60年代のカルト番組 プリズナーNo.6
1969年の3月から約4ケ月にわたってNHKから放送されたイギリスITV局のカルト番組である。   自分は中学に入った頃で、確か放送が日曜日の夜10時だった様に記憶している。一話が45分だったと思うが、全部で17話ありストーリーはそれぞれ完結しているものの根底を流れるテーマは最後まで続いている。要約するとイギリスの名俳優パトリック・マッグーハン扮する謎の男が拉致され弧島に監禁される。そこでは人々は番号で呼ばれ、特に彼があらゆる方法でスパイされ、身に覚えの無い情報を当局から要求される。毎回彼は島からの脱出を試みるものの最後には元に戻される。監禁とは云え、自分の家を与えられ自由に島を歩き回れるが、「当局」という存在が大きく彼にのしかかる。その当局との直接対決まであらゆる手段を駆使して自分の存在の正統性を訴え続ける彼の姿勢が実にカッコよく、また美しい島と彼の置かれた状況との大きなギャップが不合理性を増長して観る者をはらはらさせる。番組は独特な雰囲気を持っていて、何となく夢を見ている様なストーリー展開に回を増すごとに引きずり込まれて行く。
物語の舞台となっているこの美しい島はウェールズのリゾート地であるポートメイリョンという実在の島である。ちょうどこの作品の撮影が始められた66年といえば、ビートルズ全盛の頃。ここに登場するカラフルなイメージや主人公の脱出を監視する巨大な白いバルーンなどは、後のビートルズ作品「マジカル・ミステリー・ツアー」に共通する点が多く見られる。すなわちこの作品がマニアの間で絶大な支持を受けている背景に、当時の最前線の文化と共にハイセンスな知性を感じるからに他ならない。パトリック・マッグーハンと言えば傑作スパイ・シリーズ「秘密諜報員ジョン・ドレイク」が有名である。実はこの作品とは深い関わりが存在していたらしい。
次ページへ