「REVOLVER」は彼等の活動において大きなターニングポイントとなった革新的な作品。前作「RUBBER SOUL」の完成後、彼等は「恋を抱きしめよう」「デイトリッパー」という素晴らしいシングルを発表。心身ともに充実した時期を迎え、新しいアルバムに向けて最初に取組んだ曲が「トゥモロー・ネバー・ノウズ」。「リボルバー」のセッション開始時に様々な偶然も手伝いテープの逆回転やADT(人工ダブル・トラック)というテクニックが生まれ、彼等の音楽表現が一気に広がることになる。同セッション中に録音された「ペイパーバックライター」と「レイン」はアルバムには収録せずシングルとして発表されたが、そのサウンドを聴いた時にはブっ飛んだのを思い出す。これまでのビートルズとは間違いなく違うと感じたものだ。 前作で試験的に導入されたシタールはこのアルバムで更に存在感を示す。インド音楽に傾倒していたジョージが持ち込んだ様々なインド楽器がただでさえ変貌をみせる彼等の音楽に一層の変化をもたらす結果となる。と同時にジョージのグループ内での存在感の大きさを確認できる作品。「タックスマン」を聴けば彼の演奏技術の高さがよく解る。 さて,7.1Ch.サラウンド盤としての「リボルバー」に話を移そう。音場マップ図を見ればお分かりの様にこのアルバムでの各楽曲はそれぞれが違ったパターンを見せている。作品のカラーも豊富で使われる楽器も様々。「アイム・オンリー・スリーピング」ではキラキラ響くアコースティック・ギターの音色に包まれる中で急に右リアから逆回転ギターの音が聴こえてくる。「イエロー・サブマリン」の中間でのエフェクト音はまるで造船所のドックの中にでも居る様な感覚を覚える。「シーセッド・シーセッド」では技巧的なリンゴのドラムが視聴ポジションの後ろで鳴り続ける。そして何といっても最後の曲「トゥモロー・ネバー・ノウズ」のサラウンド感は凄い。前半のジョンのADTでのヴォーカルは前方右で、後半になると今度はレスリー・スピーカーを通したヴォーカルが左前方に入れ替わる。テープ・エフェクトの音は左後方から聴こえたり真ん中で鳴ったり、更に旋律的な逆回転ギターは右リアから。ポールが作ったといわれる人の声ともカモメの鳴き声とも表現される音は、時に前方から後ろに流れたり前後でパンポットされたりと目まぐるしい動きを聴きとれる。この曲を聴いただけでアルバム制作を4人が楽しんでいたことが良く判る気がした。 このあと、不滅の金字塔「サージェント・ペパーズ」になだれ込んでいく事になるわけだが、そこに至ることが必然だった証しがまさしく「REVOLVER」なのである。 |
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