第2回 「ネック&マシンヘッド交換」
今回はマシーンヘッド (ペグ) の改造です。前回のヒールレスカットされたギターと一緒にブラック・ボディーの'72年モデルのペグも替えてみました。その前にまずラージヘッドの'72年モデルのネックを交換します。それまでのローズウッド指板のものをメイプル指板のネックと入れ替えます。'72年モデルはボディーと3点固定のため、まったく同じ世代のネックを入手しました。この作業は単にネックを差し替えるだけなので特に説明はありません。
今回ペグを交換する2種類のギター、'62年モデルはスパゲッティー・ロゴのスモールヘッドそして'72年モデルは曲線が魅力のラージヘッド。スモールヘッドにはクルーソン・タイプと呼ばれているペグ(糸巻)がまた、'72年モデルにはロトマチック・タイプのペグが取り付けられていました。
クルーソン・タイプのものはブッシュというパーツにペグを差し込んでビス留めされており、ブッシュを抜き取った後のホールは径が小さめです。もう一方のラージヘッドはナット固定式のペグなのでそのままホールを使えました。(画像を見ればホールの径の差がわかると思います)
      フェンダー・ジャパン/ストラトキャスター・'72年モデル
GOTOロトマチック・ペグをフェンダーUSA純正ロッキング・チューナーに変更
では、まず最初に'72年モデルの方から説明します。今回取り付けるペグはフェンダーUSA純正のロッキングペグです。これまでのロトマチック・ペグと同様にナット式のパーツなので問題はありませんでしたがそれまで1本のビスで固定されていたものが今回のパーツは2本の脚でヘッドに食い込ませるタイプでしたので新たに小さな穴を開けなければなりません。2本の脚にクレヨンなどを塗って穴位置をマークします。
脚よりやや太めの穴をドリルで開けます。必要以上に深くしない様に気をつけます。
6つすべての穴開けが済んだらヘッド裏から差し込み、ナットを廻し入れ6角レンチで締めれば完成です。ペグの取り付けで最も重要なポイントはペグの並び角度です。
それぞれが微妙に曲がってしまうと弦のサステインが弱くなるからです。綱引きで説明すると、引き手全員が同じ角度と方向で引っ張れば最も張力が安定するのと同じ理屈です。
     フェンダー・ジャパン/ストラトキャスター・'62年モデル
  クルーソン・ペグをシュパーゼル・ロッキング・チューナーに変更
次に'62年モデルを改造します。前述のとおりここではホールをひと回り大きく開け直さなければなりませんでした。ここで気を付ける点は、ドリルをヘッド表面から裏に向かって開ける事です。径が大きな刃は貫通する時に出口の周りの木を剥がしてしまう事が多いからです。この方法ならば万一傷ができてもペグで隠せるので問題ありません。
今回取り付けるのはドイツのシュパーゼル社製ロッキング・チューナーです。'72年モデルと同様に脚差込み式
(シュパーゼルのパーツは1脚型)なのでマーキング後に受けの穴を開けます。シュパーゼルのペグもナット固定式なので同様にレンチで締めれば完成です。
さて、今回のペグはメーカーは違いますがタイプは両方ともロック式という特殊な糸巻です。普通のペグは穴(溝)に弦を通して巻き上げる方法ですが、ロック式の糸巻は穴に通した弦を裏のネジを締めることにより内部で強制的に挟み込む事で固定します。そのためグルグルと弦を巻き取らなくても決して外れない様に設計されています。この方法の利点はいくつかあります。まず第一に弦の張り替えが早く簡単になる点です。
次に巻きが少ないため弦の振動がダイレクトにヘッドに伝わる事です。これはサステインという音の伸びに関係します。すなわちギターの音が一段と冴える結果につながる訳です。今回の2本のギターのヘッドを真横から撮った画像を見ると糸巻の頭の長さが1弦から6弦にむかって高くなっているのが判ると思います('72年モデルに使われたペグは1弦から3弦の高音用と4弦から6弦の低音用の2種類に分かれている)が、これは弦のテンションとリテイン(張力バランス)が均等になるための設計なのです。マニアックな議論の中にはギターのモデルによるペグの重さに対するボディーとのバランスを云々する指摘も稀にありますが、そこまでをコントロールすることこそが真のギター・フリークだというコアなファンも多くいるという事も付記しておきます。
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