ツダナナフシ

ヤエヤマツダナナフシ
割合に最近発見された変なナナフシ。別に大潮の夜でなくてもよいのだが、生息場所がアダンの生い茂る海岸であるから、大潮の夜ならばヤシガニを探しついでにこいつも探せる。
ただし、夜間、あてずっぽうでツダナナフシを探すのは難儀であるから、昼間のうちに彼らの痕跡を探しておく方がいい。
痕跡というのは、右のようなアダンの葉の食痕。ツダナナフシがいるアダンでは多くの葉が、両サイドからえぐられたようになっている。他にアダンの硬い葉を食べる動物は多くないので、こういう葉っぱが見つかれば、夜にでもそこに行くと、このツダナナフシを見つけることが出来る。しかし、アダンの茂みにはハブもいるので、ガイドがいない場合には、道路脇のアダンで当たりをつけておく。それでも、一度も見たことのない人にとって、これを見つけるのは、やや困難。葉の裏、表、色々な角度から懐中電灯のライトを当てて、じっくり探すことが大事だ。
とにかく、見つけた時の驚きは、こういった写真では伝え切れない不思議なキャラクターである。

「あっ!いた!うそ〜!」まるでセルロイド製のフィギュアのような質感。その大きさ。ちょっと現実離れしている。このメスは小さい時に大怪我にでもあったのか、左前足が未発達で、右羽も未発達。

ライトを向けられても、急には動かず、むしろじっとしているメス。やはり擬態しているつもりなのか。ただし、掴んだり、或いは観察後再びアダンの葉の上に戻した時などは、思わぬ素早さで逃げる。この固体は緊張したのか、じっと見つめていると、糞を垂れた。

非常に小さなツダナナフシの幼生。これもメス。

威風堂々。とても大きい。これはオスでしょ?いえいえ、これもメス。

毒液発射直後のツダナナフシ。頭に付いている白いものが毒液。胸の背中側からかなりの広角に的確な飛び道具攻撃を行える。しかもその飛距離も一メートルはある。一度など掴んだ拍子に完璧に目を狙い撃ちされた。激痛が走り、慌てて家に帰って、目を洗ったが、真っ赤になっていた。それは昼間も話であるが、もしかすれば、蜂の攻撃同様、黒いものに対して攻撃を仕掛ける修正でもあるのかも。この毒液、目にさえ入らなければ、安心。むしろ、手に付いたミントの爽やかな香りをしばらく楽しめる。

ツダナナフシの糞と卵(左手中が黒く透ける白いドングリ型のもの)。よく、アダンの葉の付け根に見られる。

ツダナナフシは単為生殖を行い、現在確認されているのはメスばかり。つまり、メスばかりで、自家製クローンを作り続けていることになる。なぜ、こんなことをするのか?ナナフシの仲間には多くは単為生殖を行い、何年かに一度、オスを発生させて遺伝子の交換を行う種類があるが、ツダナナフシの場合、それにもまして実は彼らの生息地域の拡大方法に理由がある。
それは、彼らが卵を海流で運ばせて生息地域を広げているからである。この卵は中に含まれた空気の層のおかげで水に浮くばかりか、塩水に浸かっても、発生能力を失わない。漂着した海岸で孵化し、近くのアダンに這い上がる。しかし、その近くに別のツダナナフシも漂着して孵化するとは限らない。飛ぶ為の羽を持たない彼らの雌雄出会うことは難しい。その為に、子孫を残す手段として「危険」な単為生殖を選んだのであろう。

海流散布で種子を遠くへ送るアダンを食草とする昆虫ならでは、とも言える。だが、果たして他にもアダンが生えている島は多いが、そこにまで進出しているのであろうか。

夜行性のツダナナフシは、昼間はこのようにアダンの若い葉の間で休む。毒液という必殺の武器を持ちながら、まだ鋭い葉を持つアダンの力を借りて身を守る。餌に助けてもらっているのは面白いことだが、それにしてもこのナナフシ。なぜそこまで身を守ろうとするのか。もしかすれば、他の虫よりも美味いのかもしれない。

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