる訳だ。装着時には瞬間接着剤などで固定する。この時、特に注意する点は小さなローラー(リング) に接着剤が少しでも着くとローラーが廻らなくなってしまうので慎重な作業が必要だった。
このローラー・ナットは文字通り丸いリングに弦を乗せてトレモロ・ユニット使用時の音程の狂いを極力消すためのパーツ。下の画像からも判ると思うが、トレモロ・アームでの弦の前後移動時に、ちょうど「コロ」の原理で動く弦のストレスを軽減してくれる。
     フェンダー・ジャパン/ストラトキャスター・'72年モデル
       フェンダーUSA純正LSRローラーナットに変更
もう1台のギターにはフェンダーUSA純正のローラー・ナットを取り付けた。呼び名は同じローラー・ナットだが、仕組みがAll Parts社のものとはまったく違う。ローラーに乗せるタイプではなく左右からベアリングで弦を保持するものなのだ。理屈は同じでやはり弦へのストレス軽減が目的のパーツには変わりない。
取り付けの方法はまったく同じでパーツの幅を削り出す。こちらのパーツはAll Parts社のものより薄い代わりに幅が広い。ゼロ・フレットからボディー側に既存のナットの倍近く削り出した。
装着方法は接着剤ではなく、付属の細いネジで2ケ所で留めるタイプだ。見た目、それまでの目立たなかった象牙ナットとは対象的にまるであの「007」のジョーズの歯の様な印象。幅が広いぶんAll Parts社のものより一層目立つ。好みだろうけど、構造的にはベアリングよりローラーの方が単純な点で丈夫なのかな、と感じる。また、削り過ぎた時に使える様にプレートが付属しているので弦がビビる時に挟み込む。今回は2枚を使わなければならなかった。本来これらの改造は楽器店のリペアー専門のスタッフに頼むのがベターなんだろうけど、それなりの工賃がかかってしまうし逆に自分でやる事でギターに対する更なる愛着が生まれるという点でそれなりの意義があるかと思う。

これまでの改造によりストラトキャスターの持つポテンシャルがかなり高くなった様に思う。また、ネックや指板の材質の違いやパーツの素材・重量などがこれほどまでに音色に影響するとは驚きだった。
前にも触れたが、ソリッド・ギターの音色の良さは弦の振動とギター本体の「鳴り」とのバランスで決定される。プレイヤーによってはそのためにヘッドに重りパーツを取り付けている場合も少なくない。極端な場合には稀にボディーの塗装を部分的に剥がして好みのサウンドを追求しているプレイヤーさえ存在する。
ギター・マニアにはこれで完璧という事はないのかもね。
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