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 一人医師医療法人とは何か?

  1985年の医療法改正により、常勤医師数、資産要件が緩和され、常勤の医師(歯科医師)が1人の個人開業医でも医療法人として設立できることになりました。この小規模公益法人を「一人医師医療法人」といいます。

設立にあたっては特に資産要件がありませんので、診療所の土地建物が自己所有でなく賃貸借の場合でも法人化できます。(但し、10年以上の賃貸借契約が必要となります)

なお、名称が一人医師医療法人であっても、他の病院施設などの医療法人とは設立と運営、権利と義務において変わるところは何もありません。



 なぜ医療法人にするのか?

 個人経営の診療所を医療法人化することにより、次のようなメリットが考えられます。
■ 資金的メリット

個人医師の診療所経営に比べて、
資金調達が容易になります。個人経営のときは、資金は全て医師個人が調達しなければなりませんでしたが、法人化することにより、構成員である社員から出資を受けることができます。
■ 社会的メリット

一人医師医療法人は公益法人となります。当然、社会的信用度も高くなり、金融機関からの資金借り入れが有利になります。
■ 継続的メリット

一人医師医療法人は資産を保有することができます。つまり、法人名義で車や土地を所有できるということです。そして法人格である以上、これらの資産は院長等の設立者の死亡後でも、法人組織に帰属し、未来へ存続していくことができるのです。
■ 事業的メリット

老人保健施設の経営が認められるようになります。
会計期間が自由に設定できます。
■ 税務的メリット

個人事業で支払う所得税に比べ、2段階比例税率の法人税をなることにより、所得税よりも有利になる場合が多いといえます。

家族従事者に給与を支払うことにより、所得が分散して節税効果が期待できます。

法人化することにより、院長自身が厚生年金に加入することができます。

 ここで気をつけたいのが、医療法人は公益法人である以上、営利を求めてはならないと言うことです。ただし、この営利を求めてはならないというのは、利益としての剰余金を配当してはならず、医療施設の改善に使途しなさいということであり、従業員や医師の給与を支払うことには何の問題もありません。



 医療法人を設立するには?

 医療法人には社団と財団がありますが、ここでは社団の医療法人を説明します。

医療法人社団は、定款を作成し、所轄庁(都道府県、あるいは厚生労働省)の認可を受け、設立登記をすることにより設立します。

診療所(病床数が無床〜19床)の設立要件は、凡そ次のとおりです。

項 目 要 件
組織  設立者  3人以上の個人
 理事  原則3人以上
 監事  1人以上
 医師の数  常勤医師1人以上
 薬剤師の数  不要
診療施設  病床  無床〜19床
資産  設立時の拠出  出資
 資産要件  特になし (自己資産比率20%が望ましい)
 運転資金  2か月分以上


 一人医師医療法人の設立手続は、凡そ次のようになります。

項 目 備 考
@  各都道府県が開催する説明会に参加  長野県では、年3回開催されます。
A  定款の作成
B  設立総会
C  設立認可申請書の作成・提出
D  設立認可申請書の審査
E  都道府県医療審議会の諮問・認可の可否通知
F  設立登記申請書類の作成・登記  一人医師医療法人設立
G  医療法人設立登記完了届を所轄庁に提出
H  病院(診療所)開設許可申請を保健所に提出
I  病院(診療所)使用許可申請を保健所に提出  病床がある場合
J  病院(診療所)開設届を保健所に提出
K  保険医療機関指定申請を社会保険事務所に提出
L  税務署・県税事務所に事業開始届出を提出
M  労働保険・健康保険の加入手続き

 説明会から法人設立までは、6ヶ月〜8ヶ月くらいを要します。

 医療法人設立認可申請書には、数々の添付書類が必要となりますが、主なものをあげると次のようになります。
  • 設立認可申請書
  • 定款
  • 設立当初の財産目録
  • 社員・役員名簿
  • 出資申込書
  • 預金残高証明書
  • 設立総会議事録
  • 設立趣意書
  • 医療施設の概要図
  • 不動産賃貸借契約書
  • 設立後2年間の事業計画書
  • 設立後2年間の予算書
  • 履歴書
  • 役員就任承諾書
  • 管理者就任承諾書
  • 実績表
  • 直前2年間の確定申告書(源泉徴収票)
  • 従事者名簿
  • 医療従事者充足状況書


 医療法人の設立後は?

 医療法人の設立後には、公益法人としてしなければならない義務が発生します。
  1. 経理処理は複式簿記が要求されます。
  2. 毎会計年度終了2ヶ月以内に年度決算届を行わなければなりません。
  3. 資産の総額や、役員・定款の変更がある場合には、変更登記が必要となります。



弊事務所では、医療法人の設立に関する相談、書類作成、並びに提出を行います。
また、必要に応じて認証後の諸手続・毎年の更新手続も行います。

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