エレクトリック・ギターの終着点 ストラトキャスター
ギターを弾く者には、特にお気に入りの楽器というものがある。それが、音色であったり、デザインであったりと理由は様々だが、一番多いパターンは好きなミュージシャンと同じ楽器を持ちたいという願望かも知れない。例えばビートルズ・ファンのベーシストならヘフナー、ギタリストならリッケンバッカーやエピフォンといった具合だ。大ざっぱに分けてエレクトリック・ギターの場合は「ギヴソン」VS「フェンダー」という図式が昔から続いている。もちろん一人のギタリストがその両方を弾き分けたりもする訳だが、いわゆる円熟という時期を迎えたギタリストの多くはフェンダーのストラトキャスターを使うケースが目につく。かく言う自分も趣味ですでに30年余ギターを弾いてきて、最終的にそこに到達した。このギターの特徴はまず独特の音色である。ソリッド・ボディーのわりに柔らかくミルキーな音をつくり出す第一ピックアップ。この音こそがストラトキャスターのストラトキャスターたる所以でもある。第二にボディーのセクシーなライン。事実、女性がセクシー・ポーズをとっているスタイルをデザインしたと言われるだけあって、どこから眺めても飽きがこない素晴らしいラインなのだ。
第三にトレモロ・システム。ブリッジを強力なバネで固定し、そのバネに荷重を加えることで弦をゆるめたり張ったりして演奏にニュアンスを与えてくれる。このシステムを完璧に使いこなしているギタリストと言えばまずジェフ・ベックを挙げられる。単に音をバイブさせるだけならどのギタリストもやっているテクニックだが、彼の場合はまったくアプローチが異なる。ストラトキャスターを奥の奥まで知り尽くした彼だからこそ出来るとんでもないテクニックを聴かせてくれる。トレモロ・アームをラフに指ではじいて出すノイジーなサウンドは彼の専売特許の様なもの。また、ボディー内部のバネの掛け具合いを変えて、まるでフレットレスの様に音を自在に操るテクニックは素晴らしいの一言。
仲良く並ぶ3台のストラト。それぞれに特徴がある。
卓越したテクニックを持つギタリストは大勢いるが、フレーズや早弾きだけでなくギターをサウンド面で重視したギタリストと言うとその数は少ない。ジェフ・ベックの他にはエイドリアン・ブリューとか偉大なギタリスト、ジミ・ヘンドリックスが挙げられる。また、ストラトキャスターのサウンドを自分のスタイルとして確立したギタリストと言えば、ピンク・フロイドのディヴィッド・ギルモアやリッチー・ブラックモア等ロック史に君臨する名ギタリストが登場する。ストラト命のギタリストにとつては未だに憧れの故・スティーヴ・レイボーンのあのサウンドは「通」好みの極みだろう。それに極近いサウンドを聴かせてくれるハイラム・ブロックも地味ながら巧いギタリストである。         こうしてストラトキャスターの歴史は職人ギタリストたちによって確実に受け継がれて来たし、これからも間違いなくサウンドの世界をリードしていく筈である。
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